独立行政法人 水産総合研究センター 北海道区水産研究所

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最終更新:2008年5月19日

スケトウダラ幼稚魚餌料環境調査(2008.5.4〜15)
亜寒帯海洋環境部海洋動態研究室
日下 彰
Akira Kusaka

 


 平成20年5月4日〜15日、水産庁漁業調査船「開洋丸」により、道東陸棚域〜親潮混合域において広域環境調査を行いました。

   写真1 CTD/LADCP。海洋観測の基本となる観測機器。
        これを用いて海中の水温、塩分等を測定します。
 図1 A-line観測によって得られた水温(左上)、塩分(右上)、
     密度(下)の鉛直断面構造
 各観測点では、スケトウダラの生息する親潮域における水温・塩分、流れ場を把握するため、CTD/LADCP(写真1)を用いて海洋観測を行いました。その結果を図1に示しました。
 これをみると、この海域に特徴的な1℃台の中冷構造をもつ親潮水がA13あたりまで広く分布しており、その南には暖かい黒潮系の高温高塩分の水塊が分布していることがわかります。一方、例年であれば親潮の南下流の構造が顕著にみられるA03〜A04付近には、この時期としては比較的暖かい水塊が分布しています。

   写真2 水中照度計(PRR)。水中の光環境を測定する
        機器です。 
   写真3 CTDで採水した海水を船上で24時間培養し、
        一次生産量を計測しました。
 また各測点では、植物プランクトンの成長に影響を与える水中の光環境を把握するため、水中照度計(PRR、写真2)を用いて水中照度プロファイルの測定を行いました。
 その結果を基に植物プランクトン培養につかう採水層を決定後、採水した海水を用いて船上にて植物
プランクトンの培養実験を行いました(写真3)。

   図2 EPCS観測によって得られた水温(左)、塩分(中)、
      クロロフィル濃度(右)の水平分布
     写真4 親潮ブルーミング域で投入した漂流ブイ
 本調査が行われた時期は、スケトウダラの餌料に影響を及ぼすと考えられる植物プランクトンの春季ブルーミングという現象が発生する時期にあたります。EPCS(表層環境モニタリングシステム)による観測結果によると、北緯41度30分-42度付近を中心にクロロフィル濃度が高い領域が形成されていることがわかります(図2)。そこでその詳細な遷移過程を把握するために、ブルーミング発生域において漂流系を投入し(写真4)、24時間追跡調査を実施しました。

写真5 回収したAPEXフロートと調査員とで記念撮影

 さらに、黒潮続流域で不具合に陥っていたクロロフィルセンサー付きのAPEXフロートの回収を試み、作業
開始から僅か30分以内で無事回収することができました(写真5)。

 

 (亜寒帯海洋環境部海洋動態研究室 日下 彰)