号(年月) | 今月の話題 | 研究の紹介 |
第112号(平成12年12月) | 平成12年度GSK底魚部会 | 「なぜマツカワは低温でも成長が速いのか?」 |
第111号(平成12年11月) | パイセス第9回年次会合 | 魚で環境ホルモン(内分泌かく乱物質)を測る(2) |
第110号(平成12年10月) | 北水研一般公開、終わる | マツカワ精子短期保存法の開発 |
第109号(平成12年9月) | おさかなセミナーくしろ2000を終えて | 親潮の流動場の研究 |
第108号(平成12年8月) | 北水研一般公開が10月1日に! | 除菌 |
第107号(平成12年7月) | 平成12年度北海道ブロック水産業関係試験研究推進会議の開催 | スケトウダラの共食いと資源変動 |
第106号(平成12年6月) | おさかなセミナーくしろ2000「気候と魚の科学」 | 資源調査と調査船について |
第105号(平成12年5月) | 安心して豊かに暮らせる国へ | シンプルな資源管理モデルの有効性 |
第104号(平成12年4月) | 北水研調査船,噴火湾内を調査中 | 道東海域のキチジ |
第103号(平成12年3月 | つくり育てる漁業の方向 | コンブの生育限界水深は? |
第102号(平成12年2月) | 日ロ地先沖合漁業交渉を終えて | DGPSと魚探で海底を探る |
第101号(平成12年1月) | 「独立行政法人水産総合研究センター法」の成立 | 北海道で水産動植物を増やす道のり |
GSKは漁業資源研究会議のローマ字読みにした時の頭文字(Gyogyo Shigen Kenkyu)をとったもので、各水産研究所が協力して水産資源研究を推進させる事を目標としています。その中に底魚部会があり、底魚研究を推進させるための勉強会や自由発表形式などの形で、各水研持ち回りで一年に一度開催されています。平成12年度のGSK底魚部会は2000年11月30日に釧路の北水研で開催されました。
会議では、ウマヅラハギ、ヒラメ、マダラ、ハタハタ、及びスケトウダラと様々な魚種の話題がありました。なかでも北水研からの話題で「しんかい2000によるスケトウダラの遊泳行動の観察」は、ビデオを上映してスケトウダラの遊泳行動を紹介し、計量魚探による現存量調査の際に重要な遊泳姿勢や分布水深について説明し、特に出席者の関心が集まりました。出席した各水産研究所の底魚研究者は、普段見慣れない魚の研究についての知見を収集し、今後の研究業務を推進させることになったと思います。
(亜寒帯漁業資源部 柳本卓)
北海道の魚介類の多くは低温下のため成長が遅く、一度減少した資源の回復には長い長い時間を必要とします。このため北海道において、「低温下でも成長が速く水産的価値が高い魚」が求められています。マツカワは低温下での成長が速いという性質を備えており、しかもヒラメよりも珍重されることからこのようなニーズに応えてくれる魚種の一つになると考えられます。そこでマツカワの生理的特徴を把握することにより効率的な種苗生産法を確立することが試みられています。ただ、なぜマツカワが低温で速い成長を示すのかに関してはよくわかっていません。「成長」は複数の生理的形質の総和ですが、ある特定の形質だけが優れていても速い成長には結びつかないことが多いようです。つまり、マツカワの低温下での速い成長はいくつかの優れた形質の総和である可能性が考えられます。もしも、このような形質が何なのか解明できれば他の成長が遅い種の成長を改善する方法の確立のヒントになるはずです。したがって、マツカワの生理的特徴を把握することはマツカワのみならず他の北方性魚類の効率的種苗生産法の確立にも重要な意味を持つわけです。マツカワの生理的特徴の把握には多方面からのアプローチが必要ですが、今年度は数段階の温度でマツカワを飼育し、成長速度やいくつかのホルモンの血中濃度の変化について比較解析を行っているところです。
(資源培養研究室 安藤 忠)
ヒラメやカレイ類の人工種苗に見られる白化や黒化の体色異常と、顎形や歯の有無などの形態異常とが関係していおり、餌を採る行動や摂餌可能な餌生物、また放流後の生存率も体色正常なものとは違うことが予想されることがマツカワ種苗生産技術検討会で報告されました。魚の身になって、良い環境で種苗生産することの必要性を実感しました。
(海区水産業研究部長 靏田義成)
今年(2000年)の十月に函館市でパイセス第9回年次会合が開催されました。
「パイセス(PICES)」は「北太平洋海洋科学機関」の略称で、日本・アメリカ・カナダ・ロシア・韓国・中国の六カ国が加盟する国際条約に基づく機関です。92年に設立されたまだ若い国際機関で、毎年各国持ち回りで科学者会議が開催されています。その目的は北太平洋の生態系を解明し、人類の生産活動との調和を目指すことにあります。例えば「長期的で大規模な海洋環境の変動のもとでの水産資源の変動を予測し、評価できるようにする」こともひとつの課題です。
今回は参加者が520名という過去最大の規模となり、各国のパイセスへの関心が高まりつつあることが分かります。こうした国際会議で日本が積極的にリーダーシップを発揮することは、21世紀の日本が世界の中で果たすべき役割として非常に重要な意味を持っています。
(所長 稲田 伊史)
環境ホルモンに関する報道を、最近はあまり見かけなくなりました。この問題は自然界に排出されたある種の化学物質が弱いホルモン作用を持つというものですが、その影響実態や作用メカニズム等には未だ不明な点が多く残されており、現在も研究が継続中です。水域の環境ホルモンの影響を評価する方法として、環境ホルモンの影響を受けた魚の雄が、雌のように卵の卵黄の元になるタンパク質を作るという報告が参考になります。この報告に基づき、私たちはマハゼによる環境ホルモン評価法を開発し、全国の都市沿岸で調査を行ってきました。現在までの3年間で北海道、宮城県、新潟県、東京都、大阪府、兵庫県、福岡県、長崎県の13地点でマハゼを採集しました。この間、台風、調査道具の破損、道に迷う、外道の魚に噛まれて怪我をする等のハプニングを乗り越え、全国での採集を完了したことに安堵すると共に、採集に協力していただいた北大、岐阜大、長崎大、及び海洋生物環境研究所の方々に感謝いたしております。なお調査結果については解析中ですが、現在までのところ大都市近郊で若干の影響が見られるものの、その程度はあまりひどくないようです。なお調査結果は近いうちにまとめ、発表する予定です。
(資源培養研究室 大久保信幸)
10月31日に北水研庁舎において防災訓練を行いました。119番の通報訓練と避難訓練を行い、最後は初期消火訓練を行いましたが、避難訓練はとても成績の悪い結果となりました。立ち会った消防署員の方も「大人は訓練だと思って機敏な行動をしないので、とかくこのような結果になります。だからこそ毎年の訓練が必要なのです。」と言ってました。消火訓練は日頃消火器を実際に使うことがないので、とても良い経験になったようです。火の用心!
(庶務係長 藤橋 孝)
前々号でお知らせした北水研の庁舎と所属調査船・北光丸の一般公開が、十月一日(日曜日)に無事終了しました。
来場者数は、庁舎では185名、北光丸では 103名と、若干少な目でした。当日は、市内外で催し物が多く、またオリンピック最終日とも重なったことが、来場者数の伸び悩みに影響したのかもしれません。
しかし、来場された方々から御回答頂いたアンケートを拝見すると、活きたサケ・ウニ・ヒトデなどに触れることができたタッチ水槽を筆頭に、多くのイベントが好評であり、「楽しかった」「勉強になった」「来年もやって下さい」などの感想や意見がほとんどでした。担当者の一人として、この点を知り一安心するとともに、もっと宣伝をすべきだったとの後悔の念もあるところです。
今後の一般公開については未定ですが、来年以降、毎年行う可能性もあり、研究成果の普及と水産研究への理解を深めて頂くために、より一層の努力をしたいと考えています。
(企画連絡科長 中村好和)
マツカワが高級魚として水産関係者から注目されてきたことは言うまでもありません。しかしながら、その資源量は極めて低く、現在では国内のいくつかの機関が種苗生産および種苗放流を行い、資源量の回復を試みています。
日本栽培漁業協会厚岸事業場では、いちはやくマツカワの種苗生産に取り組んできていますが、近年種苗のウイルス感染が問題となり、対策に苦労されてきました。防除策としては、ウイルス感染チェックを行い、陰性となった親魚を種苗生産に用いることが有効と考えられます。さらには、用いる卵や精液そのもののウイルス感染チェックを行うのがベストです。そのためには感染の有無を調べる間、搾出した精液や卵を保存する必要があります。そこで我々は日栽協と協同で、マツカワ精子の短期保存法の開発を試みました。マツカワ精漿のイオン組成をもとに作製した人工精漿で精液を懸濁保存してみました。その結果、ウイルス感染チェックをするのに十分な期間、保存精液は受精能を維持し続けることがわかりました。さらに、精子の保存は孵化率にも影響を与えないことがわかり、この方法が精子の短期保存法として有効であることが示されました。
現在我々は、精漿に含まれるタンパク成分に注目しています。ホ乳類の研究によると、精漿中のタンパク成分の中には精子運動促進効果を持つものの存在が知られています。このような分子を魚類の精漿から同定できれば、より効果的な精子の保存法が開発できます。地道な生殖生理学研究がいつか現場の役に立てばと思いつつ、日々研究に取り組んでいます。
(資源培養研究室 持田和彦)
-石垣島から北海道に赴任して-
引っ越し荷物の発送を終えてほっと空を見上げたら、曇りがちながら太陽が輝き、日差しでじりじりと焼かれる感覚が戻りました。翌日には、釧路空港に降り立ち、さわやかな空気に触れ、北の大地を実感しました。10月1日付で西海区水産研究所石垣支所の沿岸資源研究室から、亜寒帯漁業資源部に異動してきました。4年半前には遠洋水産研究所でベーリング海のスケトウダラ資源研究に携わっておりましたので、全く知らないところへ来たという感じはしません。よろしくお願いいたします。
(亜寒帯漁業資源部長 水戸 啓一)
一般市民に水産に関わる調査、研究活動を知ってもらおうと関係機関とともに始めたこのセミナー。9回目の今回は「気候と魚の科学」題し、気候変化と水産資源の関わりについて、講演会(8月24日・生涯学習センター)、パネル展(福祉会館、市立博物館・9月10日まで)共に無事終わることができました。ご協力を頂いた皆様方にはこの場をお借りして御礼申し上げます。
また、講演会で参加者に配布したアンケートの結果では、「だいたいわかった」「よくわかった」を合わせて約75%の回答がありましたが、残りの25%の参加者には、専門用語等の説明不足もあったためか多少難しかったようです。来年のテーマについては、今の時代を反映して「環境ホルモン」や「海の生産力」といったテーマに関心がありました。
これらのアンケートに書かれたコメントを反省と励みにして次年度の企画に生かしたいと考えています。
(「おさかなセミナーくしろ2000」 企画・実行委員会事務局 竹谷 清児)
親潮は、北海道道東沖を南西~南南西方向へ流れており、その変動は、周辺海域の漁海況のみならず、北日本の天候や農業・漁業にも直接的、間接的に影響を及ぼしています。それにも関わらず、親潮の流動場については、昔から数多くの研究が行われていた黒潮とは対照的に研究例が少なく、不明な点が数多く残されています。
北水研で88年から開始された厚岸沖定線(Aライン)観測は今年で14年目になりました。さらに、91年からは新たに流速計のついた係留系を同定線上に設置しこの海域を流れる親潮のモニタリングを行っており、これも10年近くが経過したことになります。当研究室ではこれらの観測で得られたデータを用いて、親潮の流動場の変動構造を解明することをめざして研究を行っています。
流速計データを見ると、沿岸側の係留点では親潮の流向を示す南西から南南西の流路をとっているのに対し、沖合側の係留点では近年、親潮の流向をとらずに北東よりの流路をとることが分かっており、この傾向は現在も続いています。最近、道東周辺の海域では軒並み温暖化していますし、新聞等で暖海性の魚が捕れたと耳にすると、あの流速計の記録とどういうように結びついているのかとつい思いを巡らせてしまいます。
親潮についてこれほどの長期間継続して取られたデータは他に例がなく、他の研究機関も注目しています。赴任してきてまだ一年あまりですが、赴任早々このような貴重なデータを使わせて研究ができることをとても幸せに感じております。
(海洋動態研究室 日下 彰)
国家公務員倫理法が今年の4月1日から施行され半年が経ちました。この法律は、利害関係者等との接触等に関し遵守すべき事項をより明確化し、職務執行の公平さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図ることを規定しています。利害関係者等との会食を全て禁止するものではなく、倫理監督官の許可を得て、割り勘であれば付き合いができます。倫理規程という新しいルールを公務の中に定着させていくためには、何より現場職員と利害関係者等の御理解が必要であると考えております。
(庶務課長 今田 了)
10月1日(日曜日)の午前10時から午後4時まで、北水研の庁舎と所属調査船・北光丸の一般公開を行います。
北水研の一般公開は、平成9年9月に、北水研釧路移転20周年を記念して行われました。その後、平成10年は組織改正のために、また11年は庁舎増築工事のために、一般公開を実施することができませんでした。今回は、9年に次ぐ二回目の一般公開となります。今年は、北水研が昭和25年(1950年)に発足してから五十周年にあたりますので、その記念も兼ねることになります。
庁舎の一般公開では、研究施設の公開、各研究室による研究内容の紹介、生きた魚介類をさわったり、みたりできる水槽、魚介類の実物展示や解剖見学、スタンプラリーなどのイベントを計画中です。また、北光丸の船内公開では、調査活動の紹介、海洋観測機器や調査用採集器具の紹介等を行う予定です。沢山のご来場をお待ちしております。
(企画連絡科長 中村好和)
最近、家庭用品の多くに「除菌効果」という言葉が目に付きます。O157とかブドウ球菌とかがマスコミを騒がせるこの頃ですから、「除菌効果」は無いよりあったほうが良いように感じますが、本当にそうでしょうか?海水はどんなにきれい水でも1グラムに100万個の細菌(大きさが1万分の5ミリ)が入っています。細菌だけではなく、細菌を食べる鞭毛虫(1000分の5ミリ)が1000個体、その鞭毛虫を食べる繊毛虫が1個体(100分の5ミリ)、小さな植物プランクトン(1000分の1ミリ)が500個体、大きな植物プランクトン(100分の5ミリ)が5個体くらい入っています。人間の目には見えませんが、海水には小さな生き物がたくさん生きていて、魚の餌の源を創ったり、有害な物質を分解したりしています。これは海水に限ったことではなく、池の水でも川の水でも同じです。さらに、土の中にも家の中にも、小さな生物はたくさんいて、目に見えないところで私たちを取り巻く環境を調節しています。そして、太古の昔から私たちは、これらの小さな生き物たちと共存してきたのです。「除菌」が必要かどうかは時と場合、また個人の印象の問題ですが、細菌や目に見えない小さな生物との関係は、どんなに除菌しても逃れることのできない業のようなものなのです。
(生物環境研究室長 津田 敦)
8月24日おさかなセミナーくしろ2000が「気候と魚の科学」をテーマに開催されました。釧路では、縄文時代貝塚からアカガイなど暖海性貝殻の出土、昭和初期のマグロ漁など歴史的事件がありました。温暖化のためか昨年は12年ぶりの流氷となりましたが、流氷の翌年はコンブは豊漁との予想通り、晴れた日には干場はナガコンブで満杯です。このパンフをご入用の方はご連絡ください。
(企画連絡室長 山本正昭)
会議は6月27日から28日、北水研会議室にて、道立水産試験場、栽培漁業総合センター、道立水産孵化場、さけ・ます資源管理センター、日栽協厚岸事業場、北水研の場所長らと道庁、水産庁が参加して開催された。
北水研所長および水産庁資源生産推進部長の挨拶に続き以下の議題が報告・協議された。
(1) 水産関係試験研究を巡る情勢報告
(2) 研究成果、研究情報について
各場所の11年度成果及び12年度研究計画概要、研究関連トピックス、部会からの報告があった。
(3) 地域研究の推進方向について
・独法水産総合研究センターと道との連携協力や研究評価制度について意見交換が行われた。
・部会からの提案に基づき、スケトウダラ太平洋系群資源研究会、さけ・ます類調査研究会を設置することとした。
(4) 研究成果の利用と普及について
「ハナサキガニ人工種苗の放流・再捕調査」等8点が水産研究成果情報として選定された。
(企画連絡室長)
北太平洋亜寒帯海域の最重要種スケトウダラは、オキアミなどの大型動物プランクトンと小型の魚類やいか類を主に摂食すると同時に、同種の小型個体を共食いしてしまうことが知られています。共食いは資源変動に大きく影響すると考えられますが、1)どのような条件で共食いが起こり、2)それが個体群の変動にどのように関わっているのかということは良く分かっていません。また、本種は生まれ群の豊度(年級群強度)や幼魚の成長速度の経年変動が大きいため、共食い死亡もそれらの影響を受ける考えられます。そこで、上記の問いに答えることを目的に野外調査とモデルの両面から共食いの研究を行っています。これまで調査船で数年間にわたり採集した試料の分析から、共食いの密度依存性(加入量の多い年には共食いが多くみられること)とサイズ依存性(捕食者が大きいほど、また被食者が小さいほど共食いが起こりやすい)が明らかになりました。また「スケトウダラ栄養動態モデル」にサイズ依存性を組み込むことにより、共食いの経年変動をシミュレートするところまでこぎつけています。このシミュレーションでは、卓越年級が発生すると共食いによって多くが死亡する一方で4、5年後には逆に捕食者として新規加入年級の死亡率を高める、といった側面が明らかになりました。このモデルへ環境変動に依存した餌の豊度変化を組み込むことにより、中短期的な個体群動態を予測評価可能なモデルへ発展することが期待されます。
(高次生産研究室 山村 織生)
北水研では所内の一般公開を今年の10月1日(日)に予定しております。どのような催しで一般市民に北水研の調査・研究等をご理解いただけるのか又は喜んでいただけるのか、内容等を所内で検討中です。現在、職員一同準備を進めておりますが、一般公開の際には皆様のご来場をお待ちしております。なお、一般公開の詳細については次回のミニ情報でご連絡致します。
(企画連絡科長 中村 好和)
一般市民に水産に関わる調査、研究活動を知ってもらおうと、道立釧路水産試験場、釧路市立博物館など共に始めたセミナーも今年で9回目の開催となりました。今回は「気候と魚の科学」と題し、気候変化と魚の資源や釧路の漁業、海の変化との関わりなどについて、8月からパネル展と講演会を開催します。
皆様のご来場をお待ちしております。
※なお、8月24日のセミナー講演会当日は駐車場の混雑が予想されます。会場まではバス等の交通機関をご利用されますようお願い申し上げます。
お問い合わせ先・釧路市桂恋116番地 北海道区水産研究所 企画連絡室 「おさかなセミナーくしろ2000」事務局
北杜夫の「ドクトルマンボウ航海記」をお読みになった方は多いと思います。彼は水産庁の調査船,初代照洋丸に乗船した経験を基にこの小説を書きました。その孫にあたる3代目照洋丸の船中で,現在,この原稿を書いています。3代目照洋丸は,水産庁の誇る最新鋭の調査船です.総トン数2,118トン,航海速力16ノット,調査機器は,現在日本で入手できる最高の機器を装備するハイテクノロジーの塊のような調査船です。
今回の私の調査は,サケ類の資源調査です。サケ類の資源量は,孵化放流事業にも助けられ,世界的に増大している一方で,母川に回帰して来る親魚の高齢化や小型化も報告されています。この高齢化や小型化の要因解明が,今回の調査の最終的な目的です。調査は流網による漁獲試験が主体です。毎年同じ場所,同じ時期,同じ方法で調査を行い,調査結果を積み上げ,海の中で何が起きているのかを知ること,これをモニタリング調査といいますが,私は資源調査の半分はモニタリング調査だと思っています。今回の調査は1972年に始まり,今年は29年目になります.このデータを使い,べーリング海を含む北太平洋でサケ類に何が起こったのか,多くの事が分かってきました。
今,私たち資源研究者が考えなければならない事は,モニタリング調査の重要性を忘れない事であり,もう一方で急速に進歩している調査機器を取り入れて調査の精度を向上させる事ではないだろうか,最新鋭のハイテク調査船で,旧態依然とした流網調査を行いながら,このような事を考えました。
(浮魚・頭足類生態研究室長 木下貴裕)
6月~9月にかけて北水研の近くでは毎年の風物詩であります「コンブ干し」を見ることができます。コンブは十分な日差しを受け乾燥し、茶色から黒みを帯びた色へと変化します。各関係機関との協力で毎年開催しております「おさかなセミナーくしろ」では、6年前にこのコンブをテーマした「コンブ科学」を開催しました。事務局(北水研企画連絡室)ではこのセミナーのパンフレットを保管しています。数に限りがありますが、コンブに興味をお持ちの方は北水研の企画連絡室までご連絡下さい。
(情報係長 竹谷 清児)
かつて、イザヤ・ベンダサンは「日本人は空気と安全はただであると思っている」と評したことがありますが、今やダイオキシン等に例を見るまでもなく、空気にも安全にもお金を払う時代となってきました。
ところが食料については戦後50年以上経ちますが、日本人はオイルショック以外には食料危機の経験がなく、「喉元過ぎれば」相変わらず飽食の時代が続いています。その間、日本の米を除く穀物自給率はどんどん低下し、今や三割以下とか言われています。水産物についても安い輸入品が急増し、おそらくは寿司屋のネタのほとんどは外国産のものとなっているにちがいありません。
21世紀は人口増加が続き、発展途上国も水産物を重要な食料とするものと考えられ、自分達の食料は自前で確保する必要になります。水産資源をきっちりと管理し、合理的に漁獲するとともに海の環境を守ることが「安心して豊かに暮らせる国を築く」ための第一歩かと思われます。
(所長 稲田 伊史)
資源管理を行う場合、シンプルなモデルのほうが、より複雑なモデルよりも有効なことが多い。例えば、齢構成を持つ集団の個体群動態をモデル化するとき、齢構成を考えたモデルよりも齢構成を考えないモデルのほうが、管理のためのパラメータ推定や予測において優れていることがあります。生物学的な知識からはベターだと思われるモデルが、必ずしも有効だとは限らないのです。
複雑なモデルはより多くの情報・データを必要としますが、現実には利用できるデータは限られているために、推定精度が悪くなる傾向があります。一方で、単純なモデルでは、単純化したことによって現実の個体群の挙動を(部分的には)うまくシミュレートできないことがあります。よいモデルは両者のかねあいで決まってきますが、前者の問題が大きく、単純なモデルがより有効になることが多いと考えられます。
資源管理でどこまで詳細なモデルを用いていくのかを、仮想的なデータを用いてあらかじめ評価しておくことが重要です。これによって利用できるデータに応じた有効なモデルを選択することができます。また、資源調査計画の立案において調査のコストと得られる情報の有効性を評価することにも利用できます。
構造を持った複雑なモデルをシンプルモデルがどのくらい模せるのかを考えるのが「モデル・アグリゲーション」の研究であり、効率的な資源管理において重要な研究分野となっております。
(資源評価研究室 箱山 洋)
北水研前の停留所「柏木」を通る路線バス「桂恋線」(くしろバス運行)が5月23日に別路線との統合のため廃止となりました。幸い「柏木」停留所は存続しますが、「桂恋線」は30年近くも運行していたとのことで、北水研が余市町から釧路市へ移転する前から運行していたことになります。また、その昔、桂恋にあった炭坑(現在は廃坑)へ貸し切りで運行していたのが現在の桂恋線の始まりであると言われています。時代の波は水研の独立行政法人化とともに近隣地域へも押し寄せているようです。
(情報係長 竹谷 清児)
地震が続いた有珠山は3月31日に噴火しました。長く不自由な避難生活を余儀なくされている多くの方々にお見舞い申し上げます。
噴火の報に接し,北水研の探海丸は翌4月1日に噴火湾を目指し釧路港を出港しました。ホタテガイ,スケトウダラ,アカガレイ等の重要な水産資源への影響が心配されるため,4月5,6日には噴火湾全域の水質・底質・プランクトン調査を行いました。その後,4月10日から北光丸が探海丸と交代して,噴火湾内の水質監視のため道立水産試験場の調査船と交互に巡回を続け,北光丸は1日おきに海水の透明度調査等を行っております。現在のところ火山灰によると見られる海面の異常は認められておりません。
当初,陸上のみならず海上も危険区域への入域が規制されホタテ養殖業は管理作業ができず、ヒトデによる被害や出荷作業の遅れが心配されていますが,噴火活動は小康状態が続いており,4月13日より規制区域も縮小され海上作業も行える状態になっております。噴火活動が1日も早く終息することを祈念いたします。
(企画連絡室長 山本正昭)
キチジ(キンキ,メンメ)は,オホーツク海や千島列島、北海道、および本州北部の太平洋岸に分布していますが、中でも道東海域は昔から重要な漁場です。道東海域でのキチジの漁獲量は、1975年頃には年間2,000トンを越えていましたが、1998年には約200トンとすっかり減ってしまいました。漁獲量の減少が,乱獲の結果であることは明らかです。
昨年7月に東北区水産研究所所属の若鷹丸を用いてトロール調査をしたところ、道東海域の調査点(水深300~900m)全31点のうち、すべての調査点でキチジが採集されました。しかし,採集量は大きな網(袖先間隔約20m)の30分曳きであったにも関わらず、平均採集尾数21尾/網、平均採集重量2.4kg/網と寂しい結果でした。
キチジの資源が回復するためには、多くの子が産まれ、それがなるべく死亡することなく育つ必要があります。幸いなことに、道東海域にはキチジの産卵場があり、現在でも少ないながらも親魚(雌で体長22cm以上)が分布しています。また、前述のトロール調査でも体長3cm,4cmといった稚魚が採集されました。キチジ資源の将来にとって、親魚の保護、稚魚の保護が是非とも必要です。
(底魚生態研究室 濱津 友紀)
この4月に「さけ・ます資源管理センター」から参りました。3月31日は有珠山が23年ぶり噴火し、通行止めヶ所も出て、気をもみながら引越の荷づくりをしていました。北水研「探海丸」による噴火湾の海洋・生物への影響緊急調査が4月1日から行われ、その危機管理への対応体制に感心させられました。これからもいろいろな事があると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
(庶務課長 今田 了)
まもなく第4次栽培漁業基本計画が策定されます。これまでは、ヒラメやマダイなど広域的な魚種が放流対象種に取り上げられ、都道府県横並びで事業が展開されてきました。これら放流魚種は、多くの沿岸資源が総じて減少している中でも漁獲量が安定しており、漁獲に占める放流量の割合が増大し天然資源をも考慮に入れた資源管理が必要になってきました。
次期計画では、(1)地域に適し、投資効果のあがる魚種を、適切な費用負担で事業化する、(2)天然資源をも考慮に入れて、適切・効果的な放流をする、(3)生物的多様性を含めた環境保全に配慮する、の三つが主要な事項となっています。北海道では、漁業者自らがホタテガイを放流し、資源を管理してきた歴史と実績があります。漁業者自らの力で、豊かな海を守り、資源管理を基本とした栽培漁業の推進が期待されます。
(海区水産業研究部長 靏田義成)
コンブはどのくらいの深さまで生育できるのか?と聞かれることがありますが、丁寧に答えようとすると結構難しいものです。この質問は、藻場造成の適地選定作業で問われる条件そのものについての質問でもあります。生育深度は種類によって異なるだろうし、現場海水の濁りによっても異なるだろうということは容易に想像できますが、具体的にデータを示しながら説明しようとすると意外なほど研究蓄積が少ないのです。
この種の問いにデータを示しつつ丁寧に答えるために、ナガコンブ群落はどの程度の水深まで成立するかを明らかにするための調査・実験を進めています。コンブも陸上の植物同様、基本的には光合成によって作り出した物質を頼りに生活しているわけですから、水中の光条件とコンブの要求する光条件を調べることにより答えが出てくるはずです。
もちろん、コンブの垂直分布を制限する要因は光だけではありませんが、光が重要な制限要因の一つであることは間違いありません。研究が進展すれば、客観的なデータに基づいて、光条件から判断したコンブの生育可能範囲を示すことも可能になるでしょう。
藻場の成立条件や機能解析に関する研究を通して、様々な事業関連の調査やプロジェクト研究に貢献できればと考えています。
(海区産業研究室 坂西芳彦)
東京から釧路へ転勤して7年の月日が経過しましたが、まだまだ初めて経験する事が多くあります。昨年の夏に3歳になる子供のために「七夕(たなばた)」の短冊や飾り物を作りました。ところが、短冊や飾り物を結び付ける「木」を見てびっくりしました。東京では「竹」の小枝に短冊などを結び付けるのですが、釧路では「やなぎ」なのです。たぶん「ねこやなぎ」と呼ばれる種類のやなぎだと思うのですが、まさに、所変われば・・・ですね!
(庶務係長 藤橋 孝)
2000年の日・ロ両国の200カイリ水域における相互の漁獲割当量を決定する日ロ地先沖合漁業交渉が昨年12月にモスクワで開催され、1999年より2,300トン少ない83,600トンで妥結した。今回の会議に出席し、資源評価に関し、今後の対応として必要と考えられることを記します。
これらのことが、相互の理解と協力につながると考えられます。
(亜寒帯漁業資源部長 小林 時正)
これまで海底の地形を把握する手法として、広範囲にはサイドスキャンソナー、比較的狭い範囲では深浅測量というのが一般的であった。測量に要する費用や精度の点でそれぞれ一長一短があり、実施にあたっては相当の準備が必要である。また、私どもが調査対象としているごく沿岸の岩礁域では、海底の起伏の複雑さ等もあって、海底の地形を正確に把握することは非常に困難であった。そんな中で藻場の研究者の間では以前から、人工衛星を用いたGPS位置データと魚探の水深データを用いて海底の様子を把握しようとする試みがなされていたが、GPS単体の測位ではSA(軍事的理由による意図的な誤差)等の影響により数十メートルの恒常的な測位誤差が問題であった。ところが近年、海上保安庁によって、GPSの誤差を取り除くためのDGPSビーコン局が整備されたことにより、測位誤差が数mという正確な測位が可能となった。しかも、パソコンを始めとする電子機器の価格低下の恩恵を受け、パソコン、DGPS、魚探と自作の簡単なデータ収集ソフトを加えて、数十万円でシステムを構成することが出来た。ちなみにこれで投石漁場を測量した結果、DGPSビーコンの安定した受信や波浪による測深誤差など幾つか問題があったものの、投石礁の3次元的な形状を明瞭に捉えることができ、予想以上の好結果を得ることが出来きた。最近では市販品でもこのようなシステムが販売されており、沿岸での各種調査への応用が大いに期待される。
(海区産業研究室 町口裕二)
2月8日に、本年度の運営会議が開催されました。この会議は、外部委員によって北水研が機関として評価される会議で、昨年度に続き2回目です。委員には、学識経験者・漁業団体関係者・普及関係者・公立試験研究機関関係者などの方々になって頂きました。研究の推進や所の運営について評価・指摘を頂きました。昨年度の評価・指摘事項とそれへの対応は、北水研ホームページに掲載中です。本年度についても同様に掲載予定です。
(企画連絡室 企画連絡科長 中村 好和)
独立行政法人通則法を受けて「独立行政法人水産総合研究センター法」が、平成11年12月14日に国会において成立しました。独立行政法人水産総合研究センター(以下「水研センター」という)は9つの研究所が1つの法人となり、自ら人事や予算要求等の業務を行うこととなります。
独立行政法人制度の大きな特徴は、国(水産庁)が中期目標を定め、独立行政法人(水研センター)は中期目標に基づき中期計画(期間3~5年)を作成し、主務大臣の認可を受け、業務を実施することとなっています。
その業務は「水産に関する総合的な試験及び研究、調査、分析、鑑定並びに講習を行うこと」及び「水産に関する試験及び研究に必要な種苗及び標本の生産及び配布を行うこと」とされ、独立行政法人への移行後においても、従来行つてきた業務を引き続き実施することができます。
そして業務実績に関して,主務省ごとに設置された独立行政法人評価委員会により各事業年度毎及び中期目標終了後に評価が行われます。特に、中期目標終了後においては、主務大臣は独立行政法人の業務を継続させる必要性、組織の在り方,その他その組織及び業務の全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、所要の措置を講じるものとされています。
(企画連絡室長 山本 正昭)
水圏を積極的に活用することで水産動植物の生産をはかり経済的事業にしようという概念が水産増殖です。専有水域での自己所有の動植物による事業化は水産養殖です。あわせて水産増養殖ですが、つくり育てる漁業またはつくる漁業とも言います。なお増殖事業のなかで種苗放流を伴うものが栽培漁業です。近年になり産業構造は変化し、今や北海道の漁業生産の半分近くは増養殖事業による水揚げで占められており、極めて重要な産業となっています。主要な種類はサケ・マス、ホタテガイ、コンブですが、いずれも企業的水準に到達するまでの間に数十年にわたる基礎的調査研究の歴史が刻まれています。成果があがるまでには永く地道な調査研究を要し、物事はすぐには出来上がらないということの実例でもあります。
北海道の養殖事業は相当な生産規模ですが地理的および技術的な制約のために展開度という面では大きくはなく、増殖事業が大規模に試みられているのが現状です。増殖事業は生産を維持ないし増大させて漁業者所得の安定や向上をはかることが目的ですから、調査研究はこの目的達成に貢献することが期待されています。増殖の技術的手段には種苗放流や漁場造成および資源管理などがありますので、調査研究対象は当然ながら多岐にわたります。多方面にわたり手広く調査研究を展開することもあり、調査研究の手法も多彩という特徴があります。増殖技術は生産を左右する根幹なので関心が高く、有効な技術は自然に広く伝播します。それゆえに産業の現場を実証場として先導的に開発する必要があり、産業との連携が重要になります。
(海区産業研究室 伊藤 博)
昨年、何かと騒がれていましたY2K(西暦2000年問題)も、筑波の農林水産情報・計算センターの方々や電算担当者の事前対応・年末年始の待機等により、北水研も無事西暦2000年を迎えることが出来ました。この場を借りてお礼申し上げます。また、今年は閏(うるう)年にあたるため2月29日にも同様の問題が生じる恐れがあるとも言われております。今後、情報の高速化が進むにつれて、このような管理・セキュリティー面での問題が多くなっていくのではと感じています。
(企画連絡室 情報係長 竹谷 清児)