ハナサキガニと磯の関わり 4)ハナサキガニの中間育成と放流

おさかなセミナーくしろ2001「磯の生き物の科学」より

 5月初めに生産された種苗は甲長で2.3o程度なので、さらに大きく育てることと自然環境に馴らす目的で、放流前にさらに育成を行います。これを中間育成と言います。中間育成は、袋状のネットに種苗を収容し海中に垂下して行います。この間は天然のプランクトン、藻類などが餌となります。5〜7ヶ月間で甲長が6〜10o程度のかなりしっかりとした稚カニとなり、ようやく放流できるようになります。

 放流する場所の磯にはプランクトン、底棲生物、藻類等の餌生物が豊富で、しかも隠れ家となる場所もあります。この磯でコンブガニ、イソガニと呼ばれる甲長およそ50o程度まで過ごすといわれ、その後徐々に沖に出ていって親ガニとなります。

 人間社会でたとえると種苗生産と中間育成は保育園のような役割を果たし、放流後の磯は社会に独り立ちするまでにいろいろなことを学ぶ小、中学校の役割を果たしているといえます。したがって、磯の豊かな生態系が汚染などによって破壊されると、ハナサキガニは大きく育つことができなくなり資源が枯渇してしまいます。このように一見何でもないような磯は,ハナサキガニなどの海の生物にとって非常に大きな役割を果たしているのです。(芦立)

 

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