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北光丸、米軍機墜落事件に遭遇−パイロットを救助!

  • 平成24(2012)年北光丸7月20日に釧路港を出港し、夏季サケ・マス資源生態調査に向け航行していた水産総合研究センター漁業調査船「北光丸」は、22日11時30分頃、墜落したアメリカ軍所属のF16戦闘機のパイロットが救助を求めているとの連絡を受け、急遽救助海域へ向かい、海上保安庁等と連携し無事パイロットを救助しました。
  • 現在、ベーリング海を航海中の石井船長から救助までの詳細なレポートが届きましたので、紹介させていただきます。救助までの詳しい経過(PDF)
  • 石井船長は「現場の濃霧の状況で海上にいる人を発見できるのか不安であったが、無事に救助する一端を担えて良かった。」と大役を終えた感想を述べていました。
  • なお、北光丸は救助活動を終了させ、調査航海へ復帰、現在調査海域であるベーリング海を航海中で、釧路港帰港は8月12日(日)の予定となっています。
  • 本航海の調査概要についてはこちらをご覧ください。 ▶夏季サケ・マス資源生態調査 計画書(PDF)

米軍機パイロット救助顛末記

救助までの航跡図 救助要請を受け、直ちに機関長、全航海士、通信長を船橋に招集し、救助に当たる際の問題点及び対応策を検討し現場向け急行した。

 現場へ接近するに当たり、甲板部は船橋見張り員を増員するとともに交通艇降下準備作業を、機関部は船橋機関操作担当者を配置するとともに交通艇船外機トライアルを、通信長は船橋に詰め通信確保を、司厨部は救助者を船内に留めた場合に備えて空き居室のベッドメーク及び要救助者への水と食料準備を、調査員方々は英語によるVHF交信の傍受、翻訳及び応援待機した。

 要救助者へのアプローチは上空の航空機より位置等の情報提供がなされたため、これを頼りに接近した。現場付近の視程は約300mと最悪な状況であったが、パイロットは位置発信器を所持していたのかもしない。

 レーダ画面上約0.5海里に救命筏らしき映像を認め、極微速で接近、約0.2海里で要救助者の乗った救命筏であることを確認した。さらに接近したところ、霧が濃くなり短時間ではあったが見失ったため、救助に派遣する交通艇をも見失うのではないかとの不安を抱いた。しかし、パイロットが点火した信号紅煙を確認することができたため大丈夫であると判断し、交通艇派遣を決定した。

作業艇で救助されたパイロット 直ちに停船し交通艇を派遣、約4分後に森一等航海士から「パイロットを救助した。」との無線連絡。船橋内の者より、一斉に安堵のため息を聞いた。

 その後、本船後方で微速待機していたコンテナ船の接近を許可、レーダで距離を把握していたが、約0.3海里になって突然巨大な船体が現われ再び緊張。該船は約0.1海里まで接近。濃霧の中、運動性能の制限される巨大船を操船された船長の胆力に敬服。コンテナ船が停船したことを確認し、パイロットを乗せた交通艇に接近を指示。数分後に一等航海士より「パイロットを移乗させた」の連絡。

 後刻、交通艇要員から救助の様子を聞いたところ、救命筏(夏に小さな子供が庭でプール遊びするような小さな物)上のパイロットは疲労しているように見受けられたが、艇に乗り移らせると怪我等も見られず意外と元気な様子であった。声をかけると日本語で「ありがとう」と笑顔で答え、ヘルメットを脱ぎ毛糸の帽子に取り替えてすぐに艇内に背を預けたまま身じろぎもせず差し出した水を一口飲んだだけ。同人は黒色のサバイバルスーツを着用し、複数のポケットには非常装備が備えられている様子であった。

 一等航海士の問いかけに「三沢の基地からアラスカ基地へ向かう途中、エンジンがストップした」と答えた。至近の本船を指さし「ホッコウマル?」と船名を述べており、無線機により本船が救助に向かっていることを承知していたようであった。

 コンテナ船への移乗は、同船左舷に下ろされた斜め階段を(海面から甲板まで約10m)一人で登っていった。また、艇で回収した救命筏は所持していた小型ナイフで切り裂き丸めて持ち帰った。

北光丸船長 石井裕二

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