水産総合研究センター「北海道区水産研究所」

  • トップページ
  • トピックス
  • 平成24年度
  • 大震災を生き延びたサケ

東日本大震災を生き延びたサケをベーリング海で発見しました !!

 東日本大震災から2年余りが経過しました。震災では太平洋沿岸の多くのふ化場が被害を受け、放流まぎわの多くのサケ稚魚が津波に巻き込まれたり、施設のほとんどが使用不能となりました。これらのサケがどうなったのか、関係者のみならずとも気になるところだと思います。
 岩手県沿岸のほぼ中央に位置する山田湾にも津波が襲来し、甚大な被害を及ぼしました。その山田湾に注ぐ織笠(おりかさ)川にある織笠ふ化場は津波による被害は免れたものの、飼育に不可欠な用水の取水が困難となったため、震災の翌日の2011年3月12日にサケ稚魚全数の緊急放流を余儀なくされました。その稚魚の一部には東北区水産研究所による調査(農林水産技術会議事務局「実用技術開発事業」)のために特有の耳石温度標識が施されていました。
 その中の1尾が、2012年夏にベーリング海で行ったモニタリング調査(水産庁補助事業「国際資源動向要因調査」)で発見されました。このサケは、8月1日に中部ベーリング海の定点で採捕された2年魚で、耳石に記録された標識パターンから、震災時に織笠ふ化場から放流された個体と判断されました。

織笠ふ化場
現在、山田湾の拠点として集約施設の整備が進められている織笠ふ化場

 ベーリング海は日本系サケにとって大変重要な夏の餌場です。北海道区水産研究所では、水産庁補助事業の一環として、沖合域における日本系サケの資源状態や生息環境を把握するために毎年夏季にベーリング海で漁業調査船北光丸によるモニタリング調査を実施しています。今回、採集されたサケ3,702個体を調べ、織笠ふ化場由来魚を含む日本産の耳石標識サケ92個体がみつかりました。織笠ふ化場由来のサケは、未曾有の大災害を耐え抜き、他の日本系サケと共に1年以上かけてベーリング海に無事たどり着いたのです。
 岩手県沿岸部では28ふ化場のうち23カ所の施設が被害を受けましたが、翌年の春には例年の放流数の約7割程度まで回復させるなど、精力的な復旧が進められています。ふるさとの川に一尾でも多くのサケが回帰することで、東北地方の復興につながっていくことを願っています。

織笠ふ化場と採補位置 北光丸調査
北光丸船上での調査作業
耳石標識
織笠ふ化場と標識魚採捕地点の位置および推定される回遊経路 ベーリング海で発見された織笠ふ化場由来サケの耳石温度標識

※岩手県におけるふ化場の復旧状況等についてこちらをご参照ください。

国立研究開発法人水産研究・教育機構 北海道区水産研究所
〒062-0922 北海道札幌市豊平区中の島2条2丁目4-1 TEL:011-822-2131(代表) FAX:011-822-3342
【釧路庁舎】〒085-0802 北海道釧路市桂恋116 TEL:0154-91-9136(代表) FAX:0154-91-9355
【厚岸庁舎】〒088-1108 北海道厚岸郡厚岸町筑紫恋2-1 TEL:0153-52-4767(代表) FAX:0153-52-6141
© Copyright Hokkaido National Fisheries Research Institute, Japan Fisheries Research and Education Agency All rights reserved.