北水研ミニ情報「北の漁火」 第29~40号(1994年,平成6年発行)

号(年月) 今月の話題 研究の紹介
第40号(平成6年12月) 平成6年度「北水研・日栽協研究交流会」 カレイの新品種をもとめて
第39号(平成6年11月) 根室で開催の第3回パイセス年次会合成功裡に終了 人工干潟でアサリを増やす
第38号(平成6年10月) 北方四島沖の”日ロイカ資源共同調査”を終えて 厚岸シンポジウムについて
第37号(平成6年9月) 探海丸の船体改修工事を終えて パイセス(北太平洋海洋科学機構)年次会合が根室で開催
第36号(平成6年8月) 今夏の猛暑と道東沖の漁海況について 日本海の海底に横たわる係留系 
第35号(平成6年7月) 「おさかなセミナーくしろ'94」の開催 親潮のゆくえ~親潮の流量収支と混合水域における水系変質
第34号(平成6年6月) 平成6年度北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議が開催される 動物プランクトンと紫外線
第33号(平成6年5月) 海水取水施設改修工事の報告 東北・北海道太平洋海域におけるスルメイカの北上来遊量の推定
第32号(平成6年4月) 平成5年度研究評価を終えて 初夏の道東太平洋沿岸におけるスケトウダラの分布
第31号(平成6年3月) 北海道ブロック漁業資源調査・漁海況連絡会議の開催 索餌域の環境収容力とマイワシ資源変動の関係の解明
第30号(平成6年2月) マイワシ資源等緊急調査会議の釧路開催 極寒期に産卵するカレイ
第29号(平成6年1月) PICES年次会合根室で開催 生活環境とは何か?その2

ミニ情報TOPページへ刊行物等へ|ホーム


北の漁火 第40号(平成6年12月)

今月の話題:平成6年度「北水研・日栽協研究交流会」

 去る11月21日、日本栽培漁業協会菅野常務をはじめ厚岸事業場、宮古事業場の日栽協関係者11名の出席を得て、北水研側から新宮所長他12名が出席し、共同研究の成果報告を中心に研究交流会が開催されました。
 今年度の報告はマツカワ関係で5課題、ニシン関係ほか、4課題、計9課題ありました。報告数は昨年度より3課題も増え、活発な討議の中に関係者の栽培漁業推進への意気込みが強く感じられました。
 マツカワ種苗の放流再捕結果報告によると、平成4年度に放流した群は、平成6年8月で8.3%の再捕があり、このうち全長30cm以上の商品サイズとなる個体が7割以上を占めております。中間育成・放流技術の研究成果が着実に進展していることを示しております。
 本研究交流会は、技術開発研究と基礎研究の有機的な連携を図るため年一回開催されています。
(資源増殖部長)

研究の紹介:カレイの新品種を求めて

 「左ヒラメに右カレイ」というのはヒラメとカレイの見分け方。眼が体のどちら側についているのかが分かれ目となります。
 ところが、マガレイはれっきとしたカレイであるにもかかわらず眼は体の左側にあるのです。さらにこのカレイは近縁種のイシガレイとの間に天然の海の中でも雑種をつっくってしまう。
 ヌマガレイのように鱗に縞を持ち、イシガレイのように鱗がない奇妙なカレイが稀に漁獲されることがあります。そんな場合、眼は体のどちら側にあると思いますか?
 異なる種類の交配によって双方の種が備えている生物特性の中から、人間に都合がよい性質を持つ新品種をつくり出そうという企てが可能かどうか、双方の種が持つ性質が交雑種にどのように発現するのか。このような問題を解く上でこの二種のカレイは格好の材料でしょう。天然で雑種をつくるくらいだから交雑実験は容易です。さらに眼の位置や鰭の模様、鱗の有無など魚種間には形質の明瞭な違いが存在します。
 実験室でイシガレイの卵とヌマガレイの精子による交雑を行い、受精卵を飼育しました。仔魚が発育し、片方の眼が移動を開始。さて、眼は体のどちら側に移動したでしょうか。
(資源増殖部浅海育種研究室長)

ひとこと

 北水研の研究内容を、行政をはじめとして広く一般に紹介し、理解してもらおうと始めた北水研ミニ情報(北の漁り火)は今月で40号になります。豊富な内容を、少ない紙面でいかに分かりやすく伝えるか、執筆担当者、編集者ともども毎月知恵を寄せ合って発行して来ました。
 ニュー・メディア時代・・・活字による情報伝達もまだまだと感じています。
(情報係長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ


北の漁火 第39号(平成6年11月)

今月の話題:根室で開催の第3回パイセス年次会合成功裡に終了

 平成6年10月15日~24日に開催された第3回パイセス年次会合は、第1回の設立会合、第2回会合における科学行動計画案の検討開始を受けて、国際海洋科学機構としてのパイセスが、最初の科学行動計画を採択するものでした。会合には、9ヶ国計337名(うち日本から139名)の科学者が登録参加しました。
 採択された国際科学計画は、「気候変化と環境収容力」をテーマに、北太平洋の海洋生態系の気候変化に対する応答を解明する、パイセス・グローベック計画です。パイセス議長のウースター教授は、この計画の誕生を「パイセスの最初の子供が産まれた」と喜びましたこの計画の内容は水産研究の中核課題であり、わが国の水産研究とその国際化の中心の一つになるものと思われます。
 この会議の成功は、開催直前の北海道東方沖地震の被害をも克服した、根室市民の方々の熱意と献身の賜物です。感謝します。
(海洋環境部長)

研究の紹介:人工干潟でアサリを増やす

 アサリは全国津々浦々の干潟や河口で潮干狩りで親しまれ、食品としても一般的で庶民派の二枚貝です。それが数年前から主産地の九州有明海などで生産が激減して、全国でアサリを増やそうとの気運が高まりました。同じ時期に北海道でも天然資源で生産が低位安定していたアサリをもっと増やそうということで増殖場の造成が始まりました。沿岸漁場整備開発事業(略して沿整事業)による土木工事でアサリ人工干潟を造るというものです。なお沿整事業は沿岸漁業の発展と水産物の供給増大を目的に多魚種で全国的に展開されている公共事業です。さて確信を持って造成したものの、実際にアサリが増えてくれるか、よく増えるにはどう改良すべきかが問題です。そのため根室管内に造成されたアサリ人工干潟を対象に、委託先の北海道立釧路水産試験場と直轄の当所とが共同で効率的に研究をすすめています。これまでに現地の漁業協同組合と町役場や地区水産技術普及指導所および支庁水産課のあたたかい連携と協力のおかげで成果が順調に得られています。寒冷な北海道に適したアサリ人工干潟の造成と管理の技術開発への期待は強く、次年度以降も調査の継続が要請されています。
(資源増殖部魚介類増殖研究室)

ひとこと

 先日、知人の案内で、ある海湖のカキ祭に行く機会があった。早朝雪の降った大変風の冷たい日であったが、港の作業場内は暖かく、色々なカキ料理の試食コーナーには大勢の笑顔があった。1年カキでやや小型ではあるがグリコーゲンが十分に蓄積した乳白色のカキの味はとても良かった。カキの味はこの豊饒の海湖を守り、育てることの必要性を教えているようだ。
(資源増殖部長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ


北の漁火 第38号(平成6年10月)

今月の話題:北方四島沖の〝日ロイカ資源共同調査〟を終えて

 北水研とロシアのウラジオチンロ(太平洋漁業海洋研究所)とのイカ共同調査が今年9月9~29日に当所調査船探海丸(168総トン)で実施されました。北水研から1名、ロシアから2名のイカ研究者が乗船した本調査は、昨年の日ロ科学者会議でロシア側の要望により今回初めて実現したもので、北海道東部~中・南部千島の太平洋海域におけるスルメイカ、アカイカ等の分布、成長、海洋環境等が調べられました。
 調査期間中、3度の台風接近による避難や調査地点の変更で、調査活動は必ずしも順調ではありませんでしたが、イカ資源研究に役立つデータが得られました。また9月30日には釧路水試の研究者も参加して、日ロ研究交流会が開催されました。本共同調査を継続させ、近年増加傾向にあるスルメイカの当該海域への来遊量の把握、太平洋とオホーツク海との群交流の解明等の研究が、今後さらに進展することを期待しています。
(資源管理部長)

研究の紹介:厚岸シンポジウムについて

 いよいよ寒くなり厚岸シンポジウムを開催する時期が近づきました(11月4日予定)。今年で3回目です。研究集会の目的は、北海道東部を中心に海、あるいは陸も含めた生物を対象にした研究者が気楽に情報交換する場を作ることです。主催は北海道大学厚岸臨海実験所ですが、北水研の研究者もサポートしています。これまでの話題提供者はこの他に日本栽培漁業協会厚岸事業場、道立釧路水産試験場、釧路東部水産技術普及指導所、北海道教育大学、厚岸漁業協同組合などの研究者あるいは水産業に携わり調査を行っている人々でした。
 話題はニシン、カレイ、カキなど道東の重要水産種からアマモ、アオサギまで幅広いものです。
 「シンポジウム」にはもともと酒をくみかわすという意味があったそうで、この厚岸シンポでも話題発表の後の懇親会が本来の目的です。開催日を金曜日にしたのも翌日を気にすることなく懇親を深めることができるようにという深慮からのようです。関心のある方は(話題提供でなくても結構です)北水研または北大厚岸臨海実験所までご連絡下さい。
(資源増殖部藻類増殖研究室長)

ひとこと

 昨年の釧路沖地震、北海道南西沖地震の悪夢がさめやまぬこの10月にまた北海道東方沖を震源とするM8.1(北海道では観測史上二番目)の激震が襲ってきました。今回は昨年と比較して震源地が遠く、規模のわりには釧路地方の被害が少なかったのは幸いでした。皆様から多くの心暖まるお見舞い頂きましたことに対し、北水研職員一同この紙面を借りまして心から深くお礼申し上げます。
(資源増殖部長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ


北の漁火 第37号(平成6年9月)

今月の話題:探海丸の船体改修工事を終えて

 本工事は、船体の略中央部分を切断し、船体の長さを4m強延長することにより、調査観測機能の向上と船内居住環境の改善及び諸設備の充実を目的として行われました。
 過去数年来、この延長工事の要求を行ってきた経緯もあって、平成5年度第3次補正予算が認められ、約2億2千万円を要して、(株)新潟鉄工所で工事が進められました。 
 3ヶ月余に亘った船体改修工事も無事に終わり、9月2日に引き渡しを受けました。
 特に改修された部分は(1)[総トン数]168トン(旧157)(2)[定員]24名(旧22)(3)[上甲板下]調査員室(2名)及び船員室(1名)を各一室新設 (4)[上甲板上]通路の左舷側に研究室新設、道右舷側に食堂拡張 (5)[船橋甲板]空調室を新設し、船橋及び船長室を拡張 (6)[新装備]CTDウインチ、バウスラスター、探照灯、魚肉冷蔵庫、衛星用テレビ受信装置等の設備が拡充され、以後の調査航海は益々充実したものになることが期待されます。
(探海丸船長)

研究の紹介:パイセス(北太平洋科学機構)年次会合が根室で開催(10/15-23)

 北緯30度以北の北太平洋に関する海洋科学の推進と協力のための国際科学機構である、PICES(パイセス)の第3回年次会議が、10月15日~23日にわたって、日本がホスト国となり、北海道根室市総合文化会館で開催されます。
 主な日程は、次の通りです。
10/15-17 PICES‐GLOBECワークショップ(PICES‐水産庁共催)
   18-21 PICES年次会議 各科学委員会主催のシンポジウム
   22-23 モニタリング・ワークショップ(PICES科技庁共催)
 これまでの水産研究にとって、国際的な舞台は、国際漁業交渉の科学委員会と海外漁業技術協力、すなわち国と国とのインターフェースの場面に限られてきました。しかし、科学の諸分野の境界がなくなり学際的な協力が不可欠になるとともに、自然現象の地球全体での連関が国際的な研究協力を必然的なものにしています。
 このパイセスという機構は、まさにそうした必要から生まれた国際研究協力の舞台です。その活動に参加して、水産研究の国際化と水産研究による国際貢献を果たす機会として活かそうではありませんか。
(海洋環境部長)

ひとこと

 今年の「おさかなセミナーくしろ’94」は釧路市生涯学習センターで9月3日に無事終了しました。毎回、宿題は残りますが、運営面についてのハード・ソフトも次第に絞られてきていると実感しました。講演を引き受けていただいた皆さん、そして企画に当たった実行機関各位のご協力改めて感謝いたします。
(所長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ


北の漁火 第36号(平成6年8月)

今月の話題:今夏の猛暑と道東沖の漁海況について

 今夏は日本各地で記録破りの猛暑が続いていますが、釧路地方も例外ではなく、涼しさを期待してきた旅行者も面くらっていることでしょう。この高い気温の影響もあって道東海域の海水温は全般に平年より高めに推移しており、函館海洋気象台によれば、七月下旬の釧路~根室太平洋近海域の海面水温は平年より2~5℃高いということです。
 漁況の方をみると、一昨年まで多獲されていたマイワシの水揚げが皆無状態であるほかには、スルメイカの漁況が好調で(八月上旬までの水揚量…昨年比162%)、花咲沖に好漁場ができています。また、サンマの主漁場が八月に入って釧路~落石沖から色丹島東沖へ移りました。両種の八月上・中旬の主漁場が昨年同期に比べて北東側に偏って形成されているのは、海水温の高さが一因と思われます。もっとも、資源豊度や餌生物の分布等との関連も今後検討する必要があるでしょう。
(資源管理部長)

研究の紹介:日本海の海底に横たわる係留系

 積丹岬の西方約90海里の北緯43度30分、東経138度30分、水深3410mの海底に北水研の係留系が横たわっています。
 この係留系は、特別研究「磯焼け」の研究の一環として、平成4年11月に設置したものです。狙いは、北海道西岸の磯焼けに大きな影響を持つと見なされる対馬暖流の北上流の流量の長期変動のモニタリングでした。
 翌年平成5年9月に回収を試みました。しかし、重りから切り放すための超音波信号に対して装置は作動せず、系は浮上しませんでした。ご記憶と思いますが、平成5年7月に、この係留点に近い奥尻島付近を震源地とする北海道南西沖地震が発生しています。地震の衝撃波が浮上用のガラスブイを破壊し、誘爆でほとんどのブイが破壊されていると思われます。
 今年5月には、北水研の北光丸・探海丸の2船による大々的な掃海作業を行いました。7個の小型の錨を取り付けた7000m近くの掃海索を2船で曳き、係留系の補足に成功しました。しかし、残念ながらロープ、ワイヤーが切断し回収はできませんでした。
 海底で眠っているかけがえの無いデータを何とか回収したいと思っています。
(海洋環境部長)

ひとこと

 昨年の寒い夏から一変して今年は猛暑とめまぐるしく気候が変動し、周辺海域の温度分布、漁場形成にも大きく影響しているとの情報を多く耳にする。特に地先の移動の少ない重要魚介類、養殖種及び寒海性回遊魚への影響が心配される。注意深く経緯を見守りたい。 
(企画連絡室長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ


北の漁火 第35号(平成6年7月)

今月の話題:「おさかなセミナーくしろ'94」の開催

 一般市民の皆さんに水産研究の活動や成果を知ってもらう本企画も三回目となりました。今年のメインテーマは「コンブの科学ーその生活・漁業・食べ方ー」です。講演内容の主要部を図表で示したパネル展(8月4日~8月21日)が釧路市立博物館で開催されます。また、「コンブはどんな海藻か?」「釧路地方のコンブ漁業」「はじめましょう あなたのための食べ方を」の3つの話題からなる講演会(9月3日)が釧路市生涯学習センターで開催されます。両方の会場でコンブの加工品などの実物展示も行われます。
 釧路地方のコンブ生産量は北海道で一番多く、全道の三割以上を占めています。夏の風物詩「コンブ干し」をこの地方の人たちはこよなく愛しています。これに「おさかなセミナーくしろ’94」が一つの彩を添えられればと思います。
(「おさかなセミナーくしろ’94」企画・実行委員会事務局長  大池 数臣)

研究の紹介:親潮のゆくえ~親潮の流量収支と混合水域における水系変質

 千島列島沖から三陸沖に流れてきた親潮の冷水は、三陸の南に広がる黒潮系の暖水と出会うと、海画から姿を消します。親潮の水はどこにいってしまうのでしょうか? 
 三陸沖には二つの海洋前線があり、これらの前線で親潮水域・混合水域・黒潮水域に分けられます。北水研海洋環境部は、親潮の流量と水塊の観測を続けてきました。そのデータから親潮の流量収支を解析した結果、親潮の流れは混合水域に流れ込んでおり、連続して混合水域を東~北東に流れていることが明らかになりました。
 このことは、<混合水域は亜寒帯水域ではなく、親潮は親潮水域を北東に戻っていく>というこれまでの暗黙の了解を覆し、<混合水域は亜寒帯循環が東に向きを変えて流れていく部分である>という新しい見方を要求しています。親潮がその姿を消すかのように見えるのは、混合水域に流れ込むと極めて速くその水塊特性を変化させるからです。表層では高温・高塩分の黒潮水塊の影響を強く受け、中層以下では低温・低塩分の親潮水塊の性質を保った水塊に変質し、中層には塩分極小層、すなわち北太平洋中層水が見られることになります。
(海洋環境部長)

ひとこと

 時代と共に世の中の動きが加速度的に大きく変化している。それに対応すべく研究所の研究方向を示す研究基本計画が改訂された。何年か先には内容成果が問われる。その時に良かったとの評価が得られるように研究への取り組みを間違わない様にしたいものである。
(企画連絡室長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ


北の漁火 第34号(平成6年6月)

今月の話題:平成6年度北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議が開催される

 本会議は、水産庁長官通達に基づき北水研所長が主催して地域ブロックの試験場と研究の情報交換を行い、研究の連携を深め、研究をスムーズに遂行することを目的として年一回開催しております。今年度は、第5回を迎え、7月12日(火)に道立中央水産試験場(余市)において行われます。メンバーは、各場所長と北水研所長が必要と認める者(水産庁、日栽協厚岸事業場長等)で構成されます。今年の主要テーマは、平成6年度から実施に移される今後10年を見通した新しい研究基本計画の内容・考えに方について、北水研、道立試験研究場所の双方から情報提供し、意見交換を行って認識を深め、その研究実施に向けて連携のあり方・実行の方向について討議する予定です。この会議での討議が地域ブロックの漁業、国際対応の研究のスムーズな実行に役立つことを確信しております。
(企画連絡室長)

研究の紹介:動物プランクトンと紫外線

 紫外線という言葉が、化粧品の広告に目立ちます。これは、単に夏というだけでなく、オゾン層の破壊にともなう紫外線の増加が、現実のものとなりつつあることと無関係ではなさそうです。
 古い海洋学の教科書は、紫外線は海のごく表層で吸収されてしまい海洋生物の生活には影響のないものとして扱われています。しかし、環境庁のプロジェクトの一環として北水研海洋環境部で研究を進めてきた結果、紫外線は夏の外洋で8m、内湾で2mの深さまで十分な強さで達することが明らかになりました。この十分な強さというのは、海洋で最も優先する動物プランクトンであるかいあし類、とりわけ日周鉛直移動するタイプの、再生産に顕著な影響を与えるという意味です。終生表層性のものでは、再生産に顕著な影響は見られません。紫外線の強い表層に適応した何らかの紫外線防御機構が備わっている可能性があります。
 これは地球環境の変化あるいは太陽活動の変化による紫外線強度の変化が、海洋資源の主要な餌である動物プランクトンの組成や量に大きな変化をもたらすことを意味します。
(海洋環境部長)

ひとこと

 「一歩さがって二歩前進」研究にも通じる言葉である。常に行ったことを振り返りさらに前進することに大きな意味がある。そのためには、行ってきた内容を自己点検し、発表して外部者からの評価を受けることを研究者として常に心がけたいものである。
(企画連絡室長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ


北の漁火 第33号(平成6年5月)

今月の話題:海水取水施設改修工事の報告

 移転以来18年が経過した当所の施設は、海岸に近いという立地条件が重なり、老巧化が著しく、海水取水施設も計画通りの取水が困難になっていました。また、研究の高度化・多様化に伴い使用水量も増加の一途を辿り、水のやりくりで研究者の苦労は大変なものがありました。このような中、5年度の補正予算で工事費1億5千万円が認められ、北海道開発局営繕部により土木・建築・電気・機械設備の各工事に分けられ5年10月に発注されました。既設の施設に並行して海水素掘溝・ポンプ室・導水管・濾過槽が整備されます。土木工事を除いて、6年3月に完成し引渡しを受けました。土木工事は海が荒れて工事が中断されたため、5月中旬の工期に変更されましたが、間もなく完成引き渡しとなります。施設が稼働しますと毎時30トンが増量され、用水量はほぼ倍増になり、研究者の水の苦労は解消され、一層の研究推進に役立つものと思います。
(庶務課長補佐)

研究の紹介:東北・北海道太平洋海域におけるスルメイカの北上来遊量の推定

 東北・北海道太平洋海域に北上来遊するスルメイカの資源量をより高い精度で推定するため、平成5年6月下旬に太平洋漁場一斉調査を行いました。本調査には、北水研と関係水研・水試から7隻の調査船が参加し、いか釣り漁獲試験、海洋観測、魚体測定等を実施しました。その調査結果および各地の水揚げ統計などから、スルメイカの分布量は沿岸域・沖合域ともに前年同期を上回ると推定されました。すなわち、沿岸域(38゜N以北、143゜59’E以西)における平均CPUE(釣り機1台1時間当たり漁獲尾数)5.2(4年同期0.9)、沖合域(38゜~42゜N、144゜~154゜E)における平均CPUEは1.8(同1.2)であり、いずれも4年を上回っていました。漁獲された個体の外套長モードは18cmと、4年度同期より2cm大型でした。
 本研究結果およびその他の情報に基づいて、当海域におけるスルメイカの来遊量水準、主漁場位置、漁獲量等が海況予測と併せて「平成5年度第1回太平洋イカ長期漁海況予報」として、公表されました。なお、実際の来遊量は予測をかなり下回ったとみられ、調査時点での体長サイズと漁獲効率との関係の解明が今後の重要な課題となっています。
(資源管理部長)

ひとこと

 国連海洋法条約が今年11月に発効することになります。それにより、各国は自国水域の水産資源については、資源評価・管理の実践の有無のみならず、その結果の真価を世に問うことになるでしょう。現行のわが国200海里調査の見直しが有効に機能していくことを期待したいと思います。
(所長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ


北の漁火 第32号(平成6年4月)

今月の話題:平成5年度研究評価を終えて

 水産研究所においては、3~4月は研究評価の月です。この制度がはじまって今年で4回目をむかえます。発足当初は、制度導入に対する研究者サイドの受け止め方もまちまちでしたが、やっと全体に一体化され理解されてきました。そもそもこの制度は、研究者自身が1年間の研究経過を振り返って自己評価し、次につなげていくこと、また研究遂行上どこに問題点があるのかを知り、改善点を探り、研究者個々として、また組織として研究の活性化を図ることに主眼があります。 今年は、研究基本計画の改正時期と重なり、成果の評価とは別に新研究計画と次年度実施課題との整合性に研究者自身に多くの苦労をかけましたが、3月中旬までに各部の研究評価が活発な討議の内に終わりました。
 この制度の結果を活かすのは、研究者自身でありますが、組織活性化に係わる活用への研究管理者として責任の重大さを実感している今日この頃です。 
(企画連絡室長)

研究の紹介:初夏の道東太平洋沿岸におけるスケトウダラの分布

 道東太平洋沿岸域では、スケトウダラは年間5~8万トン漁獲され、極めて重要な漁獲資源です。当海域における本種の初夏の分布とその環境要因を解明するために、1988~90年の5~6月に、着底または中層トロール網による日中の漁獲試験と海洋観測を行いました。着底トロール網による採集は4つの調査区域の、水深100mから600mまでの5つの水深帯で、中層トロール網による採集は大陸棚の縁辺部で実施しました。 
 底層では、大部分のスケトウダラは100および200m台で採集されました。漁獲の多かった地点の底層水温は1.4-2.4℃でした。1-3才魚は水深100m台に多く、200m台では4および5才魚を中心に、3-7才魚が大部分を占めていました。水深300m台以深では、イトヒキダラがスケトウダラに代わって最も多く出現し、両種は餌であるオキアミをめぐって排他的な競合関係にあると考えられます。中層では、2および3才のスケトウダラが最も多く出現し、これらの年齢群が年齢ごとにまとまって浮遊すると考えられます(渡辺ら、1993、北水研研報、57より)。
(資源管理部長)

ひとこと

 この一年の間に、新基本計画の作成、PICESワークショップ、取水施設の改修、北光丸、探海丸の改修等と北水研にとって大きな出来事があった。これらはこれからの研究推進に重要で且つ欠かせないものであり、研究者の更なる奮起に期待したい。
(企画連絡室長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ


北の漁火 第31号(平成6年3月)

今月の話題:北海道ブロック漁業資源調査・漁海況連絡会議の開催 (3月23日)

 北水研は北海道水試等と連携して、水産庁企画の二〇〇海里資源調査や漁海況予報事業等により、北海道周辺水域におけるマイワシ、スケトウダラ、スルメイカ等重要漁業資源の評価・予測および海洋環境の把握・予測を目的とした調査・研究を毎年実施しています。標記会議では、今年度に実施した関係調査の結果と研究成果および次年度の調査計画が報告/協議されます。また、北水研と道水試の新しい研究基本計画案の紹介や、双方が実施・関係している国内外の主要な事業・研究についての情報と意見交換も行われます。
 海洋法条約の今年11月発効の見通しや漁業を取りまく極めて厳しい現状を踏まえて、水産庁は我国沿岸・沖合の漁業資源の評価・管理・利用方法の見直しを行っています。
 本会議でも、平成7年度から実施予定の新二〇〇海里資源調査の基本方針および魚種別の具体的な調査・研究計画について協議する予定です。
(資源管理部長)

研究の紹介:索餌域の環境収容力とマイワシ資源変動の関係の解明 

 マイワシ資源は1988年級(1988年に生まれた群)から連続して急減しています。資源豊度の大小が回遊変化と棲息水温履歴の違いをもたらし、その結果として、産卵時期・場所の決定と資源変動に影響している可能性が考えられます。この仮説の検証を目的として、豊度の高い1987年級と著しく低い1990年級の産卵親漁の、静岡県~北海道海域における回遊パターンを復元し、年級間での回遊変化に対応した水温履歴の違いを検討しました。
 1987年級は対象海域全域に及ぶ季節回遊を行いましたが、1990年級の北上は本州北部海域までに留まっていました。1987年級の回遊パターンは生殖腺の発達に好適な12~18℃の水温帯の季節的な北上南下と一致し、親魚が適水温帯を選択して回遊することが示唆されました。一方1990年級では、生殖腺の発達が阻害される20℃以上の海域に分布する群れが存在し、低豊度年級の回遊範囲の縮小と水温履歴の多様化が示唆されました。この研究は大型別枠研究(生態秩序)の一環として1993年に開始され、1995年まで継続します。
(資源管理部長)

ひとこと

 「北水研です」と電話にでる。「試験場ですか?」「いいえ、水産研究所です」「水試と違うのですか」・・・それで水研は国、水試は道と組織の違いを説明する。一般市民は水産関係ということで国と道とを一緒に考えている方が多い。水研の役割、研究内容についてもっとPRしなければと痛感する次第です。
(庶務課長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ


北の漁火 第30号(平成6年2月)


今月の話題:マイワシ資源等緊急調査会議の釧路開催

  日本周辺のマイワシ資源は1980年代未以降に急速に減少し、その資源動向が憂慮されています。すなわち、本種資源は1980~87年に発生した豊度の極めて高い年級群の連続した加入によって高い資源量水準を維持し、総漁獲量も1988年には過去最高の449万トン(海面漁業による魚類総漁獲量の46%に相当)を記録しました。しかし、漁獲量はその後減少し、特に道東太平洋のまき網漁業では、1983~88年には年間102~121万トンの水準でしたが、1992年には14万トン、93年には約1千トンにまで激減しています。
 このため、水産庁は「マイワシ資源緊急調査」を太平洋側で1991年から、東シナ海・日本海側でも92年から開始しました。来る2月16日~17日の標記の会議では、6つの水産研究所と37の道府県水産試験場の担当者が1993年度の調査・研究結果を報告し、我国周辺におけるマイワシ資源の現在の量的水準の的確な評価と今後の動向について協議することになっています。
(資源管理部長)

研究の紹介:極寒期に産卵するカレイ

 道東にある厚岸湖では大部分が結氷し、表面付近の水温は0℃以下。このような時期に湖内で産卵し、発育するカレイがいる。地元ではナツガレイと呼ばれているトウガレイで12月中旬から1月上旬にかけての時期に産卵期をむかえる。
 極寒の季節に産卵し、仔魚が発育するカレイは、どのように低水温に適した生活史をもつのだろうか。まず、産卵、ふ化、仔魚から変態して稚魚になる過程にどのくらいの時間を要するのかを調べてみることにした。地元の漁師の協力を得て、元旦から氷下網でトウガレイの成熟魚を集めてもらい、人工受精を試みたが数回の施行の末、やっと受精卵を得ることができた。卵は水温2℃前後で3週間経ってもふ化に至らず、ゆっくりと発生が進んでいる。おそらくふ化後の仔魚の発育や変態もスローテンポで進むのであろう。厚岸湖で行った稚魚網の洩網調査で、3月にトウガレイの仔魚を採集しているので、天然海域でも3月にはまだ浮遊期が継続しており、着底は4月以降ということになる。同海域で4~5月に産卵するクロガレイが着底までに約40日要するのと比べると2倍以上の時間を要するものと思われる。しかし、ふ化した仔魚が厚岸湖で泳ぎだすのは、氷が解けて餌生物が豊富な時期にあたるという予測になるのでこれは好都合なのかもしれない。これからの研究でこの部分を明らかにする必要がある。
(資源増殖部浅海育種研究室)

ひとこと

 官庁にもA版化の波が寄せてきた。各種書類の様式もほとんどがA版に変更になった。証拠書類は旧態依然としてB版で編纂に苦労しているがいつの時代から変わることやら、これらの書類の保管もA版に合うように仕切っておらず、これらを手直しするのもやっかいなことである。
(庶務課長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ


北の漁火 第29号(平成6年1月)

今月の話題:PICES年次会合根室で開催

 PICES(北太平洋海洋科学機構)の年次会合が、10月15日~24日に、北海道の根室で開催されます。昨年の根室ワークショップの実績が評価された結果でしょう。開催地に近い国の研究機関として、北水研も科学的な面ではお手伝いができるものと思います。
 今回の会合は、PICESが誕生してから3回目にあたり、いよいよ海洋科学の国際機構としての具体的な活動内容が検討される場となります。それは国際研究プログラムであるGLOBECとGOOSに対応する二つのワークショップ、「北太平洋の環境収容力と気候変動」、「北太平洋の海洋環境のモニタリング」に象徴されています。
 これを、北太平洋の海洋科学が、そして水産科学が、国際協力によって飛躍的に前進する機会としたいものです。
(海洋環境部長)

研究の紹介:生活環境とは何か?その2

 去年のこの欄に書いた雑文はもう忘れたとは思いますが、その中で、「多くの人手と長期に渡る努力が必要」と書いた沿岸環境の調査を、「少ない」人手と「少ない」経費を「それしかない」努力でカバーして始めています。93年6月から厚岸湖の定期調査を始めたのです。 
 厚岸湖はご存知のように周囲を陸で囲まれた海水湖です。中ではアサリやカキの養殖、カレイ・カジカ・コマイ・シラウオなどの漁が行われ、海藻藻場が広がり、生き物の豊富な海域のひとつとして挙げられます。
 調査をしているのは北海道区水産研究所と北海道大学厚岸臨海実験所の研究者グループで小職も一員として参加しています。観測項目は水温・塩分から動物プランクトンの炭素と窒素量等、稚魚の種類や量まで多項目に及びます。しかしこれらは、生態系研究の基礎資料でこれらを出発点に個々の研究が始まります。
 この調査の中間結果は厚岸臨海実験所のシンポジウムで発表しました。(1993年11月)。
 今年も同シンポジウムで発表する予定です。
(資源増殖部藻類増殖研究室長)

ひとこと

 新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。政治・経済の相互依存が地球規模に拡大され、ボーダレス時代はいよいよ明白になってきました。それにつれ、研究機関の役割と責任には一層の仕分けが求められてくると思います。
(所長)

ミニ情報

<来訪者>

このページの先頭へミニ情報TOPページへ