北水研ミニ情報「北の漁火」 創刊号~第4号(1991年,平成3年発行)

号(年月) 今月の話題 研究の紹介
第4号(平成3年12月) 季節の変化に思う スケトウダラの資源研究
第3号(平成3年11月) 道東海域のスルメイカ漁は・・・ いか類の資源研究
第2号(平成3年10月) 道東沖の漁火はいま マイワシ資源研究
創刊号(平成3年9月) 北水研ミニ情報の創刊に当たって 北水研の研究推進基本方向

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北の漁火 第4号(平成3年12月)

今月の話題:季節の変化に思う

 北海道の11月~12月は、季節の変わり目で、寒冷な日と温暖な日とが交互に訪れそれとともに強い風が吹きます。この時期の北海道は、雪の便りや氷点下の地方、晴天の日が続く地方等、地域で大きく違った状況となります。この季節を待っていたようにスケトウダラは、産卵のために沿岸域に来遊し始めます。スケトウダラは、色々な水産食品の原料として利用されていて沖合や沿岸漁業の重要な漁獲対象魚です。スケトウダラの立場からすると、子孫を残すための親が漁獲され十分な子孫が残らない状態も出て来ることになります。ですから、スケトウダラに限らず大切な水産資源を減少させず安定した漁獲を続ける方法の開発が重要になって来ると考えます。このためには資源管理型漁業を進め、技術開発に役立つ基礎的研究の進展を図ることが私達の重要な責任だと思っています。
(企画連絡室長)

研究の紹介:スケトウダラの資源研究

 北海道周辺のスケトウダラは50~400m水深帯に生息し、沖合底びき網や刺し網等の漁業で年間約40万トン漁獲されています。当水研では、主に太平洋海域における資源の評価・予測及び変動機構の解明をめざして研究を進めています。(1)スケトウダラの卵・仔魚分布量に基づく産卵親魚量の推定:毎年冬季に襟裳岬以西海域で卵・仔魚調査を実施しています。最近5年間の調査結果から算出した卵量指数と産卵期の漁獲量との間には逆相関の関係が見られます。(2)スケトウダラ太平洋系郡の産卵場形成及び卵稚仔の移送過程と海洋環境との関係の解明:発生初期段階の卵の分布と産卵盛期の0~100m深の平均水温との関係を調べた結果、主産卵場は噴火湾内と見られ、そこでの卵分布量は、平均水温の高い年で少なく、低い年で多い結果が得られました。(3)スケトウダラ太平洋系群の許容漁獲量の推定:年齢別漁獲尾数などの解析によって、昭和60年以降の太平洋系群の資源量は減少を続けていることが明らかになりました。
 今後は、最近の漁業の操業実態を考慮して資源量を再計算し、許容漁獲量を推定します。

ひとこと

 今、「地球にやさしい開発」を目指す考えが進められているようです。「地球にやさしいとは」を考える時、様々な考え方の基準があるかと思います。その場合にやはり自分の都合や知識に合った判断をしがちではないでしょうか、そのことを避けるためには、多くの人が自然との関係を科学的に見ることが大切ではないかと感じます。
(企画連絡室長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

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北の漁火 第3号(平成3年11月)

今月の話題:道東海域のスルメイカ漁は・・・

 スルメイカは、古くから重要な水産物として利用されてきました。かつて、全国の水揚げ量は60万トン以上を記録した年もありました。しかし、昭和45年頃から減少し始め主要漁場の道東海域から姿が消えた時期もあります。スルメイカは寿命が1年で、産卵期が長く、その上大きな回遊をしますが、どの時期の群がどう漁業と関係しているかを十分説明するまでには至っていません。このため産卵や分布・回遊生態さらに資源量の変化等を把握することが重要となっています。北水研は、新しい研究の手法を取り入れつつ、安定した漁獲が出来るように研究の推進に努力しています。昨年から、道東漁場にもいか釣りの漁火が見られるようになってきました。この漁火を見ながら、生物の再生産の仕組みの不思議さ、そして効率的な資源利用法開発を進める基礎的調査など研究の責任の重さを強く実感しているこの頃です。      
(企画連絡室長)

研究の紹介:いか類の資源研究

 いか類の研究は産業的に重要なスルメイカとアカイカについて、資源の合理的利用法を確立することを目的としています。(1)平衡石日周輪によるスルメイカのふ化時期及び成長過程の推定:魚の耳石にあたる平衡石に現れる日周輪で日齢査定を行い、日齢から推定されるふ化時期と成長・成熟からのそれが一致することを明らかにしました。今後は、いつ、どこで生まれたかを解明し、いか類資源の変動要因について検討します。(2)バイオテレメトリーによるアカイカの行動特性の解明:いかに超音波送信機を取り付け昼夜にわたって行動を追跡しました。小笠原諸島近海の成熟した雌は、夜間は表層付近に、昼間は400~900mの深さに潜行することが判りました。今後は、いか流し網漁場の未成熟個体の行動を調べます。(3)三陸・北海道太平洋海域におけるスルメイカ及びアカイカの夏季の来遊量の推定:水研と水試の調査船調査結果で三陸・北海道太平洋海域に来遊するスルメイカとアカイカの量・漁場の位置・漁獲量を予測公表しました。これらの資料を積み重ねて、両種の分布・回遊生態及び漁場形成要因等を明らかにします。

ひとこと

 一般に生物は、種類独自の生活リズムがあり、同一種について個体毎の性質に違いはあっても生活リズムを守ることで種の存続が保たれて来たように思えます。彼らの生活リズムを破壊する要因は多いと思いますが、それに順応・適応することで種を維持してきたようです。このリズムを理解し、利用することが我々の研究の源でしょうか。
(企画連絡室長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

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北の漁火 第2号(平成3年10月)

今月の話題:道東沖の漁火はいま

 例年、9月はマイワシのまき網、サンマの棒受け網漁業が道東沖合域を賑やかにします。今年は、イカ釣り漁業も加わりその漁火が沖合を彩っています。マイワシまき網漁業は、道東海域では7月から10月にかけ24カ統の船団が操業します。昭和52年から対象がサバからマイワシに替わりました。その後、漁獲量は急速に増加し、昭和58~63年は年100万トン以上となりました。しかし、元年から90万トン台に減少し、今年もその傾向が継続しています。8月末までの漁獲量は昨年の81%に留まり、漁獲の主体も18㎝以上の大型魚で小型魚の出現が少ないのが心配されています。水産資源の変動機構の解明は、自然が相手だけに難しさがありますが、重要な水産資源であるマイワシを有効に利用するためにも息の永い研究が必要だと考えています。      
(企画連絡室長)

研究の紹介:マイワシ資源研究

 南の海域で生まれたマイワシは索餌のため道東海域に来遊します。この海域の来遊量や成長状態の把握は、資源量変動要因を知る上で重要です。(1)道東におけるマイワシ来遊資源量の推定:51年~平成2年に来遊した量と年齢別尾数から、この期間の再生産関係を検討しています。親子関係は、54年生まれの群までは安定していましたが、55年生まれの群から不安定になっています。それは、南の主産卵場の変化や、索餌域の広がりと回遊の拡大等によるためと推察されています。(2)索餌域の環境収容力とマイワシ資源変動の関係の解明:成長と資源量増加の関係が索餌域ではどう変化したかを検討しています。成長は、55年生まれの群から悪くなっています。これは、索餌する海域が広がったことで、餌をとる努力が大きくなったためではないかと推定されています。(3)マイワシの卵形成に影響を及ぼす内的、外的要因の解明:索餌域で再生産に影響する卵の形成と成長の関係を温度や光等の条件と関連させた飼育実験で検討しています。短日光周期は成熟を促進しますが、卵黄の形成期間は、比較的低い水温を必要とすることが推察されました。

ひとこと

 海産生物の研究は直接観察が出来ないため、自然の営みに出来るだけ対応させた調査の資料から忠実に彼らの声を聞き分析することが自然を相手にした研究には大切だと思っています。
(企画連絡室長)

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北の漁火 創刊号

今月の話題:北水研ミニ情報の創刊に当たって

 水研の研究内容の紹介は、行政を始めとして広く一般には理解され難いといわれていましたが、その策もないまま研究側でも検討をしていました。しかし、公刊図書には出ているものの、読まれていないと言う現状から、ダイレクトメール方式を考え、何時でも、速やかに、自由にそして手軽に、情報を伝達することを意図し、企画連絡室の情報機能として刊行することにしました。先ずは、研究課題別の概要を掲載しつつ、話題の広場、諸活動、人の動き等の記事を盛り込み、毎月1回のペ-スで情報を届ける予定です。ご期待下さい。
 この原案は、北海道電力株式会社総合研究所が事務局となり組織されている研究開発懇話会が進めている「ミニレター」を水研版にしたものであることを付け加えます。           
(所長)

研究の紹介:北水研の研究推進基本方向

 北海道周辺海域は、日本海、オホーツク海、太平洋と性質の異なる海で囲まれ、国際的諸事情も絡んだ厳しい背景があるため、12の研究目標課題を立て資源管理部、海洋環境部、資源増殖部の3部で対応しつつ計画的に調査・研究を推進しています。
 資源管理部は、国際資源を含む地域の漁業資源の維持・管理技術を開発するため、イワシ、スケトウダラ及びスルメイカ等について研究を進めています。
 海洋環境部は、親潮を基盤として、北方水域及び内湾域を生息場とする重要水産資源に影響する海洋生産力の適正評価をするための研究を進め、資源増殖部は、海域の特徴に合ったつくり育てる漁業の効率化を図るため、ホタテ貝、カレイ類、コンブ等についての研究を進めています。
 次号から、研究課題別の研究進捗状況の概要を順次紹介して行く予定です。

ひとこと

 創刊号を出すに当たって、企画連絡室として今後、この「北の漁火」が皆さんに可愛がられるかどうか、そして研究を理解して頂けるかなど、心配の種は尽きません。ともあれ、独断と偏見で我武者羅に始めることにしました。ご感想等をお寄せ下さい。

ミニ情報

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