[要約]
不明点の多いオホーツク海のキチジについて、移動回遊、産卵期、季節的深浅移動、漁獲物状況などが明らかとなってきた。また耳石による年齢査定の可能性が見いだされた。これらの結果は資源評価や資源管理方策策定に役立つものと思われる。
北海道立網走水産試験場・資源管理部 [連絡先]0152−43−4591 [推進会議]北海道ブロック水産研究関係試験研究推進会議 [専門]資源生態 [対象]他の底魚 [分類]研究
キチジはオホーツク海の特産品として重要な資源であるが、深海性の魚であるため生態に関しては不明な点が多い。資源を保護管理する基礎となるキチジの生態的特長とキチジを対象とした漁業の特性を把握するため、移動、成長、産卵、漁獲統計資料資料などを調べる。
[成果の内容・特徴]
- 北見大和堆での標識放流結果では、年を経るごとに放流地点より南の知床半島周辺で採捕される割合が高くなり、北方への移動は少なく南方への移動が多いことが明らかとなった(図1)。
- 卵巣の成熟状態から、産卵期は4月前後と推定された(写真1)。しかし、この時期でも延縄漁業では産卵直前の個体が漁獲される割合は極めて少ない。
- 耳石の輪紋を解析することによる年齢査定の可能性が見い出された(写真2)。
- 延縄漁業の漁獲水深から、分布域は400m〜1,200mと深いが、夏場は600m前後、冬場は900m前後と季節により深浅移動することが明らかとなった。
- オホーツク海での延縄による漁獲物は体長23cm前後が主体で、東北沖や道東、道南太平洋に比べ大型のものが多い。
[成果の活用面・留意点]
平成10〜11年には、更に生態的特性などの調査研究を続けるとともに、得られた結果をもとに、的確な資源評価と資源予測法の確立、及び資源管理技術開発を図る。
[具体的データ]
[その他] 研究課題名:キチジの資源評価基礎調査 予算区分 :道費:キチジの資源評価基礎調査、地域性底魚類の資源生態調査 研究期間 :平成9年度(平成7年〜平成11年度) 研究担当者:夏目雅史、国広靖志 発表論文等:オホーツク海のキチジの漁業と生態(その1、2)、北水試だより、第28・29号、1995 オホーツク海で獲れた産卵中のキチジ(短報)、北水試研報、第48号、1996 「オホーツク海のキチジ、太平洋まで旅する」、北水試だより、第36号、1996
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