水産総合研究センター「北海道区水産研究所」

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千歳川水系で観察されたニジマスからブラウントラウトへの置き換わり現象

 最近、侵略的外来種リストの作成が環境省によって進められたり、道内では北海道外来種対策基本方針が発表される等、外来種ニジマスとブラウントラウトの管理方針を巡る議論が再燃しています。
 管理方針を考えるには、外来種が周囲の生物とどのように関わり合って暮らしているかを知ることが必要です。これまで、ニジマスやブラウントラウトと在来種(アメマス・サクラマス等)との関係については研究がされてきましたが、外来種同士であるニジマスとブラウントラウトの関係についてはよくわかっていませんでした。
 そこで、北海道千歳市を流れる千歳川水系について、既存の文献から得た1990年代と自身でデータを集めた2010年代の分布状況から、ニジマスとブラウントラウトの関係について考えてみました。
 

ブラウントラウト
千歳川の支流紋別川のブラウントラウト

 両外来種について、1990年代では広範囲でニジマスが確認されたのに対し、2010年代では多くの場所でブラウントラウトのみが確認されました。ただし、2010年代でも堰堤や伏流部の上流側といった移動障壁があり、ブラウントラウトが侵入できない場所ではニジマスのみが生息し、稚魚も確認されました(下図参照)。

1990年代ニジマス、ブラウン分布 2010年ニジマス、ブラウン分布

千歳川水系における1990年代と2010年代のニジマスとブラウントラウトの分布状況。Hasegawa et al. (2014) Aquatic Invasions(PDF) を改変。
なお、1990年代の分布状況については、下記の文献を参照した。
■千歳市・(株)たくぎん総合研究所(1997) 平成8年度千歳市自然環境基礎調査河川・湖沼調査報告書
■高山肇・菊池基弘・若菜勇(2002) 北海道の湖沼~ブラウントラウトとウチダザリガニの分布拡大.日本生態学会編 外来種ハンドブック.pp254-256.


ニジマス

 千歳川では1955年までニジマスが放流されており、1983年までは川沿いの養魚場でニジマスが飼育されており、池から逃げ出す魚も多少いたそうです。それらがなくなったことがニジマスが見られなくなった原因の一つと考えられますが、ブラウントラウトが侵入できない場所ではニジマスが世代交代をしている状況から、ブラウントラウトの影響によってニジマスがいなくなった可能性も示唆されました。この点については、今後、さらに研究を進める必要性があると思います。
 本研究はあくまで千歳川水系での事例であり、他の川でも同様だとは断言できません。また、両外来種の管理方針を考える材料にはなりますが、管理方針そのものを導くことはできません。ただ、これまで見落とされてきた外来種同士の関係について重要な指摘ができたと考えています。

千歳川の支流ママチ川の伏流上流部で採集したニジマスたち。
体の大きさから様々な年齢の魚がいることが伺える。

さけます資源部繁殖保全グループ 長谷川 功


参考

  • 北海道のサケ・マス増殖河川におけるニジマスおよびブラウントラウトの生息状況(PDF)
  • サケ科魚類のプロファイル-5 ニジマス(PDF)
  • サケ科魚類のプロファイル-8 ブラウントラウト(PDF)
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