北水研ミニ情報「北の漁火」 第41~52号(1995年,平成7年発行)

号(年月) 今月の話題 研究の紹介
第52号(平成7年12月) 長期変動モニターの重要性 特定研究゛いか類の日齢査定技術の確立゛が始まる
第51号(平成7年11月) パイセス第4回年次会合(青島)について 道東沿岸域に分布するスケトウダラの産卵回遊と産卵場
第50号(平成7年10月) 浮魚資源環境調査について ニシンの成熟および産卵生態の解明
第49号(平成7年9月) 桂恋のコンブ干場 魚類のインスリン
第48号(平成7年8月) おさかなセミナーくしろ’95を終えて 厚岸湖調査の結果について
第47号(平成7年7月) おさかなセミナーくしろ’95「釧路の海の科学」-豊かさのナゾを探る- 二枚貝の生態系数値モデル
第46号(平成7年6月) 北海道近海で゜日韓共同資源調査゛始まる 親潮水域の動物プランクトンの季節変化
第45号(平成7年5月) 平成7年度第一次航海(親潮調査)を終えて 親潮の流れの季節変化
第44号(平成7年4月) 国際海洋法条約と水産資源研究 国際科学プログラム゜気候変化と環境収容力゛
第43号(平成7年3月) 磯焼け研究を終えて スルメイカふ化稚仔における平衡石の監察
第42号(平成7年2月) 第1回北海道ブロック 増養殖研究部会札幌で開催 道東海域におけるキチジ雄の成熟過程
第41号(平成7年1月) 環境・資源問題への対応に向けて 計量魚探によるサンマ資源量の推定

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北の漁火 第52号(平成7年12月)

今月の話題:長期変動モニターの重要性

 11月12日から17日に米国コパスクリスチー市で開かれた国際汽水域研究会議に出席し、厚岸湖で今年から始めた食物網に関する研究発表(その内容紹介は次の機会へ譲る)を行った。会議で気のついたことをあげると、先ず、生物学・生態学はもとより汽水域のマネージメントも主要なテーマのひとつとして取り上げられていたことである。主に米国においてであるが、水産資源だけでなく沿岸域の環境(水際での人々の住み易さ・過ごし易さ等)の維持も含めた管理を目指した研究や調査が広く行われている。
 次に気のついた点は、沿岸海域の長期変動のモニターの重要性である。沿岸海域が人間活動や気候変動(温暖化による水位上昇等)によって、水質や生物たちが影響を受けている様子を2~4週毎に、しかも5~10年にわたって観測し、明らかにする試みがなされている。これはマネージメントにとっても不可欠な研究である。質の高いデータベースの整備が沿岸研究にとって重要であることを痛感した。
(資源増殖部 藻類増殖研究室長)

研究の紹介:特定研究“イカ類の日齢査定技術の確立”が始まる

 水産庁は本年度から新たに「我が国周辺漁業資源調査」を開始しました。そのねらいは、主要資源の評価を的確に行い、国連海洋法条約批准(1996年予定)後の資源・漁業管理に活用するためです。我が国周辺域に分布する重要漁業資源であるスルメイカおよびケンサキイカは、寿命がほぼ一年で、産卵時期が広範囲にわたっています。そのため、発生時期とその後の成長の解明が資源評価の精度向上に不可欠です。平衡石による日齢査定がこれまでに未成体の標本で試験的に行われてきましたが、処理時間がかかり過ぎるなどで、研究の進展が不十分な状況にありました。
 そこで、北水研は日水研、西水研と共同して標記の特定研究(1995-1997年)を前記調査のなかで開始しました。その目的は、両種の稚仔期~成体期の各成長段階に対応した迅速で大量処理の可能な日齢査定技術を、ハードウェアーおよびソフトウェアーの両面から確立し、マニュアルを作成することです。これらの技術開発が、いか類の発生時期の特定や成長特性の解明、および資源の的確な診断と管理に役立つよう、期待しています。
(資源管理部長)

ひとこと

 晩秋の釧路地方の商店では越冬用の漬物の素材である野菜やニシン、コマイ等の水産乾物が店頭を賑わしています。漬物は魚肉やこうじに含まれる酵素の機能を効率よく利用した発酵食品であり、腐敗を防止しながら、発酵中に生成する呈味成分を素材に浸透させて味を調和させる伝統的なバイテク食品でもあります。残念ながらこうした伝統食品を漬ける家庭は年々少なくなっているようです。
(企画連絡室長)

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<来訪者>

<調査船行動>

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北の漁火 第51号(平成7年11月)

今月の話題:パイセス第四回年次会合(青島)について

 パイセス(北太平洋海洋科学機関)の第4回年次回法は合は、平成7年10月16日から22日まで、中国の青島で開催されました。北水研からは4名が参加し研究発表を行いました。今回の年次会合は、ロシアと韓国が正式メンバーとして参加するはじめての会合です。
 年次会合の各種委員会を経て決定されたことは、1)パイセス・グローベック計画「気候変化と環境収容力」の実行計画が承認されたこと、それに関連して2)モデリング・ワークショップを来年6月の最後の週に北海道根室市で開催すること、3)日本海に関するワーキング・グループを設立すること、4)カニとエビに関するワーキンググループを設立すること、5)海鳥と海産ほ乳類に関するワーキング・グループを設立すること、6)「水産科学委員会」を除く三つの科学委員会の委員長と科学評議会議長が改選されたことなどです。
 科学評議会議長には柏井 誠が選出されました。皆様のご指導とご協力をお願いします。
(海洋環境部長  柏井 誠)

研究の紹介:道東沿岸域に分布するスケトウダラの産卵回遊と産卵場

 北海道東部太平洋沿岸域ではスケトウダラは年間約6万トン漁獲される重要資源です。本研究(濱津・八吹、1995、北水研報告59)では、道東沿岸域における本種の産卵回遊の時期と量、および産卵場を明らかにするため、1990~94年に沖合底びき網漁船(沖底船)と刺し網漁船の魚獲物から毎月標本を集め、成魚量(指数)と成熟度の月変化を調べました。
 沖底船漁獲物の成魚量は、雌雄ともに9~12・1月に減少し、2~4月に増加する傾向を示しました。成魚と判断される個体の月別成熟度組成によれば、大半の個体が9月から1~3月には成熟期で、その後5月までは放卵・放精終了期でした。産卵期の雌個体は、3月に多く出現する傾向がみられました。刺し網漁船の漁獲物でもほぼ同様の結果でした。
 これらの結果および移動や産卵時期・場所に関する既往の知見から、道東沿岸の成魚の多くは、9月から12または1月の間に噴火湾海域に向かい、そこで1~2月を中心に産卵し、その後再び道東沿岸に戻ると推定されます。また、道東沿岸で3月を中心に産卵する群が存在するが、その産卵規模は小さいと考えられます。
(資源管理部長)

ひとこと

 豊漁だった釧路地方のさんま漁もそろそろ終わります。さんまの水揚げ地ならではの刺身は究極の味覚です。また、EPAやDHAの栄養成分含量は水産物のなかでも多い部類に入ります。EPA、DHAは人間にとって高い生理活性を示しますが、化学的には不安定であり、特に空気中の酸素と反応しやすく、この反応を抑制するためには温度管理に充分留意したいものです。
(企画連絡室長)

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<来訪者>

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北の漁火 第50号(平成7年10月)

今月の話題:浮魚資源環境調査について

 この調査航海は、ロシア共和国二百カイリ水域で1988年から毎年夏季に行われている調査で、親潮水域でのサンマを中心とした浮魚の分布、餌としての動・植物プランクトンのサイズ毎の分布、また親潮水域の生産性を支える栄養塩やクロロフィルの分布、さらにこれらをもたらす親潮の起源や形成機構を明らかにするため実施されています。
  この航海には毎年ロシア側から一~二名の研究者がオブザーバーとして乗船し、その成果について日ロ双方で議論を行っています。これまでの調査から、親潮の起源はオホーツク海起源の海水とベーリング海起源の海水が遭遇する中部千島列島周辺にあること、また、年によって親潮水域の表層水温が変動し、その結果、低温年には表層の栄養塩濃度が高く、大型動物プランクトンの分布密度が高くなることが分かってきました。今後さらにこれまで蓄積された資料を用いて研究を進めていく予定です。 
(海洋環境部海洋動態研究室長)

研究の紹介:ニシンの成熟および産卵生態の解明

 本邦産ニシンの繁殖に関する生理、生態的知見を集め、資源管理ならびに種苗生産に活用する第一歩として、飼育下における一才魚の初回成熟過程を追跡しました。用いた魚は、日本栽培協会(厚岸)が北海道風蓮湖で採集した産卵親魚の受精卵から育成させたものです。平成6年4月から毎月20尾をサンプリングし、体長、体重、生殖腺重量等および血液中のビテロジェニン、ステロイドホルモンを測定しました。
 初回成熟個体の生殖腺指数(GSI)は、雌雄ともに7~9月にかけてはゆるやかに増加し、以後急激に増加して12月には雄14%、雌10%に達しました。本種の産卵期が4月であり、産卵期のGSIは雌雄ともに20%未満であることを考えると、今回の生殖腺の発達開始時期は極めて早いといえます。この結果から、本種の生殖腺は、水温の低下する冬季以前に著しい発達をとげ、冬季には休止ないしはゆるやかな発達をすると考えられます。このことは、ニシンの成熟が水温の影響を強く受ける可能性、並びに産卵には春季の水温上昇が必要であることを示唆していると思われます。
(資源管理部長)

ひとこと

 電話を直接相手先より受ける方式として種々ありますが、北水研ではダイレクトインダイヤル方式を導入しました。この方式は、プッシュホン式の電話機で、従来の代表電話番号を押し、着信音(プッ、プッ、プッ)を確認後、該当の内線番号を押していただく方法です。 
 なお、連続して番号を押すと内線番号がキャンセルされますのでご注意下さい。
(庶務課長)

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北の漁火 第49号(平成7年9月)

今月の話題:桂恋のコンブ干場

 釧路市の桂恋にある当水産研究所は、周囲をコンブの干場(かんば)に囲まれており、この地域から根室半島のノサップ岬までの海岸地帯には、数多くの干場が点在しています。この干場は、石を敷き詰めてあり、水切りを良くすると同時に太陽光線により温められた石の熱を利用し、コンブの乾燥を効率よくするように配慮されております。この釧路地方のコンブ漁は、例年6月頃から9月頃にかけて行われており、6月にはコンブの成長を良くするために、間引きを兼ねた桿前(さおまえ)コンブ漁が行われます。
 釧路地方で採れるコンブは天然のナガコンブが主で、煮物、惣菜用の素材として重宝されており、その生産量は全道一であり、もちろん日本一でもあります。このコンブの栄養成分に注目してみますと、特に腸内の有害物質や有害菌を取り除く食物繊維を豊富に含んでいることから、健康食品としても脚光を浴びています。美味しいものを食べて健康体を維持できることから、コンブは理想的な食生活の一役を担っているのです。 
(企画連絡室長)

研究の紹介:魚類のインスリン

 インスリンと言えば血糖値に関係するホルモンとしてよく知られていますが、ホルモンや成長因子に携わる研究者間では細胞増殖を促すものとイメージする方は少なくありません。さて、当研究室では育種対象形質として「成長」を取り上げ、冷水性魚介類の成長の制御系の解明を目指しております。その中の一課題、「魚介類のインスリンの生化学的特性解明」では、成長や細胞増殖に関するホルモンとしてインスリンの生理的機能、作用機序を解明するための基礎として、魚類のインスリンのアミノ酸配列解析を進めています。これまでカレイ、スケトウダラなどについて解析を行いましたが、どの主にも2~3種程度のインスリンが存在することがわかってきました。多くの脊椎動物ではインスリンは1種であることが知られており、少数の種についてのみ2種存在すると言われてきました。ところが少なくとも魚類においてはどうもそうではないようです。この複数種のインスリンの存在意義は残念なことに配列解析だけからは、想像の域をでませんが、次のようなことが考えられます。例えば、IGF-Ⅰ,IGF-Ⅱのようにアミノ酸配列はそれぞれよく似ているのに異なる機能を有している、あるいは機能に差はなく合成過程で関与する酵素の特異性の低さによる等です。いずれにしてもレセプターとの親和性や各細胞における発現状況を調査することが今後は重要です。
(浅海育種研究室)

ひとこと

 今年の東京地方の夏は、37日間真夏日の連続記録を達成するほど猛暑に悩まされたそうです。一方、釧路地方は夏の気温20度前後と北海道の中でも特に涼しく、海岸地帯に位置する全国でも珍しい都市型の避暑地のような地域です。このような低い気温は、釧路沖を流れる海の幸を豊富に運ぶ親潮(寒流)の影響によるものです。当然のごとく、親潮の謎を探る科学的知見には興味が注がれます。 
(企画連絡室長)

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北の漁火 第48号(平成7年8月)

今月の話題:おさかなセミナーくしろ’95を終えて

 親潮を主題に市民への広報企画<おさかなセミナーくしろ’95>を8月8日(火)に開催しました。講演会の参加者は82名。暑い夏のウイークデイの午後に勉強しようという人の数、これを多いと見るか少ないと見るか、あなたはどう思われますか?
 講演についてのアンケートの結果、八割の方に理解していただけたようです。分からなかった点はやはり専門用語の説明不足が残ったためです。内容については、七割の方に面白かったと感じて頂きました。しかし贅沢でしょうが参加者全員に「大変面白かった」と言って頂くことを目指したいと思います。そのためには優れた研究成果を挙げることに尽きると思います。
 一番うれしかった感想に、「とても良い勉強になりました。霧の発生や魚がどうして釧路で獲れるのかも良く分かりました。こういう勉強会ならいつ聞いてもいいです。久しぶりに役に立ったと思っています。」とありました。感謝。
海洋環境部長  柏井 誠(事務局長)

研究の紹介:厚岸湖調査の結果について

 去年まで1年半にわたって北水研の研究者を中心に、北海道大学厚岸臨海実験所や日本栽培漁業協会厚岸事業所の研究者と厚岸湖の環境調査を行ってきました。目的など始めた時の意気込みは以前にこのミニ情報に書いたのですが覚えているでしょうか。その途中経過は厚岸シンポで2回に分けて発表しました。また、観測データは平成6年度北水研研究報告(第59号)にまとめてありますが、その概要は以下の通りです。
 湖は3つの水域に分けられる。つまり、<沿岸水域>:湖外の沿岸水の影響を強く受ける高塩分濃度の西部地域、<河川水域>:辺寒辺牛川の影響の強い高栄養塩濃度の河口域、<汽水域>:厚岸湖独自の水質(高リン酸塩濃度)をもつ東部水域です。このように沿岸水から河川水まで幅広い水質を持ち、しかも汽水独自の環境を持っていることは厚岸湖の生物相が豊かであることと密接な関連があると思われます。
(資源増殖部藻類研究室長)

ひとこと

 天候不順で釧路の霧も今年は気まぐれに発生しています。釧路空港利用の旅行者は悩まされたことと思います。釧路の霧は海霧ですが、海霧の多発地は漁場生産性が高く、恩恵も少なくないのです。利便性が優先すると自然の摂理も厭いがちですが、程良く折り合いをつけるためにも霧の経済評価に目を向けてみたいものです。
(所長)

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北の漁火 第47号(平成7年7月)


今月の話題:<おさかなセミナーくしろ’95>「釧路の海の科学」豊かさのナゾを探る

 市民への広報企画<おさかなセミナー>の今年の主題は、海、とくに親潮を選びました。親潮は北太平洋の二大海流の一つですが、以外に知られていないようです。黒潮を冠したニックネームは、列車、ツアー、店名、商品名などに多く見られますが、親潮を関したものはあまりポピュラーではないようです。
 セミナーでは、海についての基礎知識の紹介から、親潮とその生産性について最新の知見をわかりやすく紹介します。8月8日(火)午後2時半から4時半です。今年のセミナー会場は、釧路市生涯学習センターの多目的ホールを使います。天井の高いホールなので大きな海のことを考える伸びやかな気持を持たせてくれるものと期待しています。
 パネル展は、8月1日から8月31日まで、釧路市博物館のエントランスホールで開きます。ぜひ足をお運び下さい。
海洋環境部長  柏井 誠(事務局長)

研究の紹介:二枚貝の生態系数値モデル

 北水研資源増殖部魚介類増殖研究室では、道東浜中湾においてホッキガイの漁場環境調査を道立釧路水産試験場と共同で実施してきました。1993年から始めた調査では当歳貝の分布、減耗、成長などの基礎的な資源生態特性を明らかにするとともに、これらの生態機能に影響を与える漁場環境動態の解明も同時並行して行ってきました。得られたデータから稚貝の初期生残率と海底砂のシルト含有率(63μm以下の粒径成分比)の関係式や稚貝の成長率と餌料環境指標の関係式が得られました。
 また、波による稚貝の岸沖移動機構も加えた資源変動モデルを構成して海岸形状や波、流れ、水温変動など海岸環境動態に対する生物応答について数値モデルから検討しております。半閉鎖性海域でのホッキ当歳貝の資源変動の主要因は水深4mより浅い水域を除き、波による移動作用よりシルト含有率に規定される自然死亡効果が支配的であることが成果として得られ、計算により推定された稚貝分布の時空間変動の様子は調査結果や現状の漁場分布とも大局的に一致していることが判りました。
 この生態系数値モデルは漁場診断の新しい手法となることが期待されます。
(資源管理部長)

ひとこと

 各機関の電話を直接相手先より受ける方式(ビル電話、ダイヤルイン etc.)が拡がりつつある今日このごろですが、当北水研でもダイレクトダイヤル方式の導入を決定し、来る8月1日より運用開始を予定しております。案内の到着後は該当者の番号に電話いただきたくよろしくお願いします。
(庶務課長)

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北の漁火 第46号(平成7年6月)

今月の話題:北海道近海で〝日韓共同資源調査〟始まる

 北海道近海で操業する韓国トロール漁船に関しては、道内漁業者との操業上のトラブルや資源への影響など、解決すべき緊急課題が指摘されています。このため日韓漁業協議が以前から継続されており、今年2月には両国間の新漁業秩序の形成、資源共同調査の実施、韓国漁船の操業自粛強化等が合意されました。 
 この合意に基づいて、当水研は所属調査船北光丸(466トン)を用いて、北海道の太平洋側と日本海側におけるスケトウダラの現存量や稚仔の分布などを明らかにする調査を5月19日~6月15日に実施しました。2回目の共同調査は同様の海域で今年10月31日~11月20日に実施予定です。これら調査には、当水研の資源研究者と韓国の資源研究者が乗船します。これら2回の共同調査結果や既存の資料の検討結果等から、今後の両国間の望ましい新漁業秩序ができるだけ早く確立されるよう、期待しています。
(資源管理部長)

研究の紹介:親潮水域の動物プランクトンの季節変化

 北水研海洋環境部では、道東厚岸沖から南南東に延ばした観測定線を設けて、海洋環境と餌料環境の観測を続けています。1990年から始めた動物プランクトンの調査結果から、表層混合層における動物プランクトンの密度は毎年春に最も高く冬に最も低くなる季節変動を示すことが明らかになりました。春の植物プランクトンの大増殖が遅れると、春の動物プランクトンの密度増加も遅れることが観察されました。この春の動物プランクトンの密度は年によって1オーダーに達する違いが見られます。夏から冬にかけての季節については、毎年の変動はそれほど大きくありません。これは、春の高い動物プランクトン密度が夏まで持続するとは限らないことを示しています。 
 亜寒帯の動物プランクトンの世代時間は1年または2年と長いことが特徴です。この間に1000mの深さまで鉛直季節移動を行います。そしてそれは静かに流れ続ける亜寒帯循環の流れの上で営まれるのです。道東沖の親潮水域に現れる動物プランクトンの親の世代はどこに居たのでしょうか?海流系の連なりと動物プランクトンの世代の連なりという大変面白い問題が見えてきました。
(海洋環境部長)

ひとこと

 自然現象の真理探究に努めることは自然科学者としての歓びであり同時に努めでもあります。自然現象に疑問を持ち、これらの現象と対話し、その真理を探る訳でありますが、対話する科学的手法を誤ればか欺れることことが多々あります。自然現象の真理は唯一であり、正しい科学的手法で対話し、その成果は正しく活用していきたいものです。 
(企画連絡室長)

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北の漁火 第45号(平成7年5月)

今月の話題:平成7年度第一次航海(親潮調査)を終えて

 本航海の調査目的は、道東沿岸・沖合域における親潮の水系構造、栄養塩および動物・植物プランクトン量などの生物環境を把握することにあります。 
 新米船長として、緊張の中、4月12日釧路港第一次航海の途につきました。 厚岸沖定線に向かう途中、低気圧接近のため、船速を落とし避航したが、低気圧の発達が速く風速21メートルとなり、しかも横なぐりの大雪で視界不良、舵の効く船速で支えつつ、翌昼過ぎ大黒島の陰にて凪を待ち、天候回復後海況をみながら順次観測を行いました。次の定点観測でも天候が悪く、針路・機関を使用しながらの観測でしたが、調査予定を全て終了し、19日釧路港へ入港しました。 調査員、乗組員一同の協力により無事に航海できたことを感謝します。
(探海丸船長)

研究の紹介:親潮の流れの季節変化

 北水研海洋環境部では、道東厚岸沖から南南東に延ばした観測定線上に係留系を設置して、親潮の流れを観測してきました。1991年5月から、毎年5月に回収し再設置しています。  
 こうして得られたデータから親潮の流れの季節変化が明らかになりました。流れは1月に最大となり、その後は次第に減速していって11月に最低となります。そして11月から1月の間に最大値まで加速されます。これは冬の季節風が親潮を駆動していることを示しています。 
 この流れの季節変動のパターンは、人工衛星に搭載した高度計によって得られた、オホーツク海を含む西部亜寒帯海域の海面の高低の変動と一致します。大気の流れが等圧線に沿って流れるように、海流も海面の等高線に沿って流れます。海面の高低の変動は、海流の変動を意味します。したがって、道東沖の一点での流速の変化を観測してきましたが、この地点の流速変動が西部亜寒帯循環の流れの変動を代表していることが明らかになったわけです。 
 つぎはどこをいつ吹き荒れる季節風が親潮の流れを駆動しているかが問題です。
(海洋環境部長)

ひとこと

 水産食品は栄養バランスの良さから世界各国で見直され、その消費生産量は増加傾向にあります。またわが国においても健康への関心が高まり、美味しいものを食べて健康になるといったヘルシーグルメの食生活が定着するなかで、水産食品の占める割合は高くなっています。そこで、水産物の供給を支える各分野での研究成果が期待されます。
(企画連絡室長)

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北の漁火 第44号(平成7年4月)

今月の話題:国連海洋法条約と水産資源研究

 排他的経済水域における漁獲可能量と漁獲能力を決定することは、生物資源の適切な保存・管理措置の具体的手段であり、資源研究分野の協力が不可欠です。さらに、水産研究所における資源研究にとって重要なことは、現在或いは今後推進すべき資源・漁業管理が新しい海洋生物資源の利用秩序形成にどのように関わっていくのか、明らかにすることだと思います。 
 その目的とするところは、国連海洋法条約の次の条項に集約されています。  第六十一条(3)「・・の措置は、環境上および経済上の関連要因を勘案し、漁獲の態様、資源間の相互関係および一般的に勧告された国際的な最低基準を考慮し、最大持続生産量を実現することのできる資源量を維持し、回復することを目的とするものでなければならない」                         
(所長)

研究の紹介:国際科学プログラム“気候変化と環境収容力”

 この研究計画は、北太平洋海洋科学機構(PICES)が、1992年3月に誕生して初めて取り組む行動計画です。この研究プログラムの科学計画は、昨年10月に根室で開かれたPICESの第3回年次会合で検討され採択されたものです。 
 この研究プログラムでは、北太平洋におけるプランクトンの生産力と高次栄養段階にある外洋の生物の環境収容力が気候変化にどのように応答して変動するかを解明する大洋規模の研究と、海洋環境の気候的変動が、中国からカリフォルニアに至る北太平洋の周辺の沿岸海域におけるプランクトンと魚類の卓越種と生産性をどのように変化させるかを比較する地域規模の研究、という二つの側面を持っています。
 この研究プログラムが企画された背景には、地球環境変化あるいは気候変動についての知識と関心の高まりに加えて、直接に研究を促すいくつかの事実があります。その一つはさけ・ますの小型化、もう一つは太平洋の東西でほぼ同時に生じたマイワシ類資源の大規模変動です。これらの現象を科学的に説明することは、我が国の水産研究にとっても重要な課題なのです。
(海洋環境部長)

ひとこと

 3・4月は通例のことながら人の移動の季節である。去る人、来る人それぞれが借別の思いと、また新しい任地での不安と期待にあふれた気持ちとが複雑に交錯した思いを胸に込めて移動する。フレッシュな新研究体制に大きな期待がかかっている。
(企画連絡室長)

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北の漁火 第43号(平成7年3月)

今月の話題:磯焼け研究を終えて

 農林水産技術会議事務局計上予算による特別研究「磯焼けの発生機構の解明と予測技術の開発」がこの3月を持って終わりました。
 この研究には、平成4年から3ヶ年間、東北水研、日水研、北海道立中央水研、青森県増殖センター、富山県水試及び北水研の計6機関の研究者が参加し、コンブ類の成長と環境条件の関係、磯焼け沿岸域に優占する無節石灰藻の生物特性、海藻類に対する植食動物の摂餌圧の影響等について、野外潜水調査と室内実験解析、また、海象、気象の物理環境データとコンブ漁獲量変動の関係についての詳細な統計学的解析が精力的に行われました。これらの結果から、北海道西部沿岸域における磯焼け発生モデルとホソメコンブ漁獲量予測モデルの開発という新展開がみられました。
 この研究で得られた成果は、他の海域の磯焼け研究にも貢献するものと期待されます。
(資源増殖部長)

研究の紹介:スルメイカふ化稚仔における平衡石の観察

 この研究は北海道大学と共同して行ったもので、そのねらいは人工授精によってふ化されたスルメイカ稚子をふ化直後から毎日採集し、稚子から取り出した平衡石(魚の耳石にあたる)の輪絞が未成体個体と同様に日周的に形成されるかを明らかにすることです。1994年11月に2回、水槽で飼育していた成熟した雌のスルメイカから卵を採集し、人工授精した卵を15~23℃の数段階の水温下でふ化させました。ふ化稚仔の給餌実験を併せて行い、稚子から平衡石を経日的に摘出し、その大きさと輪絞を観察しました。 
 1回目の人工授精で正常に発生した卵の割合は78~95%で、ふ化までの日数は温度によって異なり、23℃区で2~4日、15℃区で6~8日でした。餌として植物プランクトンの3種類、有機懸濁物、かいあし類を使用しましたが、いずれも稚仔の摂餌の確認はできませんでした。平衡石の観察例はまだ少数ですが、平衡石の大きさはふ化日数の経過とともに増大すること、およびふ化後4、5日の個体の平衡石輪絞はふ化後の経過日数と同じであることが観察されています。今後観察例を増やし、結果を確かなものにして行く予定です。
(資源管理部長)

ひとこと

 雪の中から“ふきのとう”が芽を出し、福寿草が可憐な花をのぞかせ、木々は芽をふくらませ、自然の営みの遅い北海道にも春のいぶきが感じられるこの頃です。今年度は、新研究基本計画に沿った研究の本格的始動の年にあたり、目標に向かって気を引き締めた取り組みを期待します。
(企画連絡室長)

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北の漁火 第42号(平成7年2月)

今月の話題: 第1回北海道ブロック増養殖研究部会札幌で開催

 去年7月に開催された北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議で標記部会の設立が承認されました。この部会設立の目的は、北海道内の増養殖関係分野において、関係諸機関との連携を深め、研究交流を進めて研究の効率的推進を図ることにあります。
 この初めての部会が3月8日に札幌市で開催されることになりました。部会では、「北方海域における磯焼けについて」というテーマで、三題の話題提供と討議を中心にし、さらに〝つくり育てる漁業〟に関連のある二題の話題提供をもとに討議することになっています。
 部会には官、学の関係者が80名以上参加する予定です。この部会を介して、関係諸機関の連携がこれまで以上に強まることが大いに期待されます。
(資源増殖部長)

研究の紹介: 道東海域におけるキチジ雄の成熟過程

 道東太平洋海域におけるキチジ(地方名:キンキン)の漁獲量は、1983年の1,292トンから1992ねんの274トンへと次第に減少し、資源状態は極めて低い水準にあります。本種の生物学的知見は少なく、特に成熟過程および産卵期の解明が今後の資源管理を行うために必要です。本研究(古屋・他、1994、北水研報、58)では、1992-93年にえびけた網漁船と沖合底引き網漁船の漁獲物から標本を採集し、精巣の組織学的観察などによって、キチジ雄の成熟過程と本種の生殖年周期を検討しました。
 キチジ雄の精巣の発達段階を4期に分け、その季節変化を調べた結果、4~6月には放精を終えた個体は順次精原細胞の増殖を開始し、8月以降にはつぎの繁殖期に向けて精子形成を行い、2~5月には繁殖可能な状態となり、この間に繁殖を終えた個体は再び精原細胞の増殖に移行するといった、年周期的な成熟過程を示すことが明らかとなりました。これから、キチジの産卵期は冬~春季の比較的長い期間にわたることが示唆されました。今後は雌の成熟過程についても組織学的に調べる必要があると考えています。
(資源管理部長)

ひとこと

 阪神大震災の被災者に対し心よりお見舞い申し上げます。都市機能が集中した地域をおそう地震の恐ろしさと人間の知識の未熟さ・驕りの一端を見せつけられた思いがします。複雑な自然の営みに対する機構解明にさらなる探求と対応への追求が研究者に貸せられた使命でもあります。
(企画連絡室長)

ミニ情報

<来訪者>

<調査船行動>

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北の漁火 第41号(平成7年1月)

今月の話題:環境・資源問題への対応に向けて

 環境・資源に関する諸問題は、いずれのひとつを任意に取り上げてみても、実に複雑な現象であり、個別研究分野だけでの対応が困難なことがわかります。このため、境界領域の科学へもっと深く目を向ける必要があるといわれてきております。
 今世紀後半は境界領域科学の時代だともいわれ、優れた多くの成果がこの領域からでていると評価されていることは、研究に関わる私達に数々の示唆を与えております。もとより、これらの成果が、基盤的研究分野の深化とその所産を大きな原動力として生み出されていることは疑いのないところです。
 環境・資源を巡る水産研究への要請はさらに複合的、他面的になると思われます。昨年まとめられた研究基本計画においても、このような認識が策定の主要な視点になりました。これまでの各研究成果を有効な契機として、分野間の連携問題にも一層接近していくようにしたいものです。
(所長)

研究の紹介:厚計量魚探によるサンマ資源量の推定

 これまでサンマ資源量の評価は、漁船の操業1回当たり漁獲量を基にした相対値などにより行われてきました。しかし近年は、豊漁に伴う生産調整や船上での銘柄選別などにより、漁業からの情報は使いにくくなっています。そこで本研究(本田、1994)では、1991~93年夏季に千島沖合太平洋において、北水研調査船北光丸の計量魚探(古野電機FQ-70)によるサンマ索餌群の現存量評価を試みました。
 現存量の算出は通常の方法に従い、サンマの分布面積の決定と他魚種(カタクチイワシ等)との分離に当たっては、流し網による試験操業結果等を参考としました。計算の結果、対象海域のサンマ現存量は、91年26.7億尾(47万トン)、92年53.1億尾(103.5万トン)、93年360.4億尾(504.5万トン)と算出されました。水深10m以浅層の魚群の把握、魚種判別、ターゲットストレングスの値など、解決すべき問題は残されていますが、計量魚探によるサンマの現存量推定は今後さらに積極的に試みる価値があると考えています。
(資源管理部長)

ひとこと

 新年おめでとうございます。海洋法の発効元年、水産にとって国際的、国内的にも大事な年のはじまりです。研究に対する期待に答えるべく、「書を観て感有り」のたとえのとおり、その問題解明のみに固執せず、広く他の分野も取り入れた研究を進めることを心掛けたいものです。
(企画連絡室長)

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