北水研ミニ情報「北の漁火」 第77~88号(1998年,平成10年発行)

号(年月) 今月の話題 研究の紹介
第88号(平成10年12月) 気候変動と水産資源 スケトウダラの産卵量
第87号(平成10年11月) パイセス(北太平洋海洋科学機関)第7回年次会合 スルメイカ幼体の分布
第86号(平成10年10月) 新生北水研をよろしく 耳石で魚の年令を調べる方法
第85号(平成10年9月) 道東海域の1998年の海況について 沿岸浅海域の食物網における等脚目甲殻類の役割
第84号(平成10年8月) おさかなセミナー’98を終えて ニシン資源増大のための研究
第83号(平成10年7月) 平成10年度北海道ブロック会議における研究成果情報の検討 藻場造成とウニの増殖
第82号(平成10年6月) おさかなセミナー’98「スケトウダラを知ろう」の開催 親潮上流域で温暖化のシグナル?
第81号(平成10年5月) 「春告魚」の季節 炭酸ガスを消費する植物プランクトン/産出する植物プランクトン
第80号(平成10年4月) 漁業のための管理基準 紫外線が動物プランクトンと植物プランクトンに与える影響
第79号(平成10年3月) 平成9年度北海道ブロック増養殖研究部会の開催 北海道東岸沖合における底生魚類群集の構造
第78号(平成10年2月) 日ロ漁業委員会14回会議に出席して オホーツク海のズワイガニ調査
第77号(平成10年1月) 北水研の機構改正 スルメイカ種仔調査その後

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北の漁火 第88号(平成10年12月)

今月の話題:気候変動と水産資源

 1998年の北海道の水産を振り返ってみると、サンマやイカ、サケの漁獲量など軒並み前年を下回り、あまり芳しくありませんでした。このようにいろいろな魚種の漁獲量が、同時に減少していることは、広い範囲にわたる共通したことがらが原因である可能性を示しています。
 近年、地球規模の気候変動と水産資源との関係が注目されています。気候と漁業との関係は昔からのテーマですが、過去の資料の解析から、ニシンやタラ、イワシ類などで、太平洋や大西洋の間で類似した50-70年の周期が見られ、その原因が、地球規模の気候変動ではないかと言われています。さらに、数年前に、新たな気候の時代に入り、魚種によっては、今後さらに増加したり、減少したりする可能性も指摘されています。今回の漁獲量の減少が今年だけのものなのか、それとも長期的な変化の一部なのか、来年以降の変化に注目する必要があるでしょう。
 自然の大きな力の前で、人間のできることは限られています。水産資源が気候変動に大きく影響されているからといって、資源管理が無意味だということではありません。逆に、気候変動に影響されやすい水産資源だけに、私たちが何をすべきか、何をすべきでないか、資源管理を通して実践することが必要です。
(国際海洋資源研究官   石田 行正)

研究の紹介:スケトウダラの産卵量

 1997年の日本近海のスケトウダラの漁獲量は25万トンでした。25万トンのうちの15万トンが、日本の太平洋沿岸で漁獲されました。この太平洋の資源は、一年間にいったいどの位の量の卵を産み出すのでしょうか。
 試算によれば、スケトウダラの産卵量は、太平洋だけで年間100~200兆粒にも及ぶことが解ってきました。さらに、計算でもとめた産卵量は、1984~1988年には年間160~190兆粒でしたが、1990年~1994年には年間110~130兆粒に減少しました。
 スケトウダラの産卵量が減少した原因としては、一つには海洋環境の影響が考えられます。1980年代後半に比べ1990年代前半は暖かかったため、スケトウダラの卵や仔魚が生育に好適な噴火湾内へと運ばれず、再生産がうまくいかなかったという仮説です。
 産卵量が減少したもう一つの原因は、漁業の影響です。幼魚や産卵親魚が漁獲され過ぎたため、結果として全体の産卵量が減ってしまったという仮説です。
 どちらの原因がより重要なのかは今後の課題ですが、海洋環境がスケトウダラにとって悪いならば悪いなりの獲り方があるはずです。資源をうまく利用するためには、十分な量の産卵親魚を残すような漁獲の仕方を考えなければなりません。
(底魚生態研究室  濱津 友紀)

ひとこと

 水産研究にとっての今年の重大ニュースを選んでみました。北の漁業では「サケ、サンマ、スルメイカ等の不漁」が重大です。地球温暖化が進む中、「エルニーニョの次はラニーニャ」、道東沖の「暖水塊」、数少なかった「台風が大雨」をもたらしました。「内分泌かく乱物質の海洋生物への影響」も環境問題として取り上げられています。研究環境としては「独立法人化」、「流動研究体制と流動的研究資金」、「研究の外部評価」が進んでいます。 
(企画連絡室長  山本 正昭)

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北の漁火 第87号(平成10年11月)

今月の話題:パイセス(北太平洋海洋科学機関)第7回年次会合

 パイセスの第7回年次会合が10月14日~25日まで米国アラスカ州フェアバンクス市で開催されました。今回の会合には、いくつか特筆すべき点があります。
 その第一は、これまでの年次会合の開催地の中で最も北の、オーロラ帯の下で開かれたことです。幸運な参加者は、晴れた夜にオーロラを見る事が出来ました。
 第二には、議長・副議長・事務局長をはじめ、多くの委員が改選されたことです。科学評議会を含む科学的組織の部分でも、17の議長ポスト中12が改選されました。この結果、太平洋の東と西のバランスが、9:8から7:10に逆転し、参加国の数のバランスに近づきました。しかし中国がゼロであることは依然として問題です。
 第三としては、海産ほ乳類と海鳥の研究を、パイセスの活動にどのように組み入れるかを、一年かけて検討することになりました。北太平洋の生態系を科学するために不可欠だからです。
 第四として、海洋生態系と気候変動に関わる研究の成果を資源管理にどのように役立てるかをテーマにしたセッションが、来年の年次会合でもたれる事になりました。
 第五として、西暦2000年の年次会合を我が国で開催することになりました。
 我が国の水産研究が国際的に貢献する舞台が整いつつあります。北水研がそのためのお世話をすることになります。叱咤激励と協力をよろしく。
(亜寒帯海洋環境部長   柏井 誠)

研究の紹介:スルメイカ幼体の分布

 太平洋側におけるスルメイカは九州南西~東シナ海周辺海域で冬季に卵から孵化し、その後、稚仔は黒潮によって九州から関東沖合まで運ばれ、成長に伴って北方の親潮系水域に移動して行くと考えられます。この北上回遊経路のほぼ中間に位置する関東~東北沖合域は、黒潮続流やそこから派生する北上暖水と親潮系冷水がぶつかり合い、イワシやサバなど浮魚類幼魚の生育場として重要な海域であることが知られています。
 この海域(関東~東北沖合域)で口径2m、網目合い3mmの円形プランクトンネットを用い、スルメイカ幼体(胴長数cm程度)の分布調査を1994~1996年の4月に行いました。
 その結果、スルメイカ幼体は夜間、ごく海面に近い場所を遊泳すること、大きな群を作っていないこと、表面海水温が13~15℃を示す海域での採集数が多いことなどがわかりました。これらのことから、スルメイカは幼体期には黒潮続流と親潮系冷水域の間に広がる移行域に分布の中心があり、その海域で成長し冷水温に対する適応力を獲得した後、北方海域へ移動していくと考えられます。調査を行った海域ではホタルイカやテカギイカなどの幼体が多数採集されており、スルメイカだけではなくその他の表層性イカ類の幼体の生育場としても重要な海域であることが明らかとなりました。
(浮魚・頭足類生態研究室   森 賢)

ひとこと

 本年10月1日付け水研組織改正により、北海道区水産研究所に新たに国際海洋資源研究官が設置されました。亜寒帯海域における国際的な学術調査及び水産資源の管理に関する試験研究の企画、連絡及びそれらに関する情報の収集、関係業務の総合的な調整が主な仕事です。国内での連帯・協力があってはじめて成り立つ仕事です。皆様のご協力とご支援をよろしくお願い申しあげます。
(国際海洋資源研究官   石田 行正)

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北の漁火 第86号(平成10年10月)

今月の話題:新生北水研をよろしく

 本誌前号で予告しましたように、10月1日をもって、北水研の組織体制が改正されました。改正の主旨は、国連海洋法条約に基づく新海洋秩序に的確に対応することにあります。新海洋秩序の下で、水産研究所には、TAC(漁獲可能量)制度を支える基礎となる重要資源のABC(生物学的許容漁獲量)の算出と管理方策の掲示など、資源評価・管理研究の高度化、資源の変動を支配する海洋環境や生物生産に関する研究の強化、及び海域特性に応じた沿岸域の生産力の高度利用を図るための、つくり育てる漁業の基礎的研究の推進などが、今強く求められています。さらに、持続可能な漁業を将来にわたって確実なものとするには、生産基盤である海洋生態系の安定的維持が前提であり、そのための基礎的研究への取り組みが必要です。新組識では、北海道周辺に加え、新たに北太平洋亜寒帯海域も対象とすることになりましたが、関係諸機関のご協力を得て、新たな研究ニーズに応えてまいりたいと考えております。今後とも一層のご支援とご協力をお願い申し上げます。
(北水研所長  佐々木 喬)

研究の紹介:耳石で魚の年令を調べる方法

 北水研では魚の年令を調べるのに、耳石という頭の骨の中にできる石のようなものを多くの場合用いています。ハタハタの干物を頭から食べたとき、ジャリジャリとした歯触りが感じられます。これは骨よりも固い耳石を噛み砕いている感触です。この耳石を取り出して、魚の年齢を調べるのに用います。耳石の形や大きさは魚の種類によって様々です。耳石を見れば、それがなんという魚から取り出したもので、その魚がどのくらいの大きさだったかが分かるものも少なくありません。
 耳石は全体を見ると白っぽい色をしているのですが、その中にいくぶん透明な部分(透明帯)と白い部分(不透明帯)が木の年輪のように交互にできています。この不透明帯あるいは透明帯を輪紋として、魚の年齢を調べる目印にします。釧路などの道東の漁港に水揚げされるカレイなどの場合、耳石を取り出して光に透かしてみると、そのままでも年輪のような輪紋を見ることができます。スケトウダラやマダラの場合は耳石全体が白く厚いために光に透かして見ることが難しく、ホッケやイワシの場合は耳石が非常に小さくて肉眼では輪紋があるかどうかも分かり辛くなっています。
 タラ類の耳石のように白くて厚いものは、割ったり切ったりして耳石の内部を観察します。耳石を軽くアルコールランプの炎であぶって茶色く焦がしてから断面に油を塗ったり、黒い樹脂に埋め込んでから切断したり、0.3-0.5mm位の厚さに切断機でスライスしたりして観察します。こうすると、透明帯と不透明帯の区別がつきやすくなるのです。ホッケの耳石の場合は、半分に切ってから、断面を特殊な染料で染めて観察します。染料によって透明帯と不透明帯との境が染色されて、輪紋が見易くなるのです。
 このようにして、耳石に形成される輪紋が観察できるようになると、一年間にわたって毎月耳石を集めて、いつ頃透明帯と不透明帯ができているのかを調べます。これを調べておかなければ、輪紋を年輪とは呼べないからです。輪紋が年輪と確認されれば、ある地域に分布する魚はみんな同じ日を誕生日として、輪紋の数から年齢を算出します。誕生日は、北海道のホッケなら1月1日、スケトウダラは4月1日です。
(話題提供:資源評価研究室長  八吹 圭三)

ひとこと

 本年10月1日付け水研組織改正による変化の一つとして、北水研に新たに企画連絡科が設置されたことがあげられます。企画連絡科は、これまでは幾つかの水産研究所にありましたが、今回の組織改正ですべての水産研究所に設置されました。企画連絡科の役割は、所内の試験研究の企画・連絡・調整、他の試験研究機関・大学・民間等との共同研究の企画・連絡・調整、国際研究協力などについて実務を担当することになっています。よろしくお願い致します。
(企画連絡科長  中村 好和)

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北の漁火 第85号(平成10年9月)

今月の話題:道東海域の1998年の海況について

 最近、道東海域の水温が高く、マンボウやビンナガなど南方系の魚が多く出現し、「エルニーニュ現象」、「地球温暖化」などと取りざたされている。
 北海道周辺~三陸沖海域の水温は、1996年以降、平年に比べて1~2度低い傾向が続いている。しかし、納沙布岬周辺の海域だけは、6月以降、平年に比べて2度近く高くなっている。
 8月21日~9月8日の親潮源流域調査の結果によると、千島列島沿いに南西に流れてきた亜寒帯循環の緑辺は、国後島沖で沖合に転向し、北東に戻っている。例年、亜寒帯循環の西端は夏に北東に退くが、今年は道東~三陸沖の親潮域に強い副循環が残り、北上する黒潮系暖水の張り出しは、この強い副循環に押されるように、常磐沖から斜めに納沙布岬に向って北北東に伸び、納沙布岬周辺水域に暖水を供給した。このため、この水域の水温が例年にない高温傾向を示すとともに、南方水域から回遊する魚は、この暖水の帯に乗って運ばれて、納沙布岬周辺水域に特異的に出現した、との診断が可能である。
 道東~納沙布岬周辺水域の高温現象が、広い海域の海況パターンの異変によるものとすれば、その影響は局所的なものに留まらない可能性がある。
(海洋環境部長  柏井 誠)

研究の紹介:沿岸浅海域の食物網における等脚目甲殻類の役割

 1950年代後半に、北海道東部沿岸では小判型の甲殻類シオムシが年間1万トン前後漁獲されていました。乾燥されたシオムシは肥・飼料原料として本州方面にも出荷されました。シオムシ漁業は急速に衰退し、漁業関係者にすら忘れ去られようとしていますが、シオムシが削減したわけではありません。今夏、釧路港内でシオムシの『大発生』があり、冷却水配管にシオムシを詰まらせて多くの船舶がエンジントラブルを起こしました。シオムシの現存量が大きいことを示唆する事件です。
 魚介類増殖研究室ではこのシオムシ(砂浜産)など北海道東部沿岸浅海域で現存量の大きい等脚目甲殻類に着目して水域の生物生産における役割の解明を目指しています。これまでに、刺し網漁獲物を食害するとされるシオムシが実際に魚肉を食べること、オホーツクヘラムシ(藻場産)が夏場に体重の2倍量のコンブを食べて粉々に粉砕することなどがわかってきました。海藻の細屑が二枚貝の餌になることはすでに知られており、海藻・海草を底棲動物の餌となる粒状有機物に変換して供給する役割を果たしていると考えられます。
(話題提供:魚介類増殖研究室  宇田川 徹)

ひとこと

 来る10月1日から、水産庁研究所の組織改編が変わります。研究所の名称が変わるのは、瀬戸内海区水産研究所(現・南西水研)です。わが北水研は、遠洋水研の現北洋資源部からのメンバーも加わり、亜寒帯漁業資源部、亜寒帯海洋環境部、海区水産業研究部の新体制で再出発いたします。今後ともよろしくお願いいたします。
(企画連絡室長  山本 正昭)

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北の漁火 第84号(平成10年8月)

今月の話題:おさかなセミナーくしろ‘98を終えて

 水産の街、釧路、その釧路市民に水産研究を知ってもらおうと始めたセミナー。七回目の今回は、釧路でのスケトウダラ水揚量は全国一、そんな身近な存在の魚をもっとよく知ってもらおうと「スケトウダラを知ろう」をテーマに釧路市生涯学習センターで8月6日(木)に開催しました。今回は、出来るだけ多くの市民に参加していただけるよう、おいしく食べる調理方法をテーマに盛り込んだことから、女性からの問い合わせも多数あり、今回のセミナーで初めて百名を超える参加者がありました。
 アンケートの結果、内容については、「だいたいわかった」「ようくわかった」を合わせ9割方の回答がありました。分からなかった点はやはり専門用語の説明不足があったように感じました。アンケートの中から意見として、「初めて参加致しました。魚の街釧路にいながら知らないことがたくさんあることに気付きました。今後とも参加したいと思います。できればもう少しお話をおもしろくして下さい。」とありました。アンケートに書かれたコメントを反省と励みにして次年度の企画に生かしたいと考えています。
(「おさかなセミナーくしろ‘98」企画・実行委員会事務局  増田 芳男)

研究の紹介:ニシン資源増大のための研究 ― 人為的産卵誘導技術と藻場造成 ―

 ニシンは春告魚として、道民に最も馴染み深い魚です。このため、多くの研究機関や漁業協同組合が資源増大に向けて取り組んでいます。
ニシンは沿岸の浅い所に繁茂する海藻(草)などに卵を産み付けるため、ニシンの増大には海場の回復・増大が不可欠です。しかし、沿岸開発などで藻場は減少しているのが現状です。
資源増殖部では、ニシン資源増大のための研究として、藻場がニシンの生活にとって不可欠のものであることを産卵生態と生理的特性の面から明らかにし、藻場造成の基礎的調査をしています。
その結果、①飼育実験により、シンの雌は9月から成熟を開始して4~5月に産卵しますが、海藻など産卵基質を水槽に入れてやらないと産卵しないこと、②雄雌はペアーの産卵行動をとらず、それぞれが人工の産卵基質に沿って下から上に遊泳しながら少量ずつ卵や精子を放なち、基質にまんべんに卵を産み付けること、③人工の産卵基質としてシュロ製マブシが適しており、垂下したものより水槽底部に設置したものを好むこと、一方、藻場については、能取湖や厚岸湾の藻場を構成しているアマモとスゲアマモの環境要素を比べてみると、④アマモより深いところに分布するスゲアマモはアマモより低い光量で生育でき、冬季の結氷時にも生育していること、⑤アマモの分布できないより深い所にスゲアマモの藻場造成の可能性のあること、などが明らかになりました。
(話題提供:資源増殖部長  靍田 義成)

ひとこと

 例年であれば日本全土夏真っ盛り、梅雨の無い北海道では爽やかな季節を迎えているはずなのですが、夏をもたらす小笠原高気圧の勢いが弱く、このため8月中旬となってもオホーツク海高気圧が後退せず頻繁に顔をのぞかせ、未だ両気団が列島中央でせめぎ合い梅雨前線が停滞したまま、気象庁では北陸、東北の梅雨明け発表を行わないとのこと。このまま秋になってしまうのでしょうか。東北以北では寒冷・多湿なオホーツク海高気圧に支配され、すっきりしない陽気が続き農作物への影響が心配されます。一方、海の方では道東沖に暖水塊が入り込んでいてサンマの南下が遅れ気味、夜空を焦がす棒受け漁の漁り火が待たれます。
(北光丸船長  河内 淳二)

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北の漁火 第83号(平成10年7月)

今月の話題:平成10年度北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議における研究成果情報の検討

 道水試より、①飼育温度の制御による「マツカワの人工種苗の性比をコントロールする」技術を開発した。②データ処理システムと「計量魚群探知機によるスケトウダラ来遊量予測」を可能とした。③漁期前流し網調査により、「サンマの漁況を予測する」精度を向上させた。④「オホーツク海のキチジ資源を調べ」、移動回遊、産卵期、漁獲状況を明らかにした。⑤液体窒素を用いた「カレイ・ヒラメ類の精子の保存技術」を確立した。また、北水研より、⑥「耳石によるスルメイカ稚仔のふ化日の推定法及び初期成長解析技術を確立」した。⑦道東沖合の「親潮の流量とその季節変動」を明らかにした。⑧人工基質を用いた「ニシンの人為的産卵誘導技術」を開発した。⑨波動実験により「ウニ類育成礁の最適構造の検討」を行い、転石間小空間構造の重要性を明らかにした、等の成果提案があり、採用された。これらは、北水研のホームページ等で近々紹介される予定である。
(企画連絡室長  山本 正昭)

研究の紹介:藻場造成とウニの増殖

 北海道沿岸の主要な漁業資源であるウニの生産増大を図るために、沿整事業の一つとしてウニ類および飼料海藻を対象とした投石礁が設置されてきました。しかしながら、中割石を使ったこれまでの投石礁では、ウニの回収率が低いこと、造成後年を経るにつれ飼料海藻の着生量が減少することなど、多くの問題を抱えています。加えて、近年ウニ人工種苗生産が軌道に乗り、ウニ種苗の放流場所の拡大とともに、より効果的なウニ類育成礁を設置することが重要な課題となっています。
 このため、藻類増殖研究室では、投石礁の構造とウニの分布や行動との関係、ウニと海藻の分布量の相互関係等を調べました。その結果、①投石礁では、潜水による漁獲でもウニが回収しづらいこと、②ウニと海藻との分布量には相反する関係があり、ウニは投石礁内に繁茂する海藻の種類と生育に大きな影響を及ぼしていること、③特にウニが飼料として好むコンブ類はウニの影響を最も大きく受けていること、④振動流水槽実験から、稚ウニの棲み場として転石帯のような比較的小さな空間が重要であること、などが明らかとなりました。
 以上の結果から、ウニの生息場所として基質空間のサイズ、飼料海藻を育成するための条件など、ウニ類育成礁の設計や管理を行う上で重要な示唆を得ました。
(話題提供:資源増殖部藻類増殖研究室  町口 裕二)

ひとこと

 先日、数人の小学5年生からこんな質問のファックスが届いた。「日本では、いろいろな魚がたくさん獲れていますが、どうして外国から輸入するのですか。そのために、魚が安くなり、漁師の生活が苦しくなったり、マングローブの森が潰されていると聴きますが。」「イワシはたくさんとれると養殖の餌になると教わりました。なぜ食べないのでしょう。」
 誠に当を得た質問である。最近は、小中学校から水産研究の見学申し込みも多い。
(企画連絡室長  山本 正昭)

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北の漁火 第82号(平成10年6月)

今月の話題:おさかなセミナーくしろ'98 「スケトウダラを知ろう」-実はこんなに身近な魚なんです-の開催

 一般市民に水産研究の活動や成果を知ってもらおうと、道立釧路水試、市立博物館などと共に始めたセミナー、今年で七回目の開催となります。今回は、「スケトウダラ」を対象に、8月からパネル展と講演会を開催します。
 スケトウダラといっても大半がカマボコやソーセージに加工され「スケトウダラ」を食べていると実感することはあまりない魚ですが、鮮度の良い物は、「マダラより味がいい。」ともいわれています。今回は、生活史・漁業・利用加工等の演題に続き、おいしい調理法も紹介します。
 これまでの反省と経験を踏まえ、分かり易く面白い内容にするため制作担当者は一生懸命取り組んでいます。
 皆様のご来場をお待ちしています。

講演会
平成10年8月6日(木) 釧路市生涯学習センター
演題
「スケトウダラの生活史」
「漁業と資源」
「利用・加工」
「調理方法」
パネル展
平成10年8月3日~8月10日 釧路市役所
平成10年8月11日~9月4日 釧路市立博物館

(「おさかなセミナーくしろ'98」事務局  増田 芳男)

研究の紹介:親潮上流域で温暖化のシグナル?

 今年は春が早く来て、山菜シーズンも2週間くらい早く始まり、しかもいつもより短く終わってしまいました。一方、北海道周辺の海域では、1996年以降ずっと低温傾向が続いています。
 冬は平年並みで、春~夏が低温傾向を示しているのです。これが何を意味し、何をもたらすのでしょうか?
 地球温暖化の警告が発せられた当初は、平均水温が2度上昇するというシナリオで、影響の評価がされました。しかしその後、海洋環境の長期変動を解析した結果、大気中の炭酸ガスの増加に対応した水温の一方的な増加は検出されず、寒冷期と温暖期が数十年スケールで交互に現れてきたことが、分かってきました。数十年スケールといった長期的な変動は、水平的な規模も大きく、深さ方向の規模も大きいことを意味します。深くまで及ぶ現象を作り出すのは、夏の太陽ではなく冬の北風です。特に亜寒帯の冬の冷却の変動が、深くまで及ぶ現象の変動を作り出します。日本海では最深部の水塊である日本海固有水の形成が停止して、その厚みが近年減少しつづけていることが明らかになり、国際共同研究の関心の的になっています。
 北水研海洋環境部では、オホーツク海を含む親潮源流域の広域観測を10年近く続けてきました。10年を機にデータの取りまとめに取りかかりました。この中で、親潮の源流水塊の一つである東カムチャッカ海流水塊の中冷水下部の気温が1990年以降上昇傾向を続けていることが明らかになりました。これは、ベーリング海西部のカムチャッカ半島東岸海域の冬の冷却の変化を意味しているものと考えられます。この現象は、オホーツク海そして北海道沖の親潮水域にも影響を及ぼしている可能性があり、さらに解析を進めています。
(話題提供:海洋環境部長  柏井 誠)

ひとこと

 着任早々、釧路の街で思いがけず懐かしい味に出会えた。"松藻"の素朴な味わい、海からの季節の贈り物である。ふる里三陸での呼び名は"まつぼ"、春の季語である。夏は"めかぶ"、冬は"ふのり"で、秋が抜けてしまうが、秋には陸からの助っ人"阿房菊"がお目見えする。忙しげに立ち働くおふくろの作る味噌汁のせめてもの彩であった。恩師、阿部思水の句の一風景が眼に浮かぶ。
 ”腰浸けて 縋るも岩根 松藻摘む”
(庶務課長  角 昌俊)

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北の漁火 第81号(平成10年5月)

今月の話題:「春告魚」の季節

 「ニシンが浜で獲れた」の知らせは北海道に春が来たことを告げる。今年も四月までに日本海側で立派なカズノコを持った産卵ニシンが昨年より三十トンほど少ないものの一二一トン漁獲された。この他にサロマ湖、十勝の湧洞沼、根室海峡に面した風蓮湖でもニシンが産卵しており、風蓮湖では昨年七00トンほど獲れた。北海道以外でニシンが産卵する場所としては茨城県の涸沼、宮城県の万石浦、青森県下北半島の尾駁沼等が知られている。日本海側や万石浦のニシンは塩分濃度の高いところで産卵し、風蓮湖等、湖沼で産卵するニシンは塩分濃度の低いところで産卵する。かつて約一00万トン獲れた「春ニシン(北海道・サハリン系)」は塩分濃度の高いところで産卵したニシンであるが、現在、日本海側で獲れているニシンとは性質が違う群で、これらのニシンは遺伝的特性からも再生産を異にする固有の特性を持った群である。
 最近、ニシンは放流場所に戻ってくることが確かめられ、北の海のつくり育てる漁業の代表選手になっている。産卵場所となるアマモ類やホンダワラ類等の水生植物が繁茂する浅海域の環境が保全され、大きく育ってから漁獲するよう資源の有効利用を図れば、ニシン資源の維持や回復の可能性は大きい。このため産卵、回遊等の生態、海洋環境と資源変動との関わり、資源の有効的利用方法に関する研究を進めていく。
(資源管理部長  小林 時正)

研究の紹介:炭酸ガスを消費する植物プランクトン/炭酸ガスを産出する植物プランクトン

 地球を取り巻く大気に炭酸ガスが蓄積していき、温室効果を強めて地球温暖化が進むことが、地球環境の大きな問題になっています。地球大気の炭酸ガスの収支を考えるうえで、海洋がどれだけの炭酸ガスを吸収しているかが大変重要です。海洋が炭酸ガスを吸収するかたちには、大気から炭酸ガスを吸収した海水が深く沈み込むことと、植物が光合成に際して炭酸ガスを吸収して植物の体を構成する炭素として固定し、さらにそれが深海に沈降することの二つがあります。逆に、海洋が大気に炭酸ガスを放出するかたちは、水温が上昇して海水が炭酸ガスをとけ込ませる能力が低くなって放出することと、炭酸ガスを放出する植物プランクトンの増殖とがあります。
 私たちは、ふつう植物は光合成の際に炭酸ガスを吸収して酸素を放出すると、理解しています。炭酸ガスを放出する植物プランクトンは、ふつうの植物とどこが違うのでしょうか?炭酸ガスを放出することで問題になっている植物プランクトンは、円石藻とよばれる植物プランクトンです。この円石藻は、炭酸カルシウムでできた殻を持っています。海水中の炭酸イオンとカルシウムイオンから、この炭酸カルシウムの殻を形成するときの化学反応の過程で、炭酸ガスを放出するのです。
 北水研海洋環境部では、科技庁の研究プロジェクト「亜寒帯循環」の中で、炭酸ガス収支に関わる植物プランクトンの研究を進めています。その結果、北太平洋亜寒帯域の西部では、炭酸ガス吸収の主役となる珪藻が卓越するのに対して、東に行くに従って、炭酸ガスを放出する円石藻が多くなることが明らかになりました。炭酸ガスを深海に溜め込む生物ポンプは、日本に近い海で盛んに働いているのです。
(話題提供:海洋環境部長  柏井 誠)

ひとこと

 5月、棹前昆布(さおまえこんぶ)の収穫が間近になると、水産研究所周辺の昆布干し場の小石が陽の光を受け輝いてくる。一昨年から棹前昆布を道外の友達、先輩に郵送している。昆布を5センチ程に刻んで市販のコーヒー瓶に保存、ラーメンや味噌汁に入れると手軽であると喜ばれた。台湾への輸出量が減り魚価安とのこと、今年は送り先を増やしたいと考えている。
(資源増殖部長  靍田 義成)

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北の漁火 第80号(平成10年4月)

今月の話題:漁業のための管理基準

 資源あるいは漁業の管理には、明確な目的とそれを実現する実現する管理のための明確な基準が必要です。かつては、生産量の最大化を目的に、最大持続生産量(MSY)に代表される基準が、管理の目標基準として用いられていました。しかし、大きな社会問題となった、よく管理されていると信じられていた北米東海岸のたら類資源の崩壊などにより、現在では目標基準値(TRP)と限界基準値(LRP)の2種類の管理基準を使い分けて用いることが提唱されています。TRFは、これを目標に管理すれば、資源が崩壊する危険はかなり小さいとされるより低い漁獲強度で、LRPは、この基準を超えた場合に資源が崩壊する危険がかなり高くなり、漁業がこの基準に近づいているとみなされる場合には、漁獲を一時停止するなどの緊急措置が必要とされる漁獲強度です。今後、わが国でもそれぞれの資源の特質に合った、管理基準の検討が必要となるでしょう。
(北水研所長  佐々木 喬)

研究の紹介:紫外線が植物プランクトンと動物プランクトンに与える影響

 フロンガスなどによるオゾン層の破壊によって、地上あるいは海面に降り注ぐ紫外線が増加しており、その影響が海洋生態系に及ぶことが懸念されています。これまでに北水研で進めてきた低次生産に対する紫外線の影響についての研究の結果、これまで信じられていたよりも紫外線が海中深くにまで到達し、植物プランクトンの色素を破壊したり、動物プランクトンのふ化率に影響を与えることが明らかになってきました。次に取り組んだ問題は、動物プランクトンと植物プランクトンとの間の食う・食われるの関係にどのような影響があるかということです。
 紫外線は、親潮外洋域表層で43%、厚岸湾では18%、基礎生産を抑制しますが動物プランクトンによる摂餌速度も、紫外線によって影響を受けるのです。希釈法で測定した結果、外洋域では25%、厚岸湾では33%、動物プランクトンの植物プランクトンに対する摂餌速度が低下することが明らかになりました。原生動物の少毛類繊毛虫は、増殖速度が低下し、固体数の減少も見られました。こうした紫外線の影響は、10μm以下の微少な植物プランクトンを餌としている動物プランクトンに対して、より大きいことから、あるサイズの植物プランクトン群に対しては、紫外線が植物プランクトンの生産速度を低下させる影響よりも、動物プランクトンによって捕食される速度を大きく低下させるため、結果的に紫外線が植物プランクトンの増殖速度を増加させる事になる場合があり得ることになります。このようにサイズや種類で影響が違うということは、紫外線が海洋生態系の種組成や生産構造に大きな影響を与える可能性があることを意味しています。
(話題提供:海洋環境部長  柏井 誠)

ひとこと

 この4月に水工研から参りました山本です。前任の柴田企画連絡室長同様、よろしくお願いいたします。着任早々は一面薄茶色だった釧路の原野は、4月も下旬になると明るい緑が日毎に増して行ってます。この変化の早さには驚かされます。昨今、環境ホルモンの問題が報道関係で取り上げられています。生物は、厳しくも夏冬や夜昼の温度変化のように定期的な変化には対応できても、微量であっても予測できない急速な環境変動には対応できないのでしょうか。
(企画連絡室長  山本 正昭)

ミニじょうほう

<来訪者>

<調査船行動>

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北の漁火 第79号(平成10年3月)

今月の話題:平成九年度北海道ブロック増養殖研究部会の開催

 この3月5日に北海道立各水産試験場、栽培漁業センター、北海道栽培振興課、日栽協厚岸事業場、及び東京農大生物産業各部の参加を得て、北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議の標記部会が釧路市内で開催されました。
 今年度の部会では「マツカワの増養殖に関する研究の現状と問題点」のテーマで、6題の研究発表が行われ、熱心な質疑が行われました。また、現在本種の抱えている、種苗生産技術、VNN防除対策技術、種苗放流技術、及び養殖技術等の諸問題解決に向けての討議と情報交換が活発に行われ、得るところが大きく、これまでに増して研究交流の必要性が再認識されました。
 今後ともこの部会が北海道沿岸海域の“つくり育てる漁業”振興のために、関係機関との連携・協力を図りながら、問題解決に取り組む場として大きく活躍することを期待しています。
(資源増殖部長  大池 数臣)

研究の紹介:北海道東岸沖合における底生魚類群集の構造

 道東太平洋の沖合には、スケトウダラ、ホッケ、キチジ、カレイ等北海道の主要資源が多量に分布し、沖合底曵網や底刺網等の漁業によってほぼ周年漁獲されています。生物は食う食われる関係の中で生活していますから、単一魚種のみを多量に漁獲すると種間の量的関係が壊れ、その海域の生産性が低くなることが考えられます。魚達がどのような関係を持ち生活しているのかを知るため、水深100~550mの海域で調査船によるトロール漁獲試験を行って底魚類の種組成と水深・水温との関係を調べました。
 その結果、道東沖合域の底魚群集は、①多様性が深度に関わらず一様に低い、②地理的に水深200m台を境にそれぞれスケトウダラとイトヒキダラで代表される陸棚群集と陸棚斜面群集の二つに大別されるが、水温は分離要因ではない、③水深200~300mで両優占種の分布は潜在的に重複するが、実際の重複度は低い、④両種は同じ生活型の餌生物を食べており、餌を巡る関係が分布を規定されている可能性が高い、等のことが分かりました。今後は、一方の資源量が減少した時に、他種が住み場所を奪うのか、食物を変えるのか、そのことが海域の生産にどれほど影響を及ぼすのか等を現場調査すると伴に、予測モデルの作成を考えています。
(話題提供:資源管理部長  靍田 義成)

ひとこと

 北海道地方の冬の産物として、一般的に良く知られているものとして、“カニ”があります。このカニの殻は廃棄物として処理されています。実は、この殻には、キチン・キトサンが成分として含まれており、この成分は、血圧低下作用、抗脂血作用、食欲増進作用、抗癌作用等の生理機能に関する詳細な研究が進められております。廃棄物による地球環境汚染が重要な問題になっているなかで、カニ殻の有効利用に発展出来ればと期待しているところです。
(企画連絡室長  柴田 宣和)

ミニじょうほう

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北の漁火 第78号(平成10年2月)

今月の話題:日ロ漁業委員会十四回会議に出席して

 昨年の12月1日~12日にモスクワで開かれた標記会合に出席しました。この会議は日ロ双方二百海里水域内のスケトウダラやイカなどの地先資源の相互入漁や有償の漁獲割当量、漁船取締まり、資源状態や共同科学調査計画などを協議する会合で北海道の漁民にとって極めて重要な会議です。
 今回、トロール袋網の目合い拡大の提案がロシアからあり、資源保護の動きと自国沿岸漁民保護の意向を強く感じました。
 我が国二百海里水域内でロシアの欲しているマイワシやマサバの資源が減少したことや沿岸漁業重視の考え、ソ連崩壊後の混乱から立ち上がり豊かになりつつあることなどを見聞きするにつけ、益々漁獲枠の確保が難しくなることが予想されました。
(資源管理部長  靍田 義成)

研究の紹介:オホーツク海のズワイガニ調査

 平成9年からこれまでの漁期や網数などの規制に加え、漁獲の総量を規制するTAC(漁獲可能量)制度が導入され、ズワイガニは漁業として重要であり、かつ資源状態が極めて悪いことからTACによる資源管理の対象種となりました。本種の成長・寿命や脱皮回数などの知見は日本海のものを除いて乏しく、オホーツク海のズワイガニについても殆ど分かっていません。また、ロシア水域に跨って分布していることから、漁獲量などの漁業資料から資源量を推定することは困難でした。そこで調査船によるトロール調査で、オホーツク海の水深100-300mの水域別分布量、雌雄別の甲幅組成、甲幅-体重関係など資源量を推定するための資源や生物の特性を昨年8月に調べました。
 その結果、分布の中心は150mより深いところにあり、1平方キロメートル当たりの平均分布量は484㎏で、漁獲が許されている甲幅90mmの雄ガニが39%を占めていました。また、採集された雌ガニの殆ど全てが成熟した抱卵ガニである一方、未成熟の雌ガニが採集されず、季節や発育段階により異動のあることが推測されました。今後、季節・年による分布量や出現するカニの生物学的特徴の違いなどを継続調査し、生物学的に漁獲可能な量の算定や資源回復のための方策を示していく予定です。
(話題提供:資源管理部長  靍田 義成)

ひとこと

 今期の北海道の冬は暖冬だった昨年と違って、今年になって0度以下と真冬日となることが多くなっております。事実、今年は寒いと肌で感じられます。こうした厳冬の中で北海道地方では雪祭り等の冬のイベントが道内の各地で盛んに開催されております。屋内に閉じこもりがちなこの期間に野外で活発に動き回ることは、精神的な高揚に効果的であると思われます。今月、長野で開催された冬季オリンピックでは、道産子の活躍が光っておりました。この厳冬の中で培われた精神力と体力が爆発し、素晴らしい結果になったと思います。
(企画連絡室長  柴田 宣和)

ミニじょうほう

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北の漁火 第77号(平成10年1月)

今月の話題:北水研の機構改正

 謹んで新年のお慶びを申し上げるとともに、本年もよろしくお願い申し上げます。
 採決されるまでは確定ではありませんが、現在国会に提出・審議中の平成10年度水産庁予算には、水産庁研究所の組織改正が盛り込まれています。国連海洋法条約の発効など新たな時代に適切に対処することが目的で、北水研も所要の改正をおこなうとともに、遠洋漁業の拡大に対処するため遠洋水研が設立された時にそちらに移されたさけ・ます類などの研究機能が戻され、海域も北海道周辺を含む北太平洋亜寒帯域を扱うこととなり、より国際性を帯びることになります。
 主な改正は、資源評価研究室の創設によるTAC体制を担う漁業資源研究の強化と高次生産研究室の創設による海洋における生物生産研究の強化及び海区をより意識した研究を図るための資源増殖部の改組です。他に、日・ロや北太平洋の国際機関など国際対応への強化や情報の収集・発信機能の強化が図られる予定です。国を挙げて取り組まれている定員削減やスクラップ・ビルドの原則の下での組織改正であり、人的資源には制約がありますが、新たな展開を図りたいと思います。
(北水研所長  佐々木 喬)

研究の紹介:スルメイカ稚仔調査その後

 太平洋のスルメイカは1980年代の1万トン台から‘96年には23万トンへと増大し、イカ釣り漁業や定置網漁業などの重要資源となっています。本種は、平成10年からTAC魚種に指定されましたが、寿命が1年と短いために親魚量から次世代量を算定するのが難しく、稚仔量から資源量を予測する手法の確立が緊要となっています。
 今年も2月初旬から1ヶ月間、スルメイカの主要な産卵場である薩摩半島沖合から東シナ海にかけて稚仔の分布量調査を実施します。
 これまでの予備調査で、スルメイカ稚仔の採集方法として、口径70cm・網目0.33mmのボンゴネットを水深100mまで繰り出し斜め曳きすれば、ふ化直後から外套長3mm位までの稚仔が定量的に採取されること、同一地点での複数回採集よりも地点を増やす方が精度が向上すること、稚仔は黒潮流路の内側域に主に分布し、黒潮の本流及び外側域に少ないことなどが明らかになりました。
 今後は稚仔分布量と漁場に来遊する資源量との関係、稚仔の発生次期や成長状態と来遊資源量との関係の解明などが重要な研究課題です。
(話題提供:資源管理部長  靍田 義成)

ひとこと

 北海道の冬の旬魚として、スケトウダラがあります。この魚はかつて人気のある食用魚ではなかったようですが、冷凍すり身技術が開発されてからは、重要漁種として注目され、漁獲量も急激にのびた魚種であります。
 魚肉は冷凍すると、そのタンパク質が変生し、かまぼこにならない性質をもっています。この技術は魚肉に糖を加えてこの変性を制御することから、年間を通じてのかまぼこ製造を可能にしたものです。実験室の着実な研究努力が水産業界を大きく左右した研究成果であり、基礎研究の重要性を忘れないようにしたいものです。
(企画連絡室長  柴田 宣和)

ミニじょうほう

<来訪者>

<調査船行動>

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