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水は0℃以下で凍り、100℃以上で蒸気になります。私たちのまわりでは水はふつう液体ですが、ほかの物質を液体状態で見ることはあまりありません。元素では金、銀、銅、鉄などは1,000℃以上でなければ融けませんし、水を作っている水素や酸素はマイナス180℃以下でなければ液体になりません。常温で液体状態なのは臭素と水銀くらいです。
太陽系のほかの惑星はどうでしょう。水星と金星にはほとんど水分がありません。火星にはわずかにあり、木星の衛星はたっぷりの水分を持っていますが、カチカチの氷です。
水が地球上で液体のままあることはとても不思議なことなのです。
ほかにも水の変わった性質はたくさんあります。ふつうの物質は固体のときは液体のときより密度が大きくなり、沈みます。氷が水に浮くという現象を、わたしたちはごく当たり前のように見ていますが、これは、ほかの物質ではみられない、不思議な現象なのです。(小笠原)
「美しい、地球は青かった」と言ったのは、はじめて宇宙から地球を見たソビエトのガガーリン宇宙飛行士の言葉です。地球だけに液体の水があり、海があります。地球表面の71%は海です。
もし、昔の人がこんなに海が広いことを知っていたら、地球ではなく、水球あるいは水星と名付けたでしょう。実際、ニュージーランド付近のはるか宇宙から地球を見れば、陸地は10%しか見えません。
地球表面にある水の97%は海にあります。海の平均の深さは3,800メートルです。わたしたちは海はとても深いところと考えていますが、地球的規模で見ると、地球表面に張りついた薄い膜みたいなものです。大気の層も同じです。
私達はこんなに薄い大気に守られ、海の恵みを受けています。近年、オゾン層の破壊とか、海洋汚染のニュースをききますが、大切にしなければ取り返しのつかないことになります。(小笠原)
赤道付近と極地方では太陽光線を受ける角度が違います。このため、太陽が真上に来る赤道付近が暖かく、北極や南極では寒くなっています。
夏の赤道付近から九州沖までは28℃以上ありますが、釧路沖は18℃以下です。冬は赤道付近は変わらず28℃くらいですが、釧路沖では5℃以下になっています。
海の深い所はどうでしょう。水深500mくらいまでは深くなるにつれ急激に温度が下がりますが、1,000m付近で5℃以下になってからは、水温の下がり方は緩やかで、2,000m以深では2℃以下です。太平洋では、南極付近での冷却がきびしく、表層域も2℃以下です。
海が誕生して以来、陸から運び込まれる塩分はしだいに濃くなり、今では海水1リットルに約35gです。海水の塩分は沿岸水域をのぞけば1割程度の差しかありません。蒸発の多い海域では塩分は高く、降水が多い海域や河川水の流入する海域、氷のできる海域ではうすくなっています。(小笠原)
海水の密度が違うことにより、海面に高低が生じます。海水は高いところから低いところへ流れようとしますが、地球自転のよるみかけの力(コリオリの力)を受けて、北半球では海面の等高線に沿って高い方を右に見て流れます。
風によっても海流が発生します。
北太平洋の北緯40度付近では偏西風が強く、北緯10度付近では北東貿易風が吹いています。これに対応するように、北太平洋海流が中緯度を東流し、北赤道海流が低緯度を西流しています。この二つの海流を含む時計廻りの流れが一番大きな還流、亜熱帯還流と呼ばれています。
沖合の波はただ上下に動いているように見えますが、砂浜では、寄せては返す波がみられます。大きな被害をもたらす津波も波です。波は沿岸の水深の浅いところにくると、上下動より、水平的な動きが大きくなります。
月や太陽の引力により海面が盛り上がる潮汐も波長がとても長い波で、潮流も実は波による流れです。(小笠原)
北太平洋を例にすると、北赤道海流、黒潮、北太平洋海流、カリフォルニア海流で結ばれる亜熱帯還流は、強弱の差はあれ、すべての大洋の亜熱帯海域に例外なくあります。もちろん、南半球では半時計回りです。しかも例外なく、大洋の西海岸沿いでは、黒潮や湾流のように幅の狭い強い海流になっています。
北太平洋の亜寒帯には北太平洋海流、アラスカ海流、東カムチャッカ海流、親潮でひとまわりする弱い反時計回りの還流があります。
親潮と同じ性質の海流は北大西洋ではラブラドル海流、南大西洋ではフォークランド海流で、ともに良い漁場になっています。
ベーリング海、オホーツク海、日本海ではそれぞれ反時計回りの流れがあります。
北極とは違い、南極には大きな大陸があり、大陸を時計回りにひとまわりする南極環海流があります。(小笠原)
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日本近海には北太平洋を代表する2つの大きな海流があります。一つは台湾の東を北に向かい、本州南岸を流れる暖流で、その黒々とした水の青さから黒潮と呼ばれています。黒潮は銚子沖で日本列島から離れ、黒潮続流と呼ばれるようになりますが、混合水域で形成される暖水塊は黒潮続流の一部が分離して形成されたものです。一方、東シナ海から日本海にかけて認められる暖流は対馬暖流と呼ばれ、この暖流が津軽海峡、宗谷海峡を抜けたものを津軽暖流、宗谷暖流と呼びます。日本近海の寒流を代表する親潮は、その名の通り、親なる潮、すなわち生物をはぐくみ育てる海流として知られています。親潮の起源はベーリング海からカムチャッカ半島東岸沿いに流れる東カムチャッカ海流と、オホーツク海から太平洋に流出するオホーツク水と考えられています。親潮は東北沖で東に向きを変え、混合水域との間に親潮前線を形成します。(川崎)
親潮は日本の南側を流れる黒潮とどう違っているのでしょうか。親潮水域と黒潮水域の水温と塩分の深さによる分布の違いをみると、親潮水域は全般に黒潮及び黒潮続流よりも水温・塩分が低く、春季には融氷などにより最低値を示します。また親潮水域では水深100m~150m付近で水温が2℃以下、400m~600m付近で3℃以上の水温構造を示すのに対し、黒潮域では深さとともに水温が徐々に低くなります。一方、塩分では親潮域では深さとともに徐々に増加するのに対し、黒潮域では300m~600m層で塩分が最低値を示します。これを塩分極小と呼びます。
海の水の光の通りやすさを表す透明度は、黒潮域で大きく、海色も青から藍色を示し、親潮域の透明度の低い緑がかった海色とは全く異なっています。親潮域の透明度の低さは、生物生産の高さを表しており、深層から供給される栄養塩(リン酸塩など)の濃度も黒潮域の50~100倍の大きさです。(川崎)
さて、親潮という海流の定義について、昔から様々な議論がありましたが、現在ではウルップ島南から道東・三陸沖に連なる南西向きの流れが親潮であるとして認識されています。ウルップ島よりも上流に連なる親潮源流域では何が起こっているのでしょうか。ウルップ島よりも北東側には2つの起源の異なる亜寒帯水が分布しており、太平洋側ではカムチャッカ半島の南岸沿いに南西に流れるベーリング海起源の東カムチャッカ海流水が分布しています。一方、オホーツク海側にはオホーツク海起源の海水が分布し、これら2つの異なった海水が様々な深度で混合して形成された海水が親潮であると考えられているのです。2つの海水の違いをみると、オホーツク水は東カムチャッカ海流水に比べて全般に低温・低塩分であり、親潮水の形成にとって重要であることがうかがえます。2つの亜寒帯水の混合には中部~北部千島列島域の複雑な海底地形や諸海峡を通じた両海域の海水交換が深く関与していると考えられます。(川崎)
それではオホーツク水はなぜ太平洋側の海水に比べて冷たいのでしょうか。オホーツク海は皆さんご存じのように、北半球で最も南で海氷が形成される海域です。オホーツク海北部の大陸棚にはアムール川から大量の真水が流れ込み塩分の少ない表層低塩分水が作られます。オホーツク海は10月頃から冬の季節風で冷やされ、表層水は重くなり沈んでいきますが、表層低塩分水の分布する50m深で対流が止まり、海氷が形成されやすくなるのです。一方、オホーツク海南部の千島海盆域は水深が深く、また表層と中層との塩分濃度の差は他の海域に比べて大きくありません。したがって、表層で冷やされた海水はより深くまで混ざり、冷たいオホーツク水が形成されます。冬の間に生じるこれらの現象がオホーツク海をより冷たくしているのです。(川崎)
親潮の流れを測るには、直接流向流速を測る方法と、海面の凸凹を推定して流速を間接的に計算する方法があります。海の中の流れを直接測定するには海中に流速計を固定する必要があります。道東沖で親潮の時間的な変動を解明するため、北水研海洋環境部が継続して行っている観測とその結果について紹介しましょう。係留系とはガラスブイなどの浮力体、流速計などの海洋測器、それぞれをつなぐロープやシャックル、系を固定するおもりよりなり、定期的に系を回収・再設置しています。親潮は、1000mの深さでも平均で10cm/s程度の速度で流れており、常に南西に向かっています。これまでの流速の記録から、親潮の流れにははっきりとした季節変化が存在することがうかがえました。親潮の流れは12~3月に最大となり、その強さは10月~11月までの間徐々に弱まっていきます。この季節変化の原因として、冬の季節風が海面に与える力(応力)の強さが考えられています。(川崎)
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冬:強い季節風のため、海は深い層(150-200m)まで良く混ざっています。植物プランクトンは光が届かない無光層まで運ばれてしまうため増えることができません。1年中で最もプランクトンの少ない時期です。けれども表層には海の深い層から栄養が十分に運ばれます。冬はこれから迎える準備の期間です。
春:季節風が弱まり太陽の光が強くなる春には水温が上昇し、水温躍層という境界ができます。植物プランクトンは光の届く有光層に留まることができ、栄養も充分にあるため冬の100倍くらいまで急激に増加します。これを植物プランクトンの“春季ブルーム”といいます。ブルームとは花が満開になるという意味があります。植物プランクトンを食べる動物プランクトンも増え、一年のうちで最もプランクトンの多い時期です。
夏:光はますます強くなり水温も上昇するので水温躍層が発達します。冬の間深い層から有光層に届いた栄養は使い果たされてしまい、強い水温躍層のため栄養も有光層に届かないため植物プランクトンは増えることができず春の1/10位にまで減少します。春に増えた動物プランクトンを食べにたくさんの魚や鳥や鯨が回遊してきます。
秋:再び風が強まり、水温躍層が弱くなり栄養塩が有光層に届くようになると秋季ブルームという植物プランクトンの増殖が見られます。けれども風が強まるにつれて植物プランクトンが無光層に運ばれるようなり、プランクトンも減ってしまいます。(齊藤)
冷たい親潮の流れている北の海は暖かい黒潮の流れている黒潮域や、黒潮と親潮の混ざった混合域に比べてプランクトンが豊富です。それは親潮の水に植物プランクトンの栄養がたくさん含まれているからです。豊富な栄養を利用して植物プランクトンが増え、植物プランクトンを食べる動物プランクトンも増えます。また、北の海にいる動物プランクトンは暖かい海の動物プランクトンよりも大きいのが特徴です。夏には、混合域の5倍、黒潮域の20倍もの動物プランクトンが親潮域に分布します。
プランクトンとは?
自分で水の動きにさからって泳ぐことのできない生物を指します。その多くは0.0004~10mmの大きさの小さな生物です。しかし時には1mにも達するくらげも水の動きに逆らって泳げないためやはりプランクトンと言います。
植物プランクトンとは?
大きさが0.0004~0.1mm位の大きさの藻類です。光と栄養があれば増えることができます。
動物プランクトンとは?
大きさが0.1~10mm位の大きさのプランクトンで、植物プランクトンや他の動物プランクトンを食べて成長します。魚や海鳥、クジラの大好物です。(齊藤)
種類 | 産卵場または保育場 |
マサバ | 房総・東海 |
マイワシ | 東海・薩南 |
アカイカ | 北緯20-30度の太平洋 |
アホウドリ | 鳥島 |
コアホウドリ | ミッドウェー島 |
ミズナギドリ | オーストラリア |
ザトウクジラ | オアフ島、父島、沖縄 |
これらの生きものは冬から春に産卵し、夏には北の海へ餌を求めて回遊します。(齊藤)
冬、オホーツク海の沿岸には流氷がやってきます。一見生物が見当たらない氷の海ですが、氷の下には豊かな世界が広がっています。氷の底部にはアイスアルジーと呼ばれる植物プランクトンが増えます。このアイスアルジーを食べに動物プランクトンが氷の下に集まり、その動物プランクトンを食べる魚も集まります。これらの魚を食べにアザラシやトドもやってきます。またアイスアルジーの一部は海底に沈み、ウニやホタテガイの餌となります。
春になり氷が溶けると海の表面に塩分の薄い層ができます。この中にいる植物プランクトンは光の多い表層に留まることができるため、氷が溶けた後には植物プランクトンのブルームがみられます。
海氷は海の掃除屋さん?
海氷は時には養殖施設を壊したり船を閉じこめたりして海で働く人々を困らせます。しかし、海氷が来ると海底の岩をこすって岩についた雑海藻を取り除いてくれます。雑海藻が取り除かれるとコンブの生える場所が増えるためコンブの水揚げが増えます。道東の太平洋側では1987年以降流氷がやってこないため、雑海藻が増えているので、水中ブルドーザーなどで雑海藻の駆除をしなくてはなりません。(齊藤)
人間の生活は地球の環境に様々な影響を及ぼしています。石油や石炭を燃やすことによって増加している二酸化炭素は地球の気温を上げる作用があります。気温の上昇は水温を上昇させ、また季節風の強さを変えると考えられるため、海の生産力や生物の分布に影響があると予想されます。成層圏にあるオゾン層は生物に悪影響を与える紫外線から地球を守る働きをしています。このオゾン層はクーラーなどに使われるフロンガスによって減少しているため、地球に到達する紫外線が増えつつあり、生物への影響が心配されます。また生活排水や工場排水が海に流れると富栄養化がおこり、赤潮が発生します。
海は広く無限のように見えますが実は人間活動の影響を強く受けています。海を上手に利用するためには私たちの生活が海にどの様な影響を与えているのかをよく考えていくことが必要です。(齊藤)
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