シラウオの資源管理に向けた生体知見を得る


[要約]
シラウオ新魚の飼育観察を行い、約1ヶ月間に4回の成熟産卵が確認された。よってシラウオが数年ある未成熟卵の一部を成熟させ、それらを産出後に新たな卵群を成熟させるという過程を複数回繰り返す成熟産卵様式をもっていると考えられる。
北海道立中央水産試験場・資源管理部
[連絡先]0135-23-8707
[推進会議]北海道ブロック水産研究関係試験研究推進会議
[専門]資源生態
[対象]しらうお
[分類]研究

[背景・ねらい]
石狩川水系のシラウオ漁獲量は平成元年の約70トンをピークとして減少し、平成8年度は数トンのレベルにまで落ち込んでいる。魚価が高く沿岸漁家にとって重要な資源である本種の資源の回復を図るための資源管理施策が求められている。

[成果の内容・特徴]

  1. シラウオは1回に600~800個の卵を産出した。
  2. 産卵の間隔は10日前後であった。
  3. 産卵は4日観察されたが、より多回産卵の可能性もある。
  4. 今回の観察中、産卵は約1ヶ月に渡って行われた。(石狩川水系では、5~6月が産卵中)

[成果の活用面・留意点]

    石狩漁業協同組合に対して、資源回復のためには産卵期の親潮の保護が必要であることを説明した。そして、「飼育実験でシラウオが約1ヶ月に渡って産卵を繰り返したこと。よって産卵場の中に保護区を設けての長期に渡る保護を行うことが、資源回復のためには有効と考えられる。」と提言した。これを受けて、石狩漁業協同組合では、産卵場の中心である石狩川河口西岸の浅瀬に保護区を設け留資源管理施策を実行に移した。の資源管理施策の有効性を、今後のモニタリング調査によって判定する必要がある。さらに、漁期の短縮による産卵の助長など、新たな保護施策の試行も行い、より有効な資源管理を目指すことも大切である。

[具体的データ]

図1 1995年5月8日に余市河口で採集したシラウオ12尾の個体別卵径組成(シラウオは2峰型の成熟を行う)

図2 図解


[その他]
研究課題名:シラウオ資源調査
予算区分 :道費:地域性底魚資源生態調査
研究期間 :平成8年度(平成元年~平成7年度)
研究担当者:北海道立中央試験場 資源管理部 山口 幹人・藤岡 崇・渡辺 安廣
発表論文等:山口 幹人(1994)石狩川水系のシラウオ産卵場を発見。北水試だより27 40-42P
山口 幹人・藤岡 崇・渡辺 安廣(1996)石狩川水系におけるシラウオの本流と三日月湖間の移動について。平成8年度日本水産学会春季大会講演要旨集 130P
山口 幹人(1996)シラウオの飼い方。北水試だより35 7-14P
山口 幹人(1996)石狩川水系のシラウオについて<その1>。育てる漁業No275 2-9P
山口 幹人(1996)石狩川水系のシラウオについて<その2>。育てる漁業No276 2-8P
山口 幹人(1996)石狩川水系のシラウオについて。平成8年度オホーツク・マリンフォーラム「内水面資源の開発と利用」発表要旨集
山口 幹人・藤岡 崇(1997)シラウオの産卵様式について~飼育実験から得られた示唆~。第4回「網走のワカサギに学ぶ会」講演要旨
山口 幹人・藤岡 崇・猿渡 敏郎(1997)水槽内で観察されたシラウオの産卵行動。平成9年度日本水産学会講演要旨集 85P
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