独立行政法人 水産総合研究センター 北海道区水産研究所

釧路に21年ぶり流氷接岸

2008年3月8日、21年ぶりに釧路の浜に「流氷」を観測しましたので、写真を掲載します。

2008.3.8

(亜寒帯漁業資源部森田晶子研究員撮影)

  冬、オホーツク海の沿岸には流氷がやってきます。一見生物が見当たらない氷の海ですが、氷の下には豊かな世界が広がっています。氷の底部にはアイスアルジーと呼ばれる植物プランクトンが増えます。このアイスアルジーを食べに動物プランクトンが氷の下に集まり、その動物プランクトンを食べる魚も集まります。これらの魚を食べにアザラシやトドもやってきます。またアイスアルジーの一部は海底に沈み、ウニやホタテガイの餌となります。

2008.3.8

   春になり氷が溶けると海の表面に塩分の薄い層ができます。この中にいる植物プランクトンは光の多い表層に留まることができるため、氷が溶けた後には植物プランクトンのブルームがみられます。

2008.3.8

   海氷は時には養殖施設を壊したり船を閉じこめたりして海で働く人々を困らせます。しかし、海氷が来ると海底の岩をこすって岩についた雑海藻を取り除いてくれます。雑海藻が取り除かれるとコンブの生える場所が増えるためコンブの水揚げが増えます。道東の太平洋側では1987年以降流氷がやってこないため、雑海藻が増えているので、水中ブルドーザーなどで雑海藻の駆除をしなくてはなりません。

2008.3.9

  釧路・根室地方のコンブは年によって生産量が大きく変動することがあります。採集期における天候の影響によることもありますが、流氷の接岸もコンブの豊凶を左右する原因ともなります。

2008.3.9

  道東地方では、年によって2月中旬頃から3月末に多量の流氷がオホーツク海から根室海峡を通って大平洋に流れだし、そして南風が吹き荒れると沿岸各地に大小の氷塊が吹き寄せられることがあります。

2008.3.9

  この時、海底の岩などをこすり、その年に採集するコンブに大きな被害を与えますが、反面天然の大きな力によって雑海藻などを取り除く磯掃除が行われ、被害を充分に補うだけの新しいコンブの新芽を着生させる場所を作り、翌年の豊作につながります。長い目で見れば、流氷はコンブ生産にとって天然の恩恵と言えるかもしれません。

2008.3.10

  地球温暖化のためか、道東の太平洋側では近年、流氷がやってこない年が多く、雑海藻が増えているので、いろいろな方法で磯掃除をして雑海藻を駆除しなくてはなりません。

説明文はおさかなセミナーくしろ釧路の海の科学「海氷がもたらす幸」(1995年)・気候と魚の科学「コンブと流氷」(2000年)より引用

 3月9日,北海道区水産研究所からまっすぐ南に出た海岸の状況です。


調査中の「北光丸」より撮影した道東沖の流氷写真(2008.3.7)