北水研ミニ情報「北の漁火」 第17~28号(1993年,平成5年発行)

号(年月) 今月の話題 研究の紹介
第28号(平成5年12月) 親潮水域の生物生産システムの解明-第2回WPECワークショップの開催- ホッキガイの漁業管理ソフトについて
第27号(平成5年11月) 平成5年度『北水研・日栽協研究交流会』  PICES-GLOBECがいよいよ動き始める
第26号(平成5年10月) 西部亜寒帯循環に関する根室ワークショップ~成功裡に終了 オホーツク海と親潮水域における海洋研究とPICES
第25号(平成5年9月) おさかなセミナーくしろ’93を終えて バイオテレメトリーによるアカイカの行動特性の解明
第24号(平成5年8月) 根室ワークショップ ~なぜ地方都市で国際会議を開くのか?~ 西部亜寒帯循環に関する根室ワークショップ
第23号(平成5年7月) 平成5年度北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議を開催 南千島太平洋海域におけるスケトウダラの分布
第22号(平成5年6月) おさかなセミナーくしろ’93の開催 北方性重要魚種の卵黄形成過程における卵黄蛋白の生化学的変化の解明
第21号(平成5年5月) 第5回ラムサール条約締約国会議が釧路で開催される   オヒョウの増養殖をめざして
第20号(平成5年4月) 基礎的・基盤的研究の地域的中核をめざして 生活環境とは何か?
第19号(平成5年3月) 流氷がもたらすもの 二枚貝資源の新管理システムの開発と導入
第18号(平成5年2月) 研究者の執念 係留系による親潮の連続観測
特別号(平成5年1月) 地震のお見舞いに感謝! 釧路沖地震M7.8の体験 震度6!! 釧路沖地震の被害 M7.8
第17号(平成5年1月) 水揚げ連続14年日本一は厳しい釧路の街 親潮海流系の流量の経年変化

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北の漁火 第28号(平成5年12月)

今月の話題:親潮水域の生物生産システムの解明-第2回WPECワークショップの開催-

 水産庁の水産研究所では現在、研究基本計画の改訂がされています。〝資源管理型漁業〟及び〝つくり育てる漁業〟の一層の推進に資する研究に加えて、地球規模の環境問題や海洋生態系の動態の解明がこれからの水産研究に強く求められています。
 気象・海象の変動が海洋の生態系に与える影響を評価し、予測することを目指す国際研究(GLOBEC)の一環として、WPEC(Walleye Pollock ECosystem dynamics)の研究計画が北水研の呼びかけで、水研・水試・大学の共同研究として昨年12月に作られました。その狙いは、最重要漁業資源であるスケトウダラを鍵種として、北太平洋亜寒帯水域の生物生産システムの変動を海洋環境との対比で明らかにすることです。
 第2回WPECワークショップ('93年12月13~14日)では、この一年間の各機関の取り組みを踏まえて、今後の具体的な研究計画の策定と実行が討議されます。本研究の一段の発展が大いに期待されます。
(資源管理部長)

研究の紹介:ホッキガイの漁業管理ソフトについて

 北水研ミニ情報19号で既にお知らせしましたホッキガイの漁業管理用ソフトがようやく完成し、現在テストランを行っております。
 このソフトは正式には、「漁業管理運用システム」と呼ばれ、実験漁場である浜中湾のホッキ操業日誌を解析処理する浜中版として作成しております。システムの構成は19号で述べたように、「中長期の資源動向予測」、「資源と市況の現状分析」、「適正配船計画」、「管理効果の評価」のプログラム群から成っております。
 この内、現状分析システムの出力メニューの内容について幾つか紹介しますと、①漁区別銘柄別漁獲実績集計表②漁獲量、CPUE、単価の時系列図③銘柄別CPUEマップ④底面環境マップ⑤需給関係図他となっております。現在、実際の操業日誌データを入力して、浜中漁場の漁業経済活動の分析と出力の改良点について検討中です。
 また、将来は全ソフト運用によって漁業者自らが資源管理の当事者となり、システム管理が実践されることが期待されます。ホッキ以外の二枚貝資源についても同管理システムは応用可能ですので関心のある方はご一報下さい。
(資源増殖部魚介類増殖研究室長)

ひとこと

 最近、新しく建設される庁舎にはダイヤルイン方式が多く、目的の部、室へ直接連絡ができる。フレックスタイム等で研究者と事務部門の勤務時間にずれがあり、当所もそれに変えたら遅くまで残る人にとっても便利になると思うのは私だけだろうか。
(庶務課長)

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北の漁火 第27号(平成5年11月)

今月の話題:平成5年度『北水研・日栽協研究交流会』

 つくり育てる漁業の推進のために、日本栽培漁業協会と北海道区水産研究所が共同研究を行っていますが、この研究成果を報告し討議する研究交流会が11月15日に北海道区水産研究所の会議室で開催されました。
 研究成果の報告は、マツカワの種苗生産技術、放流技術に関する研究を中心に六課題の発表があり、これまでにも増して終始活発な討議並びに意見交換が行われました。
 多くの得られた成果の中で、特にマツカワ卵の授精率向上の研究で、多回産卵型の同魚の排卵周期を明らかにすることによって、従来よりも格段の高授精率が得られる人工授精法が確立されたことは特筆されます。
 カレイ類の仲間であるマツカワは資源が著しく少なく、放っておけば幻の魚になることが確実視されます。しかし、近年つくり育てる漁業の対象種として、種の保存が図られると共に、美味な高級魚として人間に幸を与えてくれることが期待されています。
(資源増殖部長)

研究の紹介:PICES-GLOBECがいよいよ動き始める

 この10月シアトルで開催されたPICES(北太平洋海洋科学機構)の第2回年次会合は、国際共同研究プログラムGLOBEC(海洋生態系の地球規模変動)を、PICES傘下の国際共同研究として組織するためのシンポジウムを、来年の年次会合において開催することが決定しました。これは、日本がホストするという提案を受けたものでもあります。
 わが国におけるGLOBECの動きとしては、日本学術会議海洋学研究連絡委員会の下に組織されたGLOBECワーキンググループが、ワークショップやシンポジウムを通じて計画立案の推進をしてきました。その論議は、科技庁総合研究への課題提案としてまとめられ提出されていました。残念ながら来年度の課題としては採択されませんでした。このことは、計画をさらに練り上げるために時間ができたということでもあり、来年10月のPICESシンポジウムを日本のGLOBEC計画の立案のためにも活かせることを意味します。来年の年次会合は根室市で開催されます。ご協力とご注目をお願いします。
(海洋環境部長)

ひとこと

 異常気象による九州での風水害、東北・北海道での冷害と日本農業の大きな被害を見る中で、被害をくい止めたところもある。人間が英知で創り出す科学技術も自然の力に一見押しつぶされたように見えるが、自然と調和し、適用していくことの重要さを教えてくれている。 
(企画連絡室長)

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北の漁火 第26号(平成5年10月)

今月の話題:西部亜寒帯循環に関する根室ワークショップ~成功裡に終了

 9月19~23日に根室市で開催された「西部亜寒帯循環に関する根室ワークショップ」は、海外から24名、国内から75名の研究者の参加を得て、充実した会期を無事終了しました。この中でPICESの4つの作業部会、「オホーツク海と親潮」、「小型浮魚の動態」、「データ交換と品質管理」および「亜寒帯循環」は、連日の会合を開いて報告書をまとめました。その内容は、この10月にシアトルで開かれるPICESの第2回年次会合で報告される予定です。報告書に含まれている研究プログラムやシンポジウムなどの提案は、今後のPICESの活動の中で実現されることになるものと思います。
 このワークショップの成功は、根室の人々が提供された行き届いた支援の賜です。ここに賞賛と感謝を述べさせていただきます。
(海洋環境部長)

研究の紹介:オホーツク海と親潮水域における海洋研究とPICES

 根室ワークショップの中でPICESの作業部会「オホーツク海と親潮」が会合を開き、年次会合への報告をまとめました。この会合には根室支援実行委員会の招へいしたロシア人研究者2名の参加を得て、ロシアにおける研究動向を含めた情報と意見の交換が行われました。
 オホーツク海および親潮水域は北太平洋の中層水を形成する海域として、北太平洋の海洋研究の焦点のひとつとなってきました。その理由は、この北太平洋中層水が亜寒帯における冬季の冷却と淡水の供給の効果および、それを通じて海水が吸収した大気成分を亜寒帯太平洋に伝搬する役割を持っているからです。もちろんこの過程には流水・結氷が大きな影響を持っています。
 この問題についての研究は、今後PICESの下で推進されていくことになると思われます。厳しい冬季の気象条件とともに、正常化されていない日露の国際関係が、予測される大きな障害です。今年の冷夏をもたらしたメカニズムを明らかにするためにも、PICESが有効に機能して、この海域の研究を進める国際協力体制が形成されることを期待したいものです。  
(海洋環境部長)

ひとこと

 私たちは、生産活動という観点からは実によく自然を学んできました。しかし、自然にはもともと廃棄物も汚染もなかったことを考えると、環境の安定性という観点からは、私たちの科学・技術は未だ未熟であり、自然に学ぶことが多いと思います。
(所長)

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北の漁火 第25号(平成5年9月)

今月の話題:おさかなセミナーくしろ’93を終えて

 釧路市民に水産研究機関の活動と成果を広く知ってもらうための、水産関係8機関からなる実行委員会開催のセミナーが成功のうちに終了しました。8月4日~22日に釧路市立博物館で開かれたパネル展では、イカ資源・生態の最新の成果、道東海域でのスルメイカの漁業と資源及びイカの利用・加工の現状と研究成果が16枚のパネルにわかりやすく図示され、併せてイカ標本や漁具なども展示されました。期間中の入館者数は6549人、解説パンフの持ち帰り数は1740人でした。8月7日にはパネル展の内容に対応した3つの講演が研究者によって行われ、62人の参加がありました。
 パネル展と解説パンフは大変評判が良かったと思います。講演会では参加者数がやや少なかったものの、講演はおもしろかったと、ほとんどの参加者がアンケートに答えていました。来年のセミナーにむけて、テーマ選びや実行体制の検討が始まろうとしています。
(おさかなセミナーくしろ’93実行委員会事務局長  村田 守)

研究の紹介:バイオテレメトリーによるアカイカの行動特性の解明

 本研究はアカイカの水平・鉛直移動のパターン、方向、速度並びにそれらと水温躍層・光などの海洋環境との関係を解明し、本種の漁獲技術の改良に利用すること目的にしています。平成4年8~9月に北太平洋沖合のアカイカ流し網漁場付近及び日本近海で、アカイカ雌の成体(体長37~47cm)に水深センサーを持つ超音波送信機(長さ6.2cm、水中重量11g)を装着して追跡する実験を8回試み、その内7回で約6時間半から24時間の追跡を行うことができました。追跡個体の夜間の主な遊泳層は0~35mであり、水温躍層の水深(20~40m)とよく一致しました。一方、日中の主な遊泳層は、個体によって異なり、160~320mの範囲にありました。日中の主な遊泳層の水温は4~7℃でした。水平移動では、主な移動方向は個体によって多少異なりますが、いずれも南方向への移動を含んでいました。
 平成3、4年の2か年の追跡調査結果を総合して、調査海域におけるアカイカ大型雌個体の日周鉛直移動の基本的なパターンを明らかにすることができました。
(資源管理部長)

ひとこと

 北海道のマイワシ資源が、’87年をピークに減少し、’93年には道東より消え、マサバ・カタクチイワシへの主役の交代が起こりつつある。海の中で何が起こっているのか、いくつかの説があるが、そのメカニズムの解明に向けての研究の進展がまたれるところである。
(企画連絡室長)

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北の漁火 第24号(平成5年8月)

今月の話題:根室ワークショップ~なぜ地方都市で国際会議を開くのか?~

 北海道区水産研究所では、国際会議「西部亜寒帯循環に関する根室ワークショップ」を9月19~23日に根室市で開催します。 
 これについてなぜ根室という辺鄙な地で開催するのか?という疑問が寄せられます。国際会議は大都市でという「空気」に流されていては、東京一極集中は解消できません。
 テーマにふさわしい地方都市で開く会議では、「臨場感のある環境で主題について考える事が出来る」、「寝食をともにして異なる文化背景・専門分野・使用言語を超えて根底の理解に立った知的生産が可能である」、「緊急の電話や会議などによる中途退席者がなく会期中は会議に集中し、深くまで考える持続した時間が確保できる」、「地域社会から各種の支援が得られるとともに地域社会の国際化に貢献できる」、などの生産性の高い充実した会議が可能です。
 大都市ではお金さえかければ何でも出来ますが、人と人が時間をかけて理解し合うには最も不便な場所ではないでしょうか?
(海洋環境部長)

研究の紹介:西部亜寒帯循環に関する根室ワークショップ

 このワークショップは、科技庁科学技術振興調整費重点国際交流課題による国際ワークショップとして、北海道区水産研究所と科学技術庁((社)科学技術国際交流センター(JISTEC)が受託)が主催して開催します。また根室市をはじめとする諸団体で構成される「北太平洋の海洋科学に関する根室国際会議支援支援実行委員会」による強力な支援を受けて企画運営がなされます。
 ワークショップには、「北太平洋の海洋科学に関する国際機構(PICES)」の6つのワーキング・グループのうち、4つのワーキンググループの会合を招くとともに、この会合のテーマに関する研究発表(約50題)が行われます。また開会式・閉会式などは、市民との交流プログラムとして企画され、海洋科学の市民への広報の機会としての性格を持っています。今のところ、日本から57人、カナダから8人、アメリカから11人、中国から4人、ロシアから3人、PICESから2人の参加が予定されています。またこの会議にあわせて、加・米・露3国の国際共同海洋調査に携わっている露調査船Akademik Nesmeyanov(4800t)が花咲港への寄港を計画しています。
(海洋環境部長)

ひとこと

 北海道南西沖地震による大きな被害は、地震と津波の双方によるといわれる。目に見えるところの惨状は実に痛ましい。まだ、情報はないが、浅海の岩礁域に棲息するウニ・アワビ等の重要水産物にはどのような影響があったのだろうか?水産研究に携わる一人として気になることの一つではある。
(資源増殖部長)

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北の漁火 第23号(平成5年7月)

今月の話題:平成5年度北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議を開催

 この7月13日に北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議が開催され、水産庁、北海道立の各試験場、栽培漁業総合センター、孵化場、及びさけ・ますふ化場、日裁協厚岸事業所の参加を得て、水産業関係試験研究の現状、各試験研究機関の研究内容紹介とそれに基づく水産研究推進協力のあり方について活発な討議が行われた。特に、北海道の置かれた位置関係から、日・ロの研究交流、重要漁業資源を対象とした研究の問題解決に向けての情報交換・研究交流の推進方向が重点的に意見交換され、今までにも増して卒直でかつ密な情報交換の必要性が再確認されました。当日は、北海道南西沖で大地震が発生した翌日でもあり、休憩時間中テレビに映し出される被害状況に食い入るようにして情報収集をされていたのが印象的で情報の伝達・収集の重要性を再確認しました。被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。
(企画連絡室長)

研究の紹介:南千島太平洋海域におけるスケトウダラの分布

 当水研は日露調査協力計画に基づいて、南千島太平洋海域における重要魚類の分布生態を解明するため、1992年4月22日~5月10日に但州丸による着底トロール調査を実施しました。スケトウダラの漁獲が多かったのは水深180~380m、水温1.3~1.7℃の地点であり、当海域のスケトウダラの分布は水温によって決定されている可能性が高いと考えられます。本種の分布パターンは色丹島南および択捉島南の両海域で異なり、海底の傾斜が急な色丹島海域では、1歳魚と3歳以上の魚は同じ水深(150~250m)に分布し、2歳魚の漁獲は少数でした。一方、陸棚の傾斜が緩やかな択捉島海域では、2才魚が多く漁獲され、また1歳魚は150~250m、2歳魚は250~350m、3歳以上の魚は200m以深の水深に分布していました。
 以上の結果と胃内容物調査結果から、1歳、2歳、3歳以上の各魚は択捉島海域では互いに分離して分布し、また、2歳魚は色丹島海域では中層に浮上しているか、より良い餌料環境を求めて択捉島海域へ移動すると推察しました。
(資源管理部長)

ひとこと

 漁師と話をする。魚市場へ行く。漁協に顔を出す。漁業の現場に直接ふれることによって水産研究が解決すべき課題が具体的に見えてくる。水産の研究者として、課題の設定や研究を進めるうえでの基本的精神を忘れたくないものです。
(浅海育種研究室長)

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北の漁火 第22号(平成5年6月)

今月の話題:おさかなセミナーくしろ’93の開催

 本企画は、一般市民になじみの薄い水産研究の活動や成果を広く知ってもらうため、北水研・釧路水試等からなる企画・実行委員会が主催し、今年8月に釧路市立博物館で開催を予定しています。メインテーマは、「イカの科学-その生態・漁業・利用」です。イカ類は、日本人の最も好きな水産食品の一つです。また、長く低水準にあったスルメイカの資源が最近増加傾向を示し、釧路港への水揚げが急増しています。そこで、今回はイカをテーマにしました。
 本セミナーは講演会(8月7日午後)とパネル展(8月4日~22日)から構成され、「イカ資源・生態研究の最前線」「道東のスルメイカ漁業」「イカの利用・加工」の3つの講演、ならびに、講演の主要部を図表で示した16枚のパネルやイカ類標本・イカ針等実物の展示が行われます。
(おさかなセミナーくしろ’93事務局長   村田 守)

研究の紹介:北方性重要魚種の卵黄形成過程における卵黄蛋白の生化学的変化の解明

 北方性重要魚種の資源変動機構の解明は当水研資源管理部の最重要課題の一つです。その一環として、本研究は平成4年度に実施されました。目的は成熟過程における卵黄形成のメカニズムと卵の生理・生化学的特徴を明らかにすることです。
 北方性の15魚種を用いて、卵黄形成期の卵母細胞および排卵した卵内の卵黄蛋白を分析・比較しました。その結果、マイワシ、オヒョウなど浮遊性卵を生むすべての種では、最終成熟の前後で卵黄蛋白が解裂し、その分子量は半分以下に変化しました。一方、沈性卵を生むニシン、ホッケ等の卵黄蛋白は変化せず、また、沈性卵ではあるが、最終成熟期の吸水の割合が高いマダラやクロガシラカレイ等では、浮遊性卵と同様の変化がみられました。
 この結果から、最終成熟期における卵黄蛋白の解列は卵の浮性や沈性といった性質と密接に関係することが示唆されました。また浮遊性卵を生むマツカワを例にして、卵黄蛋白の生化学的変化および経時的推移を明らかにしました。
(資源管理部長)

ひとこと

 今日、水産業の情勢は大きく変化しており、その変化に対応した研究にも創造力が従来にも増して求められています。一方、最近の周辺分野の進歩は、研究室で個性の持った一人の人間がこつこつと研究を行う時代から、グループで独創力を発揮する時代になってきたのではないでしょうか。
(企画連絡室長)

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北の漁火 第21号(平成5年5月)

今月の話題:第5回ラムサール条約締約国会議が釧路で開催される

 6月9日から16日にラムサール締約国会議が、アジア地域ではじめて、日本一の釧路湿原を持つ釧路市で開催されます。この条約は、水鳥等貴重な野鳥の生息する湿地の保全を目的としたもので、過去四回の会議で、可能な範囲で湿地を開発・利用しながら環境の保全を図る「ワイズユース(賢明な利用)」の理念を打ち出しております。
 これを機会に環境庁では、湿原の環境保全と調和した開発・利用のアクションプログラム作成を目標に、①周辺からの有害物質の低減法、②野鳥の個体識別法、③人工衛星を利用した営巣地等の環境条件分析、④生態系を考慮した湿原復元法の開発の産官学の共同研究プロジェクトを開始し、湿地保全のモデルケースを目指しております。
 地球環境保全での世界のリーダーの役割を果たそうとしている日本での開催であり、この会議の成果に大きな期待が寄せられています。 
(企画連絡室長)

研究の紹介:オヒョウの増養殖をめざして

 亜寒帯水域における魚類の増養殖といえば、さけます類が代表ですが、将来的に有望なものとしてかれいも見逃せません。マツカワに寄せられる期待は過熱ぎみですが、オヒョウの可能性にも着目してみたいものです。
 オヒョウといえば、北洋の大味な巨大魚の印象が強いですが、北海道では沿岸で漁獲される刺身魚として根強い人気を誇ってきました。
 ところで、冷水性の魚は成長が遅いと考えられがちですが、オヒョウはどうでしょう?天然の海では成魚は4℃以下の冷水中で成長していますし、未成魚の成長はかなり速いと推定されます。成長が速い水温は何度ぐらいなのか、低温下での成長のしくみがどのようなものなのか、このような研究成果をだせれば亜寒帯水域に適した増養殖手法の開発につながるでしょう。
 しかし、問題もあります。成熟までに時間がかかるのです。成熟漁が得にくいのです。稚魚を育てる技術ができあがっていません。増殖に適しているのか、養殖向きなのか?よりどころになる天然での幼稚魚の生態がわづかずつですが明らかになりつつあります。
(浅海育種研究室長)

ひとこと

 石炭、石油といった、いわゆる再生不可能な資源は、不足すると価格が高騰し、需要が下がり、代替物質や代りの技術が登場してくるため、実際のところ枯渇することは起り得ないのですが、魚類のようないわゆる再生可能な生物資源は、それゆえに、再生不能になる閾値を超えてまで利用される可能性があるのです。
(所長)

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北の漁火 第20号(平成5年4月)

今月の話題:基礎的・基盤的研究の地域的中核をめざして

 北海道を含む周辺海域は、スケトウダラをはじめ、さけます類、マイワシ、さば類、いか類、貝類、海藻類など私達の重要な食料となる海産物を供給する重要な産業の基地です。 この重要な海産物は、北海道周辺海域を含む「亜寒帯域」の海洋環境及びその環境に対応する高い海洋生物生産を持つ生態系に支えられています。北海道周辺海域の総合的な生態系研究を推進することは極めて重要であると考えています。北洋海域を含む北西太平洋の亜寒帯域は、地球環境の変化を監視する上でも世界的に注目され、環北太平洋沿岸国が連帯・協力し総合的な海洋生物科学に関する積極的な研究推進が図られつつあり、その研究成果が期待されています。
 当水産研究所は、関係する研究機関及び地域社会と協力しつつ、世界に羽ばたくような基礎的・基盤的研究の地域的中核を果たすべく努力を重ねています。
(企画連絡室長)

研究の紹介:生活環境とは何か?

 北海道沿岸の生物量が豊富なのはそこの生活環境が好適な為だとは容易に推測がつきます。海の中の生物たちにとって何が必要なのでしょうか?きれいな海・豊かな餌あるいは栄養塩・心地よい生育場であれば全ての生き物たちが豊富になるのでしょうか?
 生き物の好適な環境は生き物ごとに異なります。例えば、濁っている海水中が、小魚にとっては大きな魚に食べられずに棲み心地がいいかも知れません。しかし、海底に生育する海藻類にとっては光が届きにくく生育が遅くなります。海藻でも波の弱いところでしか生育しない種や強いところにしか見られない種があります。このように生物はその環境に適応した生活様式を持っています。
 そこで、生物ごとの適環境を生理学的研究から追求するとともに、それらがどのような環境に生育しているかの調査研究も必要となります。しかし、多くの人手と長期にわたる努力が必要となる沿岸環境<水温・濁度・塩分・栄養塩濃度等>の観測例は少なく、変動が大きいと思われるその実体はまだよく解っていないのが実状です。

ひとこと

 4月になると人事異動の季節がやって来ます。組織維持のためにもある程度の活性化が必要です。これには本人が希望していく場合と乞われて迎えられる場合とがあるでしょう。いずれにしても行く先の職場に対し、多少の不安と期待をもって行かれることでしょう。“人生いたるところ青山あり”行く先々で素晴らしい出会い、楽しい所も数多くあることも考え、今までの仕事の経験を生かし頑張ってほしいものです。
(庶務課長)

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北の漁火 第19号(平成5年3月)

今月の話題:流氷がもたらすもの

 オホーツク沿岸域の形成初期の流氷は昨年同期より広く形成されているとの報道でしたが、その後、今年も勢力が弱いと修正されたようです。ここ数年、道東沿岸域には流氷の接岸がありません。
 流氷は、有用海藻類に直接被害を与えますが、一方では翌年の芽立ちを良くし、良い海藻類を作るための磯掃除をするとも言われています。また、オホーツク海の栄養分を運び、海域の生産性を高める役割を持っているとも言われています。
 道東海域の生物群は、何万年の歴史の中でこのような海域の特徴に巧みに対応した独自の生態系を形成してきたと考えられます。
 「つくり育てる漁業」の推進はこの自然の仕組みに対応した生物群の生態を注意深く分析し、海域独自の生物生産の有効利用と持続的な生産の維持を図るための研究推進が極めて重要なことと考えています。
(企画連絡室長)

研究の紹介:二枚貝資源の新管理システムの開発と導入

 漁業をとりまく国際環境を反映し、沿岸漁業の重要性が叫ばれ、資源管理型漁業と栽培漁業を両輪とする漁業振興に対する事業投資が増大しております。特にホッキガイ等の定着性資源に対する管理漁業への期待感が大きいと言えます。道東のホッキの漁獲動向をみますと、釧路支庁では最近5ヶ年の年間漁獲量は400~600トン、金額にして、3~4億円の規模です。これはコンブによる水揚げの20分の1ほどにあたり決して基幹漁業とは言えませんが、年変動の大きいコンブ漁による漁家収入を安定させる重要な資源のひとつであると言えます。魚介類増殖研究室では平成4年度より、道東10ヶ所のホッキ漁場を対象に、各種のアンケートから漁業資源動向と資源管理の意識調査を実施しております。この調査結果から資源管理のモデル漁場を選び、地元漁協の協力を得て新しい資源管理システムを導入する予定です。新管理システムは『中長期の資源動向予測』、『資源と市況の現状分析』、『適正配船計画』、『操業実績の評価』等4つのプログラムから構成されており、漁業者によって組織される漁業管理委員会によって運用されます。

 ひとこと

 北海道は、ここ数年暖冬が続いていますが、自然の変化の仕組みを把握するうえで、個人の観察可能な時間は極めて限られたもののように見受けられます。この解決を図るための研究成果を上げるには、各人が得た新しい知見を先人の研究成果に如何に積み上げ、どう継承していくかが大切なことだと考えています。
(企画連絡室長)

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北の漁火 第18号(平成5年2月)

今月の話題:研究者の執念

 研究者の科学する心は、以前と比べて大きく変化しているようにみうけられます。これは、研究内容の分化の結果といえばそれまでですが、我々生物をあつかう研究者は、まず第一に明らかにすべき問題として、減耗の著しい発育初期の生態把握と生活環境との関係の解明であります。さらに最近では、成熟の条件が重要視されて大量生き残りとの係わりの解明にも科学の手が伸びつつあります。これらの生態解明は、生物の生息特性にあわせた研究調査計画を夜間における生態把握や調査間隔を極端に縮めた集中調査が必要となるわけです。
 研究者の皆さんが立案する研究計画のうち、初期減耗に関する生態調査計画の設定をどんな根拠で行っているのか知りたいものです。
(所長)

研究の紹介:係留系による親潮の連続観測

 親潮の連続観測のために、一昨年(1991年)5月に係留系を設置しました。設置した場所は、親潮第一分枝の真ん中に位置する、道東の大陸棚から千島-カムチャッカ海溝に落ち込んでいる大陸斜面の中程の、水深1145mと水深3600mとの二箇所です。浅い方の地点の係留系には1070mの位置に、深い方の地点の係留系には1390mと3390mの位置に流速計をとりつけました。これらの係留系は今年度(1992年5月)に無事回収し、整備点検の後再設置して連続観測を継続中です。
 回収した1年分の記録から、親潮の流れの季節変化について大変おもしろい事実が分かりました。1070m層および1390m層では、ほぼ周年にわたって西南西~西向きの流れが卓越し、その速さは1070mでは11~12月、1390mでは1~3月に極大になりました。一方、3390m層では、5~10月は上層と同じに西向きに流れるが、季節風の強くなる10~5月には北東から南東向きと、風によって駆動される向きとは逆でした。
 このような親潮の流れの季節変動は、数値実検でも知られていなかった、全く新しい姿です。今後の研究の発展にご期待下さい。

ひとこと

 人には、五感と言う素晴らしい感覚があります。この感覚は記憶能力とその分析から大きな発見を生み出すことがあります。ただ、この感覚によって得た経験則が科学として評価されるためには、そのことを客観的に実証する必要があります。私達は、自分達の感覚を磨きつつ、感じた事柄を科学として実証していく努力が大切ではないでしょうか。
(企画連絡室長)

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北の漁火 特別号(平成5年1月)

今月の話題:地震のお見舞いに感謝! 釧路沖地震M7.8の体験

 平成5年は酉年。1月4日の仕事始めに、今年は大きな事件が起こるかもしれない。それは昔、酉年に江戸八百屋町が大火になったことを例にあげた。心を引き締め厳しい水産の研究を乗り越えようと挨拶した私でしたが、これが当たるとは何と皮肉なことか。
 烈震の経験のない私は、凄いショックだった。人名の被害・・なし。先ずは不幸中の幸いであった。
 翌週には所長会議があるので、応急的に被害を取り纏めた。何よりも大きな被害は精神的ストレスかもしれない。その後震度2程度までの余震が数百回発生しているが、すでに体に感じないようになっている。
 地震後2週間が過ぎ、暖気が入ったこともあって、庁舎敷地内に地割れが出始めたり、雨漏りが出始めた。本当の被害はいつ解るのだろうか・・・
 各地から、早速のお見舞いを頂き感謝申し上げます。
(所長  田中 邦三)

震度6!! 釧路沖地震の被害 M7.8

 平成5年1月15日成人の日で役所は休みである。午後8時6分、突然宿舎が揺れだした。
 あっ!地震だ!!
 いつもの震度3~4で終わると思ったが、揺れがだんだん強くなり棚の上の物が落ちだした。本棚、テレビ等が倒れはじめた。天井が落ちてくるのでは・・・その間約2分、非常に長く感じられた。落ち着いてからあたりを見回した。足の踏み場もない程物が散乱している。
 水研は・・・すぐ車で職場に行く。所長をはじめ、すでに10人程駆けつけていた。2階の執務室に行くとその場に強烈なホルマリンの臭いが鼻をつく。にしんの標本瓶が飛び散っている。魚は資源管理部で保管、ガラス類は1ヶ所に集める。所長は被害の確認を指示している。ろ過施設がやられている。送水管が被損、海水が漏れモーター類に飛散している。即、送水を停止。飼育中のマイワシ水槽6ヶ所中2ヶ所のパイプがはずれ、海水が流れ約50尾へい死。マガレイの水槽3ヶ所中1ヶ所漏水、数匹飛び出しており約20匹へい死。その他に研究用機器、書類の落下飛散多数。その夜はとりあえず応急的な処置にとどめ解散した。
 翌日以降はそれぞれ各々の室、持ち場の点検、整理をはじめた。庁舎内の点検をした結果、壁面に数多くの1~2㎜幅の亀裂が見うけられた。実験機器はコールターカウンター外数点の損傷が見つかったが今後も被害が増えるかもしれない。その後宿舎の水道管の破裂が判明、修理手配、屋上から廊下、研究室に雨漏り発生、応急的に排水溝を清掃した。
 永住公務員宿舎では約2週間ガスの供給がストップされ、不自由な生活を余儀なくされたが、総体的に見ると人的被害がなかったこと、他の被害も最小限にとどまったことは不幸中の幸いである。
 今後、これらの復旧に向けて水産庁への報告、予算請求をはじめ後始末をしなければならない。
 今回の被害に対し水産庁及び各水研をはじめ、各地から温かいお見舞いを頂いたことに対しこの紙上をお借りいたしまして深くお礼を申し上げます。
(庶務課長  増田 英治)

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北の漁火 第17号(平成5年1月)

今月の話題:水揚げ連続14年日本一は厳しい釧路の街

 魚の街釧路は、前年比22%というマイワシ漁獲量の急激な落ち込みの中で、次の魚種の出現を切望しています。現実的に、釧路沿岸では昨年からスルメイカの豊漁が続き、釧路・十勝両港で五千トン台と年々伸びています。しかし、マイワシのような漁獲量は期待できません。「アメニティー釧路」のキャッチフレーズのもと、駅前の北大通りは数年前から見ると電線がなくなり、かなり明るくなりましたが、それがかえって淋しさを感ずるのは私だけでしょうか。
 これからの釧路は観光拠点としての街づくりの他に、つくり育てる漁業の振興による獲る漁業の街から、つくって獲る漁業の街へと変身する必要を痛感します。北海道では魚種別ベスト10の中にホタテガイ、コンブ、サケ・マス等つくり育てる漁業の対象種が中上位を占めており、今後もこれらの対象種を増加させるべく研究開発する必要があります。
(所長)

研究の紹介:親潮海流系の流量の経年変化

 親潮は、カムチャッカ半島の東を南下してくる東カムチャッカ海流に北ウルップ水道から流出するオホーツク海系水が加わり、千島列島沿いに南下し道東沖から三陸沖を流れる海流です。北太平洋の大循環の中では、亜寒帯循環の西の境界に現れる最も顕著な流れです。親潮の流れは、道東の南に現れる暖水塊の位置と大きさによって、暖水塊と道東沿岸の間を流れる親潮第一分枝と暖水塊の沖側を流れる第二分枝に分かれます。 
 北水研では1988年から毎年夏の終わりに親潮源流域の広域観測を行っています。これまでの5年間の観測結果から親潮海流系の流量と、親潮を含む西部亜寒帯循環の広がりにかなりの経年変化のあることが分かってきました。昨年1992年の観測結果は、親潮第一分枝の流量がこの5年の内で最小であったこと、亜寒帯循環の南縁のフロントが例年になく南に偏っていたことを示しています。
 こうした大規模な海況の経年変化が何によって生じるのか、また水産資源の来遊時期や分布にどのように影響しているのか、観測を継続しながら明らかにしていきたいと考えています。

ひとこと

 平成4年の北海道は、ここ数年の温暖化傾向から平年並みに推移すると予測されています。やっと北海道らしくなるのでしょうか。海の生態系も大きく変化しつつあり、これが戻り始めて、ニシン、コンブ等有用魚介藻類が安定量産できるように祈りたいものです。それにしても、地球環境と海洋生物の関係をより一層深く究明したいものです。
(所長)

ミニ情報

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