噴火湾におけるホタテガイ麻痺性貝毒発生のシュミレーション


[要約]
麻痺性貝毒の原因プランクトンであるアレキサンドリウム・タマレンセの分布と海洋環境との関連を重回帰分析によりモデル化し、麻痺性貝毒発生のシュミレーションモデルを開発しようと試みた。その結果、予測値と実測値は季節変化の傾向においておおむね一致した。しかし、予測値と実測値との誤差はアレキサンドリウムの分布のピーク時に大きかった。現在、予測精度の向上を目指し、改良中である。
北海道立函館水産試験場  資源増殖部
[連絡先]0138-57-5998
[推進会議]北海道ブロック水産研究関係試験研究推進会議
[専門]漁場環境
[対象]プランクトン
[分類]研究

[背景・ねらい]
噴火湾におけるホタテガイの麻痺性貝毒は、出荷時期の制限など養殖漁家に大きな経営的打撃を与えている。そこで、貝毒発生時期を予測するためにのシュミレーションモデルを開発し、養殖ホタテガイの計画的な出荷を支援する。

[成果の内容・特徴]

  1. 噴火湾では、麻痺性貝毒の原因プランクトンは植物プランクトンの一種であるアレキサンドリウム(Alexandrium)属の渦鞭毛藻”アレキサンドリウム・タマレンセ”である(写真1)
  2. このプランクトンは例年3月上~中旬に、珪藻という植物プランクトンとともに出現、水温の上昇に伴って増殖し、5~6月に水温8~12℃の層に最高の密度で分布、7月に暖流が流入するか、水深30m層まで14℃となると消滅することがあきらかになった(図1)
  3. これらの知見をもとに、過去14年間の調査データから。重回帰分析という方法によるモデルを作り、原因プランクトン増殖のシュミレーションを行った結果、実測値の分布密度のピーク時に誤差が大きかったが、季節変化の傾向はおおむね一致した(図2)
  4. 現在、予測精度の向上を目指し、シュミレーションモデルの改良を行っている。

[成果の活用面・留意点]

    平成9年度まで、重回帰分析によるモデルの精度向上を行い、実用化への可能性を検討する。

[具体的データ]

写真1 麻痺性貝毒原因プランクトン アレキサンドリウム・タマレンセ(4連鎖群体)

図1 過去に見られた知見に基づくアレキサンドリウム・タマレンセの生活環

図2 プランクトン増殖のシュミレーションの一例


[その他]
研究課題名:噴火湾における麻痺性貝毒の毒化予知モデルの開発
予算区分 :国費:貝毒被害防止対策事業
研究期間 :平成7年度(平成5年~平成9年度)
研究担当者:北海道立函館水産試験場  資源増殖部 嶋田 宏
発表論文等:北海道(1993,94,95)貝毒被害防止対策事業報告書
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