内分泌撹乱物質検索のためのビテロジェニン測定系の確立


[要約]

本研究では内分泌撹乱物質の影響調査を行うため、その指標となるビテロジェニンの測定系の確立を行うと伴に、影響評価のための基礎研究を行った。

北海道区水産研究所・海区水産業研究部・資源培養研究室
[連絡先]0154−91−9136
[推進会議]北海道ブロック水産研究関係試験研究推進会議
[専門]水産増殖
[対象]魚類
[分類]研究

[背景・ねらい]

  環境水に含まれる雌性ホルモン作用のある内分泌撹乱物質の影響を調査する手法として、魚類雄の血中に誘導された卵黄蛋白の前駆体であるビテロジェニンを指標とする方法が開発され、利用されつつある。本研究では野外調査の指標種として広域に分布するマハゼとウグイを選定し、両種のビテロジェニンの酵素免疫測定系の確立を目的とした。また影響調査のために必要な情報を得るため、どの程度の雌性ホルモンが両種の体内に入ると血中にビテロジェニンが誘導されるかについても併せて検討した。 

[成果の内容・特徴]

  1. ビテロジェニン測定系の確立:今回作製した酵素免疫測定系でのビテロジェニン測定可能範囲は、マハゼで1.3〜80ng/ml、ウグイでは1.5〜200ng/ml(図1)、血清サンプル100倍希釈時にはマハゼで0.13〜8 g/ml、ウグイでは0.15〜20 g/mlであり、また必要な血液量も10 l程度で、若齢魚も含めて野外調査で得られた魚への利用に適したものであった。
  2. 雌性ホルモン投与量と血中ビテロジェニン量の関係:1μg/kg以下の雌性ホルモン注射群では、両種とも血中のビテロジェニン濃度に対照群(0μg/kg)との差は認められなかった(図2)。ウグイでは10μg/kg以上の、マハゼでは25μg/kg以上の雌性ホルモン注射群では、ホルモン濃度に依存してビテロジェニン濃度は高くなった。また25μg/kg以上の注射群ではマハゼのビテロジェニン濃度がウグイに比べて高く、雌性ホルモン感受性が魚種により異なることが示唆された。

[成果の活用面・留意点]

  1. 今回作製した測定系を用いることで、環境水中の内分泌撹乱物質の存在の有無を比較的簡便に調査することができる。
  2. 全国の大都市周辺の沿岸域からマハゼ雄魚の血液サンプルを収集し、内分泌撹乱物質影響評価に向けた準備を急いでいる。

[具体的データ]

図1.マハゼ及びウグイのビテロジェニンELISAの標準曲線

図2.異なるエストラジオールβ投与量におけるマハゼ及びウグイの血中ビテロジェニン濃度


[その他]
研究課題名:ビテロジェニンを指標とした海産魚類における内分泌系撹乱の実態解明
予算区分 :科学技術振興調整費
研究期間 :平成10年度(平成10年〜平成12年)
研究担当者:北海道区水産研究所 海区水産業研究部 資源培養研究室 松原孝博・大久保信幸
発表論文等:魚の性の撹乱の現状 第1回環境ホルモン学会講演会,1998
      マハゼ・ウグイ雄魚へのエストラジオール17β投与量と血中ビテロジェニン量の関係について 平成11年度日水学会春季大会,1999 

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