水産総合研究センター「北海道区水産研究所」

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厳冬の千歳川に遡上する野生のサケ

 1月に入り、北海道は冬本番を迎えました。北海道区水産研究所千歳さけます事業所周辺では時には-20 度以下まで冷え込み、事業所の前を流れる千歳川では、「気嵐(けあらし)」と呼ばれる川霧がしばしば見られるほど寒い日が続いています。
 千歳川では、サケの個体群の維持と研究開発のために、千歳さけます事業所から毎年3千万尾のサケ稚魚を放流しています。この放流用の種卵を確保するため、8月中旬から12月中旬までは親魚の捕獲施設(インディアン水車)が設置されています。捕獲が終了したこの時期には、捕獲施設から約10km上流にある事業所周辺までたくさんのサケが遡上してきます。
 事業所の構内に架かる「ふ化場橋」から川をのぞくと、冷たい水の中で必死に上流へ向かって泳ぐ姿や産卵する様子を間近に観察することができます。今シーズン、職員が毎朝、目視でカウントしたところ、1月に入ってから多い日で50尾余りのサケが確認されています。 
 この時期に遡上するサケは、ふ化放流によるものでなく、自然産卵による野生サケということが、耳石温度標識による調査結果で明らかになってきました。河川個体群毎の遺伝的多様性や固有性を守るためには、こうした継代的に自然産卵を繰り返す魚を保全することが重要です。このため、千歳川をモデルに野生サケの実態調査に取り組んでいます(以下論文参照)。
 

川霧が立ち上る千歳川
川霧が立ち上る千歳川(川霧:水温より気温が低くなることで発生)
関連論文(日本水産学会誌 J-STAGEへリンク)
・人工ふ化放流河川におけるサケの成熟年齢・サイズの野生魚-放流魚間比較(長谷川ら2013)
・北海道千歳川におけるサケの自然再生産効率 (森田ら2013)

ふ化場橋から ふ化場橋から見えるサケ 産卵を終えたサケ
ふ化場橋の上からのぞくと・・・ 遡上してきたサケが観察できます。
「偏光グラス」があるとよく見えます。
川底には産卵を終えたサケが横たわり、オジロワシがそれを狙っています。
千歳川上流のサケ
  千歳川上流にて(2014年1月)
 
  事業所よりさらに上流で多くの野生サケが自然産卵している様子が観察されました。

千歳さけます事業所には、展示施設も併設されており、この中では泳ぎ始めたサケ稚魚の様子を見ることができます。
数は少くなっていきますが、2月中旬頃までは、サケの遡上を観察できる可能性があります。厳冬の千歳川にサケを見にきませんか? 
ただし、事業所周辺は千歳の市街地よりも気温が3度くらい低いので、暖かい服装でいらしてください。

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